The METropolitan Operaメトロポリタン歌劇場
Night Stream×99
メトロポリタン歌劇場ではコロナウィルスの影響による閉鎖期間中(2020年~2021年)日替わりで過去の上演フルバージョンの映像無料配信を行いました。(本来は会員のみ視聴可能)1,2
- 17☞Ernaniエルナーニ(1844)
- 19☞Il Trovatoreイル・トロヴァトーレ(1853)
- 20☞La Traviataラ・トラヴィアータ椿姫(1853)
- 21☞Simon Boccanegra(1857)シモン・ボッカネグラ
- 22☞La Forza del Destino運命の力(1862)
- 23☞Don Carloドン・カルロ(1867)
- 24☞Falstaffファルスタッフ(1893)
- 25☞Nabuccoナブッコ(1842)
- 26☞Luisa Miller ルイーザ・ミラー(1849)
- 27☞Rigolettoリゴレット(1851)
- 28☞Un Ballo in Maschera仮面舞踏会(1859)
- 29☞Macbethマクベス(1865)
- 30☞Aida アイーダ(1871)
- 31☞Otelloオテロ(1887)
- 32☞Der Fliegende Holländerさまよえるオランダ人(1843)
- 33☞Tannhäuserタンホイザー(1845)
- 34☞Lohengrinローエングリン(1850)
- 35☞Tristan und Isoldeトリスタンとイゾルデ(1865)
- 36☞Die Meistersinger von Nürnbergニュルンベルクのマイスタージンガー(1868)
- 37☞Das Rheingoldラインの黄金(1869)
- 38☞Die Walküreワルキューレ(1870)
- 39☞Siegfriedジークフリート(1876)
- 40☞Götterdämmerung神々の黄昏(1876)
- 41☞Parsifalパルジファル(1880)
- 64☞Dialogues des Carmélitesカルメル派修道女の対話(1957)プーランク
- 65☞Normaノルマ(1831)ベッリーニ
- 66☞Rusalkaルサルカ(1901)ドボルザーク
- 67☞Boris Godunovボリス・ゴノドフ(1874)ムソルグスキー
- 68☞Adriana Lecouvreurアドリアーナ・ルクヴルール(1902)チレア
- 69☞Les Contes d’Hoffmannホフマン物語(1881)オッフェンバック
- 70☞The Merry Widowメリー・ウィドウ(1905)レハール
- 71☞Marnie マーニー(2018)ニコ・マーリー
- 72☞Prince Igor イーゴリ公(1890)ボロディン
- 73☞Hamlet ハムレット(1868)トマ
- 74☞L’Amour de Loin 遥かなる愛(2000)カイダ・サーリアホ
- 75☞Cavalleria Rusticanaカヴァレリア・ルスティカーナ(1890)マスカーニ
- 76☞Pagliacci道化師(1892)レオンカヴァッロ
- 77☞The Tempestあらし(2004)トーマス・アデス
- 78☞Les Troyensトロイアの人々(1860)ベルリオーズ
- 79☞La Sonnambula夢遊病の女(1831)ベッリーニ
- 80☞I Puritani清教徒(1835)ベッリーニ
- 81☞Luluルル(1979)ベルグ
- 82☞Orfeo ed Euridiceオルフェオとエウリディーチェ(1762)グルック
- 83☞The Exterminating Angel皆殺しの天使(2017)トーマス・アデス
- 84☞Bluebeard’s Castle青ひげ公の城(1918)バルトーク
- 85☞Hansel and Gretelヘンゼルとグレーテル(1893)フンパーディング
- 86☞The Ghosts of Versaillesヴェルサイユの幽霊(1983)ジョン・ココリアーノ
- 87☞Rodelindaロデリンダ(1725)ヘンデル
- 88☞Gluck’s Iphigénie en Taurideトーリードのイフジェニー(1779)グルック
- 89☞Samson et Dalilaサムソンとデリラ(1877)サン=サーンス
- 90☞The Nose鼻(1930)ショスタコーヴィチ
- 91☞Francesca da Riminiフランチェスカ・デ・リミニ(1914)ザンドナーイ
- 92☞Wozzeckヴォツェック(1825)ベルグ
- 93☞Roméo et Julietteロミオとジュリエット(1867)グノー
- 94☞Agrippinaアグリッピナ(1709)ヘンデル
- 95☞Porgy & Bessポーギーとベス(1935)ガーシュウィン
- 96☞Rise and Fall of the City of Mahagonnyマハゴニー市の興亡(1930)ワイル
- 97☞Fedoraフェドーラ(1898)ジョルダーノ
- 98☞Andrea Chénierアンドレア・シニエ(1896)ジョルダーノ
- 99☞Fidelioフィデリオ(1814)ベートーヴェン
01☞モーツアルトのオペラ
☞Idomeneoイドメネオ(1781)
ジャン・ピエール・ポネル演出版(1982年上演)Luciano Pavarotti出演、James Levine指揮。
ジャン・ピエール・ポネル演出版(2017年上演)3‘4ジェームス・レヴァイン指揮。イダマンテ王子はアリス・クーテ(『シンデレラ』など)。古代神話風と啓蒙時代風がミックスされた演出。
☞Le nozze di Figaro フィガロの結婚(1876)
Jean-Pierre Ponnelle演出版(1985年上演)Kathleen Battle出演,James Levine指揮。演出家の金字塔ともなる完璧な舞台。
ジョナサン・ミラー演出版(1998年)5ジェームズ・レヴァイン指揮。伯爵夫人役ルネ・フレミング、スザンナ役セシリア・バルトリ。ココミカルでスタイリッシュな演出。夫妻の幼子たちが登場し、恋愛結婚で子も恵まれ幸せそうな伯爵夫人が、夫の浮気心に悩まされている様子を演出します。また伯爵の狩猟犬も本当の犬が登場します。
Richard Eyre演出版(2014年上演)フィガロ役Ildar Abdrazakov。ジェームズ・レヴァイン指揮。元の18世紀の設定を1930年代のセビリアの領主の田舎の邸宅を舞台とした、エレガントな演出。ケルビーノ役のIsabel Leonardは「もう飛ぶまいぞこの蝶々♪」の中で、軍隊に入った時に行う腕立て伏せをしてみせます。結婚式では暗い舞台にハロゲンランプが一瞬つく演出で記念写真を表します。
➤フィガロがスザンナのお尻を撫でまわしたり、スザンナがが腰を突き出す仕草をしたり、酔っぱらったケルビーノが立ちションしたり。エレガントやユーモアに加えてセクシャルな要素も演出されています。演出家リチャード・エアは「この“フィガロの結婚”はセックスについて題材にした数少ないオペラのひとつです」と言います。「ロマンティック・ラブのオペラは色々ありますが、セクシャル・ラブを取り扱ったものはほとんどありません。これは欲望と誘惑、愛と情欲の境界線の物語なのです。なので、私はセクシャルな雰囲気にあふれた時代に舞台を移したくて、それが私にとっては1920年代の後半から1930年代のはじめだったんです。侍女に“初夜権”を行使する伯爵がいる、と信じるには遅すぎる時代です」また、ズボン役の女性が男装してケルビーノを演じますが、2幕で彼女が着替えをする(物語では若い男性が女の子に変装する設定)シーンを見せるところは倒錯的です。エアは「一番、セクシーでわいせつだけれども面白いシーンです。性の垣根を超えるシーンは(18世紀にウィーンで上演された当時は)革新的な要素でした」と言っています。6
➤ケルビーノが窓から飛び降りるシーンでは、セットの裏で待ち構えている6人のダンサーの腕(とマットレス)の中に、3.5メートル以上の高さから飛び降ります。7
このオペラは1894年にMETで上演されて以来あまり上演されませんでしたが、1940年代以降、頻繁に上演されるようになりました。8
☞Don Giovanni ドン・ジョヴァンニ(1787)
Herbert Graf演出版(1978年上演)9クラシックな演出。ドンナ・アンナ役は特徴的な顎を持つ52歳のジョーン・サザーランド。
Franco Zeffirelli演出版(1990年上演)James Levine指揮。
Franco Zeffirelli演出版(2000年上演)Renée Fleming、Hei-Kyung Hong出演。James Levine指揮。
Michael Grandage演出版(2011年上演)ファビオ・ルイージ指揮。モーツアルトファンで、トニー賞やローレンス・オリビエ賞受賞歴のある演出家によるエレガントな舞台。Michael Grandage演出版(2016年上演)ファビオ・ルイージ指揮。騎士団長役は韓国出身のKwanfchl Youn10。
☞Cosi fan tutteコジ・ファン・トゥッテ 女は皆こうしたもの(1789)
Lesley Koening演出版(2014年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。レヴァインはMETにて60回以上ものコジ・ファン・トゥッテを指揮しています11。
真面目で深刻なドラベッラ役はズボン役としても活躍するIsabel Leonard(『フィガロの結婚』カルビーノ役など)。陽気で愛らしいフィオルディリージ役は『ラ・ボエーム』のミミも演じたSusanna Phillips12。
Phelim McDermott演出版(2018年上演)1950年代のコニーアイランド遊園地に触発された舞台で、まわるコーヒーカップに乗って2組のカップルが愛を語り合います。
2015年のブロードウェイの『王様と私』でトニー賞を受賞したケリー・オハラが、この演出ではモーテルのメイドとなる女中デスピーナ役。デリー・オハラは、『メリー・ウィドウ』にもヴァラシエンヌ役で登場しています。13
前年大ヒットしたミュージカル映画『グレーテスト・ショウマン』をほうふつとさせるサーカスをモチーフに、小人や小太りのひげ女、入れ墨男が登場します。また、火喰い女や蛇使いなど本物の芸人も登場します。
☞Die Zauberflöte魔笛(1791)
デヴィッド・ホックニー演出版(1991年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。キャスリーン・バトル出演。著名な現代美術家の14カラフルな演出。ホックニーの大胆な色使いと強烈なイメージは聴衆を魔法にかけます。
ジュリー・ティモア演出版(2006年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。パミーナ役はYin Huang。ザラストロ役は映画『魔笛』でも同役を演じたルネ・パーペ。
ブロードウェイの『ライオン・キング15』でトニー賞ミュージカル演出賞やローレンス・オリヴィエ賞衣装デザイン賞を受賞したジュリー・ティモアによる、ミュージカル同様、巨大なパペットやお面、京劇か歌舞伎風の厚化粧などを効果的に利用した演出。英語上演。ジュリー・ティモアは「ザラストロと夜の女王の衣装はすごく素敵で、3人の童子を乗せる大きな鳥のからくり人形の仕掛けも素晴らしいと思いますが、私の一番のお気に入りは熊たちなんです。」とインタビューに答えています。
ジュリー・ティモア演出版(2017年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。ザラストロ役ルネ・パーペ。
パパゲーノと老婆(実は若いパパゲーナの仮の姿)の掛け合い中「年取った嫁さんでもいる方が全く嫁さんがいないよりマシさ、ねえ、マエストロ。」と、オーケストラピットにいる独身の指揮者レヴァイン(当時74歳)に向かって話しかける楽しい場面もあります。レヴァインはゲイとして知られており、この公演から2ケ月後の12月にニューヨーク・タイムズ紙に学生など弱者の立場にある複数の青年への性的虐待が報じられ、メトロポリタン歌劇場の音楽監督を解雇されました。28歳でMETデビューし、首席指揮者、音楽監督、芸術監督を務め、2011年までボストン交響楽団の音楽監督も務めていた時は米国最高額の指揮者でした。2021年3月に死去16
☞The Lion King – Circle of Life | Musical Awards Gala 2018
☞The Lion King Broadway-Grasslands Chant
☞”The Lioness Hunt” from THE LION KING, the Landmark Musical Event
☞”I Just Can’t Wait to be King” from THE LION KING in London
☞They Live in You – The Lion King Musical
☞Be Prepared – Disney’s THE LION KING (Official Lyric Video)
☞El Rey León el musical Madrid. Escena Hakuna Matata
☞The Madness of King Scar/ La locura del Rey Scar
☞Endless Night
☞The Lion King Broadway LIVE London Palladium 2016 YouTube 720p
☞The Lion King Finale (Final Busa/Circle of Life) – Regent Theatre, Melbourne
☞La Clemenza di Tito皇帝ティートの慈悲(1791)
ロッシーニのオペラ
07☞Il Barbiere di Sivigliaセビリアの理髪師(1816)ロッシーニ
John Cox演出版(1988年上演)キャスリーン・バトル、レオ・ヌッチ出演。こっけいな演出。
黒人のキャスリーン・バトルはキーンとしない澄んだ高温を出すソプラノだね。
Bartlett Sher演出版(2007年上演)これまでよりもっとコメディっぽくなり観客を熱狂させるダイナミックな中にも新鮮でびっくりさせるしかけを演出。真っ白なバックや花道の演出は、二次元の映像と三次元の融合のような、興味深い演出です。
ロジーナ役は『シンデレラ』等を演じたジョイス・ディドナート。アルマヴィーヴァ公爵役のJuan Diego Flórezは『シンデレラ』でラミロ王子を演じジョイス・ディドナードと共演しています。フィガロ役は『ヴォツェック』等を演じたPeter Mattei。ペルー出身でラテン系ハンサムで恋の仕掛けに注力するJuan Diego Flórez18とコミカルなPeter Matteiのペアは、ドン・ジョバンニとレポレッロの組み合わせのようです。
衣装デザインは7つのトニー賞受賞歴を持つキャサリン・ズーバー。19Bartlett Sher演出版(2014年上演)アルマヴィーヴァ公爵役はローレンス・ブラウニーですが、真面目そうな雰囲気は、のちの『フィガロの結婚』に登場する浮気者の公爵に変貌するとは想像できません。ロジーナ役Isabel Leonard(『コジ・ファン・トゥッテ』姉妹役『フィガロの結婚』ケルビーノ役など)。フィガロ役Christopher Maltman。
宝塚のようにオーケストラピットと観客の間にも花道のある舞台。公爵とフィガロが話している間に舞台装置が変わるなど、花道を上手に利用しています。➤フランスの劇作家ボーマルシェの戯曲(フランス語原題:Le barbier de Séville ou la précaution inutile 「セビリアの理髪師あるいは無用の用心」)が原作。ロッシーニの前に、ジョヴァンニ・パイジエッロが同戯曲により同名のオペラを作曲(1782年初演)。
『セビリアの理髪師』、『フィガロの結婚』、『罪ある母』は「フィガロ3部作」と言われています。『フィガロの結婚』はモーツァルトのオペラで有名ですが『罪ある母』は幾度がオペラ化されたことはあるものの有名にはなっていません。
➤『罪ある母20』は『フィガロの結婚』から20年後のお話です。伯爵夫人ロジーナと戦地で亡くなったケルビーノの間不義の子レオンが伯爵家の跡取りとして育てられており、伯爵の私生児フロレンティーヌと愛し合っています。レオンの出生を疑い相続さたくない伯爵とフロレンティーヌを跡取りとし結婚して財産を相続したいベギアスが登場し画策しますが、フィガロと妻のスザンヌの活躍で、恋人同士が無事に結婚できるようになって大団円。
アルマヴィーヴァ伯爵 Il Conte d’Almaviva (テノール)身分を隠してロジーナに求愛している恋人。病気の音楽教師代理や士官に変装しロジーナと会う努力をする。
バルトロ(医師) Bartolo, dottore in medicina (バス)ロジーナと結婚しようとしている後見人。
ロジーナ(バルトロの姪) Rosina, ricca pupilla in cas di Bartolo (メゾソプラノ)
フィガロ(理髪師) Figaro, barbiere(バリトン)恋人同士が結婚できるよう画策する。
バジリオ(音楽教師) Basilio, maestro di musica di Rosina (バス)ロジーナの音楽教師アンブローゾは、古くからのイタリアのコメディに登場する道化師の系譜につながります。不健康で疲れていますが主人に忠実です。彼は沈黙は金とばかりに、歌ったり話たりせず舞台上ですぐ寝てしまいますが、決してあくびはしません。バートレット・シャー監督は早い段階で、あくびは観客にとって伝染性であり、連鎖反応を引き起こすので俳優がステージ上で行うのは危険であるといっています。21
「今の歌声は」
☞Kathleen Battle – Rossini: Una voce poco fa
☞テレサ・ベルガンサ 今の歌声は セヴィリアの理髪師
☞cecilia bartoli UNA VOCE POCO FA
☞Rossini, arr. Major Peter Parkes – “Una Voce Poco Fa” – cornet solo. コルネット
フィガロ「私は街の何でも屋」
☞Tom and Jerry cartoon episode 129 -1964トムとジェリー
☞Il barbiere di siviglia “Largo al factotum” Dmitri Hvorostovsky
☞Largo Al Factotum- The Barber of Seville (Mustard Pimp Remix) 現代音楽との融合
☞Barber of Seville(2018)Melodica Menピアニカ二重奏
08☞Armidaアルミーダ(1817)ロッシーニ
Mary Zimmerman演出版(2010年上演)22。タイトルロールはルネ・フレミング。リカルト役は、2001年メトロポリタン歌劇場国際オーディションをはじめ数々の賞を受賞している黒人の若手テナー歌手ローレンス・ブラウニー23。円熟の美女と爽やかな好青年の組み合わせが、オペラのテーマをうまく演出しています。
悲劇『オテロ』と正反対とも言える組み合わせが逆にいいね。
(無垢で純粋な白人の美少女と、考え込む熱血壮年黒人(ムーア人)の組み合わせ)
使い魔のバレエや、祝祭の1時間にわたるバレエなど、第2幕はファンシーなバレエが満載です。
第3幕では魔法による庭園を芥子の花畑のセットで演出しています。芥子の花畑はボロディンの『イーゴリ公』の演出でも使われていましたが、西洋から見た東欧や中東などオリエンタルな印象を醸し出すアイテムです。
原作は、トルクヮート・タッソーの叙事詩『解放されたエルサレム』。第一回十字軍のエルサレム近辺を舞台に美しく邪悪な一人のタイトルロールの歌姫と6人のテナーが登場します。
原作のムスリム魔女アルミーダは、助けを求めるふりしてキリスト教陣営に入り込み、誘惑により騎士たちを分裂させ、森へ誘い込み動物に変えるのですが、最強の騎士リナルドとは本当に愛しあってしまいます。彼女を残して戦場に戻ったリナルドに復讐しようとムスリム陣営にもどり、リナルドを殺したものと結婚すると宣言しますが十字軍にエルサレムを奪取され、自殺しようとします。原作では、自殺をリナルドにとめられ彼の懇願によりキリスト教へ改宗するのですが、このオペラでは愛と復讐の気持ちで葛藤するアルミーダが復讐を決意するところで終わります。
アルミーダ, ダマスクスの女王にして魔法使い。リナルドを誘惑。
イドラオテ, アルミーダの叔父にして、ダマスクスの王
アスタロッテ, アルミーダが使う妖魔たちのリーダー
リナルド, 仲間より隊長に推薦される十字軍の騎士
ジェルナンド, 隊長に推薦されなかったことを恨みリナルドとの決闘で殺されるライバル 。
ウバルド, リナルドをアルミーダより救おうとする騎士
カルロ, ウバルドの仲間で、騎士
ゴッフレード, 十字軍騎士たちのまとめ役
エウスターシオ, リナルドの友人。ゴッフレードの弟
アルミーダを題材にした作品が多数存在します。24
- アルミード – ジャン=バティスト・リュリの叙情悲劇(1686年)
- リナルド – ヘンデルのオペラ(1711年)25
- エジプトの戦場のアルミーダ – アントニオ・ヴィヴァルディのオペラ(1718年ごろ)
- 見捨てられたアルミーダ – ジュゼッペ・サルティのオペラ(1759年)
- 見捨てられたアルミーダ – ニコロ・ヨンメッリのオペラ(1770年)
- アルミーダ – アントニオ・サリエリのオペラ(1771年)
- アルミーダ – アントニオ・サッキーニのオペラ(1772年)
- アルミード – クリストフ・ヴィリバルト・グルックのオペラ(1777年)
- 空想のアルミーダ – ドメニコ・チマローザのオペラ(1777年)
- アルミーダ – ヨゼフ・ミスリヴェチェクのオペラ(1780年)
- アルミーダ – フランツ・ヨーゼフ・ハイドンのオペラ(1783年)
- リナルドとアルミーダ – ジュゼッペ・サルティのオペラ(1786年)
- アルミーダ – アントニン・ドヴォルザークのオペラ(1904年)
- アルミードの館 – ニコライ・チェレプニンのバレエ音楽(1908年)
- アルミード (映画) – リュリの作品をもとに作られた映画(1987年)
09☞La Donna del Lago湖上の美人(1819)ロッシーニ
Paul Curran演出版(2015年上演)ジョス・ディドナート出演。26原作はサー・ウォルター・スコット『湖上の美人』27
- ウベルトことジャコモ5世(スコットランド王)…テノール
- アンガス伯ダグラス(エレナの父親)…バス
- ロドリーゴ・ディ・ドゥ(反乱軍の首領)…テノール
- エレナ(ダグラスの娘)…ソプラノ
- マルコム・グレーム(反乱軍の将校)…メゾソプラノ
- アルビーナ…メゾソプラノ
- セラーノ…テノール
- ベルトラム…テノール
10☞Semiramideセミラーミデ(1823)ロッシーニ
Jhon Copley演出版(2018年上演)原作はヴォルテールの悲劇『セミラミス』。同じくセミラミスを題材にして、ヘンデルも1733年にオペラを作曲28している他、1910年までに65以上のオペラがつくられている他、絵画や音楽作品、文学の題材ともなっています。シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』や『タイタス・アンドロニカス』にもセミラミスに触れる部分があります。
➤セラミラス29は紀元前800年頃[1]の伝説の女王で、シリアのアシュケロンの魚の女神デルケトー(別名アタルタギス)の娘で、鳩に育てられたためアッシリア語で鳩の意味を持つ名前がつけられた30といいます。臣下の妻であった彼女を奪って正妃とした夫ニニス王の死後、女王として(または息子共同で40余年もの間)統治し大がかりな都市建設やインド遠征などを行いました。死亡は息子の謀反とも暗殺されたとも、鳩になって飛び去ったとも言われます。
➤モデルは、紀元前9世紀アッシリアの王シャムシ・アダド5世の王妃でその子アダド・ニラリ3世の摂政を務めたサンムラマートで、ギリシャに渡ってセミラミスと呼ばれました。アッシリア31は現在のシリアやイラク付近にあった王国ですが、最大はエジプトまで支配する大帝国でした。
➤サンムラマート妃は王の死後、幼い息子が成人するまでの5年間摂政を務めたそうですが、女性が大帝国の統治者の地位にいることが珍しかったので、神話と結びついたセラスミス伝説となって伝わったのだろうと考えられています。ディオドロスの『神代地誌』やヘロドトスの『歴史』には、ギリシャ神話のアフロディーテにあたるイシュタル神と同一視されているとの記述があるそうです。
11☞Le Comte Oryオリー伯爵(1828)ロッシーニ
Bartlett Sher’演出版(2011年上演)トニー賞受賞演出家。アデル伯爵夫人役ダイアナ・ダムラウ、イゾリエ役ジョイス・ディドナート出演。32舞台上に更に舞台を設け、指示する監督や小道具や大道具を出し入れする様子も見せる演出。元々楽しい舞台を粋な衣装やコミカルな振付・表情で更に盛り上げます。
男たちが十字軍遠征中、残された女たちと一部の男性が繰り広げるコメディ。尼僧に扮したオリー伯爵達がワインで歌っていることろに、人がやってくると聖歌に変わるシーンなど、楽しいオペラ。
オリー伯爵(テノール)Comte d’Ory 隠者を装いアデルをはじめ女達をモノにしようとする領主。尼僧に変装しアデル夫人の城に入り込む。
ランボー(バリトン)Raimbaud 騎士、オリー伯爵の仲間。隠者に相談に来る人々に応対。
教育係(バス)Gouverneur 隠者がオリー伯爵の変装と見抜き、イゾリエとアデルに伝える後見人。
イゾリエ(メゾソプラノ)Isolier アデルへの恋を隠者に相談するオリー伯爵の小姓。尼僧が主人のオリー伯爵と見抜き、アデルと入れ替わって主人を懲らしめるも、十字軍帰還の知らせに際してアデルと協力して主人を逃がす。
アデル(ソプラノ)La Comtesse Adèle フォルムティエの伯爵夫人。夫の不在に悩み隠者に相談すると、恋を勧められイゾリエが気になる。イゾリエと一緒にオリー伯爵を懲らしめた後、逃がす。
ラゴンド夫人(メゾソプラノ)Ragonde フォルムティエ城の侍女頭。アデルに隠者をすすめる。
ドニゼッティのオペラ
12☞L’Elisir d’Amore愛の妙薬(1832)ドニゼッティ
Nathaniel Merrill演出版(1981年上演)デザインにRobert O’Hearnが参画した魅惑的な演出。ルチアーノ・パバロッティ出演。
Jhon Copley演出版(1991年上演)キャスリーン・バトル、ルチアーノ・パバロッティ出演、ジェームズ・レヴァイン指揮。Beni Montresorがデザインに参画したカラフルな演出。
Bartlett Sher.演出版(2012年上演)生気に満ち溢れた演出。Catherine Zuberによるカラフルで粋な衣装。Anna Netrebko出演。
Battlet Sher演出版(2018年上演)33
フランスの喜劇『媚薬』を翻案。前年に、同じミラノでベッリーニが、やはり田舎村での恋愛騒動を描いたオペラ『夢遊病の女』(La sonnambula)が成功しています。34
アディーナ (ソプラノ)美人で頭も良いが、ちょっと高慢な富農の娘。ベルコーレと婚約するもネモリーノへの愛に気づき結ばれる。
ネモリーノ (テノール) アディーナに想いを寄せ愛の妙薬を買う単純で間抜けな貧農。叔父の遺産を相続し裕福になると村娘に人気が出始める。
ベルコーレ (バリトン)アディーナに求婚する若くて野心満々の軍曹。
ドゥルカマーラ博士 (バス)口の達者なインチキ薬売り。
ジャンネッタ (ソプラノ)事情通でうわさ好きの村娘。
理髪店の前の青と赤の白サインは静脈と血液と包帯を指すことでも知られている通り、理髪・外科歯科を含む医療は同じカテゴリーでしたので、薬も売っていたのでしょう。36
13☞Lucia di Lammermoorランメルモールのルチア(1835)ドニゼッティ
このオペラはMETの137年の歴史の中で611回上演されました。ロッシーニの『セヴィリアの理髪師』の632回に次いで多いイタリアのベルカント・オペラの上演回数です。
1883年にはMarcella Sembrichが歌い10回ものアンコールがありました。1892年には19世紀の歌う小鳥と呼ばれたAdelina Pattiが歌い、翌年にはNellie MelbaがMETデビューしました。1911年のLuisa Tetrazzini、1913年のFrieda Hempel、1916年のMaria Barrientosに続き、1921年からはイタリア人Amelita Galli-Curciが人気を博しましたが喉の手術のため降版し、1924年に同じイタリア人Toti Dal Monteが演じました。1931年から25年間はフレンチ・ソプラノのLily Ponsが歌いました。
かのマリア・カラスが演じたのは1956年から58年の6公演でしたが注目を集めました。
オーストラリア人のジョーン・サザーランドは1961年にこの役でジャン・フランコ・ゼッフェレッリによる演出にてMETデビューし、12分間拍手が鳴りやみませんでした。37
Bruce Donnell演出版(1982年上演)3856歳のジョーン・サザーランド39がタイトル・ロール。
Mary Zimmerman演出版(2009年上演)アンナ・ネトレブコ出演。19世紀を舞台とした演出。Mary Zimmerman演出版(2011年上演)タイトルロールは99☞ドニゼッティ『連隊の娘』でコミカルな演技を見せたNatalie Dessay。彼女は歌手としてより女優としてこのオペラに臨んだといいます。また、何度演じても常に初舞台のようにフレッシュな気持ちで臨むようにしているとも。狂乱の場のアリアは、オーケストラも軽快で自分の声に合っている曲なのでそんなに難しくなく、第二幕のバリトン(兄エンリーコ)との低く長いデュエットの方が難しいとインタビューに答えています。40Natalie DessayはWilly Decker演出版(時計のシンプルな舞台と赤いスレンダードレス)の『椿姫』でもタイトルロールを演じています。41
スコットランドの作家ウォルター・スコットの小説『ラマムアの花嫁』(The bride of Lammermoor、1825年)が原作。1669年にスコットランドで実際に起きた、意に染まぬ婚約を強いられた花嫁が花婿を刺した事件の舞台を、18世紀はじめとした小説42。敵対した一族の男女が引き裂かれ自死するスコットランド版ロミオとジュリエット。(シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の初演は1595年頃43
ルチア Miss Lucia(ソプラノ)仏語版リュシー – 恋人エドガルドの不実を知らされ、アルトゥーロと結婚するものの、嘘の情報だと知り、新婚の夫を刺し殺して狂死する妻。
エドガルド Sir Edgardo di Ravenswood(テノール)仏語版エドガール:ルチア、エンリーコと敵対関係の一族の党首でルチアの恋人。恋人が結婚した不実をなじるものの、恋人の死を知り自死。
アシュトン卿エンリーコ Lord Enrico Ashton(バリトン)仏語版アンリ・アシュトン-ルチアの兄。偽の手紙により敵対一族のエドガルドの不実を演出し、妹をアルトゥーロと結婚させようと策謀。
アルトゥーロ Lord Arturo Bucklaw(テノール)仏語版アルチュール -ルチア一族の支援を約束する高官で政略結婚の相手44
The Diva Dance – The Fifth Element – Inva Mula (Lucia di Lammermoor)
ロシアの高音歌手ヴィタスによるアレンジ
ヴィタス VITAS-『Lucia Di Lammermoor/ランメルモールのルチア』2006“Alech Taadi” by Algerian The Fifth Element – Police Chase Scene (HD 1080p)
(HQ) Vitas – The 7th Element 2001 ヴィタス「セヴンス・エレメント」
☞『フィフス・エレメント』(1997)リュック・ベンソン監督45衣装はゴルチェ。46
➤コーベン・ダラス(ブルース・ウィリス)2263年のニューヨークに住むタクシー運転手。
➤リー・ルー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)オレンジ色の髪を持つ謎の女性。その正体は、悪を滅ぼす武器のキーである5番目の要素(フィフス・エレメント)“愛”。
➤ゾーグ(ゲイリー・オールドマン)武器商人。タクシー会社の親会社社長。
➤コーネリアス神父(イアン・ホルム)遥か昔からフィフス・エレメントの誕生を待ち続けてきた者たちの子孫。
➤ルビー・ロッド(クリス・タッカー『ラッシュ・アワー』などアフリカ系米国人)ラジオ番組の司会者。ラジオなので映像はないのだが、公ド派手な衣装を着ている。ハイテンションの高音・高速トークが特徴。口癖は「Oh My God」「グリーン!(最高)」。
➤ディーヴァ・プラヴァラグナ(マイウェン・ル・ベスコ、当時リュック・ベンソン監督の妻)/歌の吹き替え(インヴァ・ムラ)オペラ公演の歌手 『ランモメールのルチア』から「狂乱の場」のアリアを歌います。
➤ミスター・シャドー(ジャン・レノ(声のみの登場))邪悪な意思を持つ小惑星
近未来の設定が楽しいSF。3次元ポリスカーが立ち寄るマクドナルドのドライブスルーには赤毛の受付嬢。武器商人のオフィスは自動掃除機(今では当たり前)の他、自動名刺バインダーや鑑賞用サボテンなどのオフィスまわりの面白グッズ。武器商人の警備員はごつい体格に黒レザーのショートパンツでいかにもゴルチェ。屋台へ食べに行くのではなく三次元屋台がマンションの窓際へやってくる。ルビー・ロッドの出待ちをする、同じモノトーンの服を着た若い女性の一群は日本人の修学旅行生をイメージしたものか。宇宙ロケットの到着地ではハワイのようにレイをかけて迎えてくれます。
ファッション・フリーク・ショウ47 2020年にオートクチュールを引退したフランス人ファッション・デザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエの半生を描くミュージカル。パリのファッション界の低評価からロンドンでのブレイク、ゲイのパートナーのエイズ死を乗り越えたチャリティなどを盛り込み、200点以上の衣装デザインがリバイバルされます。ロッシ・デ・パルマやカトリーヌ・ドヌーヴが映像出演。
オンワード樫山の社長に見出され「バスストップ」ブランドの専属デザイナーとしても活躍しました。マドンナが着用した尖った形のコーンブラなどのデザインも有名です。
ジャンポール・ゴルチエ:フリーク&シック48ミュージカルの裏側に密着したドキュメンタリー作品。
フィフス・エレメントの他、ゴルチェが手がけた映画衣装など
☞『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989)49(ピーター・グリーナウェイ監督)イギリス・フランス合作映画。
リシャール・ボーランジェ(『フランスの思い出』『タンゴ』『イヴォンヌの香り』など)、マイケル・ガンボン、ヘレン・ミレン、ティム・ロス(『ロブ・ロイ』『海の上のピアニスト』『ミリオンダラー・ホテル』など)など出演。
☞『キカ』50(1993)(ペドロ・アルモドバル監督)スペイン・フランス合作映画。タイトルキャラクターとしてベロニカフォルケがゴヤ賞の最優秀女優賞を受賞。ビクトリア・アブリル、ピーター・コヨーテ51(『赤い航路』『エリン・ブロコビッチ』『ファム・ファタール』など)、ロッシ・デ・パルマなど出演。
▶ラモンのカトリック風絵画のコレクションにはディズニーアニメ『白雪姫』の女王の絵もあります。
☞『ロスト・チルドレン』(1995)52フランスのファンタジー映画(ジャン=ピエール・ジュネ監督)。
- BOØWYが樫山とのタイアップで衣装
- THE ALFEEのライブとゴルティエのファッションショーが融合したイベントツアー「THE ALFEE with Jean-Paul GAULTIERツアー」
- 宝塚歌劇花組公演「SPEAKEASY〜風の街の悪党たち」(1998年上演)や星組公演「プラハの春」(2002年上演)
14☞チューダー3部作(ドニゼッティ)
以下はガエターノ・ドニゼッティによるチューダー3部作(または女王3部作)とよばれます。
Anna Bolena アンナ・ボレーナ(1830)
ヴィッド・マクヴィガー演出版(2011年上演)53。54(英語字幕付き)原作:イッポリト・ピンデモンテの小説『エンリーコ8世、またはアンナ・ボレーナ(Enrico VIII ossia Anna Bolena )』及びアレサンドロ・ペーポリ『アンナ・ボレーナ』に基づき、アン・ブーリンの処刑前を描きます55。
イングランド王妃アンナ・ボレーナ =アン・ブーリン(ヘンリー8世の妃)
イングランド国王エンリーコ8世=ヘンリー8世 (イングランド王、8回結婚)
ジョヴァンナ・セイモー:ジェーン・シーモア(アンの女官、ヘンリーの愛人)
ロシュフォール卿=ジョージ・ブーリン(アンナの弟、処刑)
リッカルド・ペルシー卿=ヘンリー・パーシー(アンの元婚約者)
スメトン=マーク・スミートン(王妃の楽士、処刑) アルト56またはコントラルト(アルトの声域の男声)57。
Maria Stualda マリア・ストゥアルダ(1834)
デイヴィッド・マクヴィカー演出版(2013年上演))5859タイトル・ロールはジョイス・ディドナード。
シラーの戯曲を原作とするオペラ。「マリア・ストゥアルダ(Maria Stuarda)」は「メアリー・ステュアート」のイタリア語形。初演1835年。60
女王とメアリーの邂逅(史実では一度も合っていません)とメアリーの処刑をロバート(史実では政治的な理由からメアリーの夫候補とされたエリザベスの恋人)への気持ちを絡めて描いています。61
マリア・ストゥアルダは高貴な犠牲者、エリザベッタは嫉妬に狂った悪役として描かれることが多いですが、両役とも主役級のソプラノのディーバが配役されます。
マリア・ストゥアルダ=メアリー・スチュアート
エリザベッタ=エリザベス1世女王
アンナ・ケネディ=ジェーン・ケネディ(メアリーの侍女)62
ジョージ・タルボット=シュルーズベリー伯(メアリーの監視役)
ロバート=ロバート・ダドリー(エリザベスの恋人)
グリエルモ・セシル卿=ウィリアム・セシル(エリザベスの側近)
☞エスポジト演出、カルミナーティ&ベルガモ・ドニゼッティ劇場
☞ドニ・クリエフ演出63、フィニーチェ劇場(英語でフェニックス=不死鳥を表す名を冠したベネツイアの劇場64)
Rpoberto Devereux ロベルト・デヴェルー(1837)
デヴィッド・マクレガー演出版(2016年上演)65ソプラノ Sondra Radvanovskyが苦悩する老境のエリザベス1世女王を演じています。サラ役Elīna Garanča。
エリザベス1世女王が晩年に寵愛したエセックス伯をモデルとした物語。66原作はジャック=フランソワ・アンスロ「イングランド女王エリザベスの悲劇(1829)」
史実では、エセックス伯はエリザベスの側近67セシル(40歳頃)と対立し、また僭越なふるまいにより女王との関係も悪化しました。最終的にはクーデターの計画を理由に処刑されました68(34歳)が、その2年後に女王も亡くなりました69(69歳)。女王がエセックスを平手打ちした件や、エセックスとの対立にノッティンガム伯がとりなした件などの史実も反映されています。ノッティンガム伯70(60代半ば)の実際の夫人はサラではなく、アン・ブーリンの姪キャサリン・ケアリー(エリザベス1世女王の従姉妹)71(50歳頃)です。なお、エリザベス1世に44年間仕えたキャサリンは、女王崩御の前後に亡くなりました。また、その後ノッティンガム伯は、50歳年下のマーガレット・スチュアートと結婚します。(次代ジェームズ王の従姉妹の子)
イングランド女王エリザベッタ=エリザベス1世女王
ノッティンガム公(サラの夫)
ノッティンガム公夫人(ロバートの元恋人)
ロベルト・デヴリュー=エセックス伯ロバート・デヴルー
セシル卿=ロバート・セシル(ウィリアム・セシルの息子でエリザベスの側近)
サー・ローリー=ウォルター・ローリー(詩人、冒険家、エリザベスのお気に入り)
☞舞台監督:アレッサンドロ・タレヴィ、装置&衣装:マドゥレーヌ・ボイド。マドリード王立劇場 2015年10月
☞舞台監督:クリストフ・ロイ72映像監督:ブライアン・ラージ73
15☞La Fille du Régiment連隊の娘(1840)ドニゼッティ
ローラン・ペリー演出版(2008年上演)マリー役のNatalie Dessay は、この後、オーソドックスな演出は面白くない、という理由でミラノ・スカラ座の公演をキャンセルしてしまったそうです。それくらいに素晴らしくて楽しい演出。74
ローラン・ペリー演出版(2019年上演)
ステファニー・ブライズが太ったベルケンフィールト侯爵夫人をコミカルに演じています。
ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞歴のあるアメリカ人女優キャスリーン・ターナー75がクラッケントルプ公爵夫人役で出演。歌の無い役ですが、指揮のEnrique Mazzolaや、ステファニー・ブライズ、シュルピス役のMaurizio Muraroとの楽しいやりとりは観客から笑いが起こります。マリー役は南アフリカのズールー族出身のPretty Yende。
ホルンではじまり、トランペットや太鼓が響く行進曲が含まれる序曲で、ナポレオン戦争時のチロル地方の軍隊が舞台であることを思い起こさせます。
マリー(ソプラノ)フランス軍第21連隊で育てられた酒保係76(軍隊の日用品調達の内部担当または外部委託商人)の孤児。伯母ベルケンフィールロ侯爵夫人(本当は実母)に引き取られ、いいなりに結婚させられようとするが、トニオと連隊に再会しトニオとの結婚を許される。
トニオ(テノール)崖から落ちたマリーを助けて恋に落ち連隊に入隊するチロルの青年。マリーが公爵夫人に引き取られた後、大尉に昇進し、再度求婚するために連隊と共にマリーのいるベルケンフィールト公爵夫人のパリの屋敷へ行く。
シュルピス(スルピツィオ)(バス)幼い孤児だったマリーを育てた軍曹。ベルケンフィールト侯爵夫人の執事となる。
ベルケンフィールト侯爵夫人(ベルケンフェルト)(メゾソプラノ)死んだ妹の子であることが判明したマリーを引き取って教育するマリーの伯母。本当は実母で、マリーに財産を相続させるためケラッケントルプ公爵夫人の甥と結婚させようとするが、最期にはマリーとトニオの愛を許す。
オルタンシウス(オルテンシオ)(バス)ベルケンフィールト侯爵夫人の執事
第21連隊の軍人たち マリーの父親代わり
クラッケントルプ公爵夫人 台詞のみ。(甥は登場しない)
太鼓の二重唱Julie Fuchs & Carlos Alvarez – Au bruit de la guerre
La fille du régiment / Act 1 – Rataplan, rataplan, rataplanエリック・ガレット
Rataplan – La fille du regiment- Teatro Verdi Triesteパトリツィア・チョーフィ & ニコラ・ウリヴィエリ 「歌のレッスン」 連隊の娘
16☞Don Pasqualeドン・パスクワーレ(1843)ドニゼッティ
Jhon Dexter演出版(1979年上演)designed by Desmond Heeley。豪華な演出。Otto Schenk演出版(2010年年上演)ジェームス・レヴァイン指揮、アンナ・ネトレブコがちょっとセクシーなじゃじゃ馬ノリーナ(ソフロニア)役。時代を感じさせないコメディを魅惑的に演出。
原作は1810年にAngelo Anelliによって書かれたStefano Pavesiのオペラ『Ser Marcantonio』77 。19世紀はじめのローマが舞台。78
ドン・パスクワーレ(B) 甥が自分の勧める結婚をしないので自分自身が結婚しようとする裕福な独身の老人。新妻ソフロニアをもてあまし、甥に恋人(実は新妻と同一人物)との結婚を許し同居を嫌がる新妻を追い出そうとする。
マラテスタ(Br) 一計を案じ、自分の妹といつわり結婚相手としてソフロニア(実はノリーナ)を紹介するドン・パスクワーレの主治医。エルネストの友人。
エルネスト(T) 友人と画策し、叔父に恋人ノリーナとの結婚を認めせるドン・パスクワーレの甥。
ノリーナ(S) うら若き未亡人。ドン・パスクワーレと嘘の結婚をしたとたん、計画どおり、内気な娘からじゃじゃ馬にかわる。
公証人(B) 偽の公証人。マラテスタのいとこ。
ヴェルディのオペラ
17☞Ernaniエルナーニ(1844)
Pier Luigi Samaritani演出版(1983年上演)ロマンティックな演出。ジェームズ・レヴァイン指揮。タイトルロールはルチアーノ・パバロッティ。Pier Luigi Samaritani演出版(2012年上演)79スペイン王ドン・カルロ役はディミトリー・ホロストフスキー80。ソ連出身のバリトン。2017年脳腫瘍により55歳で死去。
19☞Il Trovatoreイル・トロヴァトーレ(1853)
Fabrizio Melano演出版(1988年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮、ルチアーノ・パバロッティ出演。金床の歌では職人のしぐさと曲がぴったり合っています。アズチェーナ役Dolora Zajick。最後のシーンはアズチェーナの前後で炎が燃えさかる演出。
David McVicar演出版(2011年上演)ルーナ伯爵役ディミトリー・ホロストフスキー、アズチェーナ役Dolora Zajick。➤Sir David McVicarの2009年からの演出は、舞台を独立戦争時代(1808-18014)のスペインとし、フランシス・デ・ゴヤ81の絵画作品『The Disasters of War』や『わが子を食らうサルテュニュス』などの黒い絵シリーズに触発された舞台セットを演出しました。
➤Sir David McVicarは、人々が実際に何を着ていたかよりも、彼らを恐れ迫害する人々にどのように認識されていたかに興味がありましたが、Brigitte Reiffenstuelの衣装は一部ジプシー風、一部ゴヤ風です。
➤Charles Edwardsがデザインしたセットは、切り替えが最小限で済むようターンテーブルに乗っています。「我々はものごとがパワフルに続くようにしたかったんだ」David McVicarは説明します。「音楽の力強さにノっていることが大事だからね」
➤裏の物語が明らかになるに連れ、話が変わってくることに人々は気づき始めます。メインキャラクターではありませんが全体を俯瞰してナレーションする警備隊長のフランコの耳にも入ります。ヴェルディの時代にはこのオペラの物語と同じような状況はよくあることでした。実際、ヴェルディの後の『シモン・ボッカネグラ82』は似たシチュエーションの実話に基づいて描かれています。
➤すべからくオペラは、単にストーリーが読まれるだけでなく力強い音楽によって実体験になるのです。アズチェーナは裏の顛末を語りますが、エモーショナルな音楽が、単なる暴露話をいたましい出来事に変貌させます。落ち着かない気持ちになった聴衆は “I’d burned my own son!”(アタシは自分の息子を火にかけたんだよ!) という字幕がスクリーンにあらわれたとたん、戦慄するでしょう。音楽やドラマチックな瞬間を真に意識していなくても、ヴェルディのこのセリフがメゾソプラノで叫ばれる瞬間笑みが凍り付くことでしょう。David McVicar演出版(2015年上演)レオノーラ役アンナ・ネトレブコ、ルーナ伯爵役ディミトリー・ホロストフスキー、アズチェーナ役Dolora Zajick、マンリーコ役は韓国出身の李勇勳(リー・ヨンフン83)。84。
➤この物語の悲劇の本当の種明かしは2時間超のオペラの最後にアズチェーナが放つ「マンリーコはお前の弟だよ!かあさん、今、復讐が成った!」という一言です。この時点でのアズチェーナとルーナ伯爵の演技によって、このせつない悲劇の不毛さが一層ひきたち、主人公の恋人たちよりも重要な演技と言えるかもしれません。
敵の子なのに、復讐の道具として長年育ててきた一人息子マンリーコは母親想いに育ち、育ての母としての情も生まれています。その息子を処刑された悲しさとルーナ伯爵への憤り、実の幼子と実母を焼き殺され長年固執した復讐の達成感など、相反する様々な感情を、30年この役を演じてきたDolora Zajickが、一言の泣き笑いの演技と表情で見事に表現しています。
また、これまで恋人を巡る自分自身の感情と振る舞いと思っていたものが全て、アズチェーナの復讐の道具になっていたことを、取り返しがつかなくなってから一瞬で気づかされたルーナ伯爵の演技も、自身のセリフがない短時間なだけに難しい演技といえます。
人生の意義ともなってきた思いが結局は空しいものであったと、舞台上の二人ともが、いわばアイデンティティの崩壊になすすべもなく立ちすくむ悲劇とも言えます。恋人同士の不幸で劇的な死の後に更に追いうちをかけるようなこのシーンが、このオペラを単純な悲劇でないものに仕上げています。
➤ディミトリー・ホロフスキーはこの年、脳腫瘍の治療のため8月のスケジュールを全て降板していましたが、9月のこのMETの『イル・トルヴァトーレ』公演で復帰し絶賛されました。最初に登場するシーンでは、明るい場面ではないにもかかわらず、本人が客席に向かってほほ笑むまで嵐のような拍手が鳴りやみませんでした。その後、治療療養の甲斐なく2017年に11月に55歳で亡くなりました。85
➤METでも20年以上わたり、『椿姫』ジェルモン、『ドン・カルロ』ロドリーゴ、『仮面舞踏会』アンカーストレム伯爵、『エフゲニー・オネーギン』『ドン・ジョバンニ』『リゴレット』のタイトルロール、そして『イル・トルヴァトーレ』ルーナ伯爵を含む180以上の公演に出演しました。86
このオペラとは直接関係ありませんが、ハチャトリアン「仮面舞踏会」のオペラ曲もよく知られており、ソチオリンピックや映画「アンナ・カレーニナ」をはじめ様々なBGMに使われています。87
ハチャトゥリアン: 組曲「仮面舞踏会」:ワルツ[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]/ Khachaturian: Masquerade/Waltz naxos japan チャンネル登録者数 14.2万人Masquerade Waltz [HD] Marina Anissina & Gwendal Peizerat 1998 NHK Trophy Original Dance – Mintaka Alnilam チャンネル登録者数 11.5万人
Anna Karenina Aram Khachaturian Masquerade 4K ULTRA HD OPERA PLANET
War and Peace – Masquerade Suite Waltz TheAlena31
バレエ Masquerade Mayra Nopper
A.Khachaturian “MASQUERADE” ballet Armenian National Opera and Balletハチャトリアン剣の舞 Khachaturian: Sabre Dance / Rattle · Berliner Philharmoniker
剣の舞(ハチャトゥリアン)ピアニスト 近藤由貴/Khachaturian Sabre Dance (Gayane) Piano Solo, Yuki Kondo – YouTube/Khachaturian Sabre Dance (Gayane) Piano Solo
剣の舞(和楽器演奏)/日本音楽集団 cello644 チャンネル登録者数 2.22万人
Percussion Ensemble / 剣の舞 / Sabre Dance from GAYANE / マリンバ・打楽器 アンサンブル佐々木達夫 (Timpani)Marimba Duo ザ・マリンバ デュオ チャンネル登録者数 6080人
若手ピアニスト8名による2台ピアノ16手連弾「剣の舞」ライブ・フェスティバル in OITA
チャンネル登録者数 1210人
20☞La Traviataラ・トラヴィアータ椿姫(1853)
Colin Graham演出版(1981年)ジェームズ・レヴァイン指揮、アルフレード役プラシド・ドミンゴ。ターニャ・モイセイヴィチのデザインとザカリー・ソロフの振り付け。正統派の豪華な演出。Ileana Cotrubasは「花から花へ」高音は歌いません。Willy Decker演出版(2012年上演)Natalie Dessay,Dmitri Hvorostovsky出演。Fabio Luisi指揮。
Willy Decker演出版(2017年上演)3人の登場人物に焦点を当てたシンプルな舞台。舞台上の大時計の時間ドラマの時間を示しています。二人が過ごす田舎の家は華やかな花柄のファブリックで現され、アルマンとの蜜月からジェルモンとの邂逅後、元の生活にもどるまでの様子を効果的に表現します。また、赤いドレスと白いシュミーズでヴィオレッタの表面的・内面的生活を示し、赤い椿と白い椿をつけた‘椿姫’のアレゴリーともなっています。赤いドレスは仮面舞踏会でも効果的に使われ、その後のアルマンの振る舞いにつなげられています。
ヴィオレッタ役はソプラノのSonya Yonchevaですが「花から花へ」の高音は歌いません。この演習で様々な歌手が演じていますが、有名なアンナ・ネトレプコと比べると少し‘ぽっちゃりめ’かもしれません。
Michael Mayer演出版(2018年上演)ゴヤにインスピレーションを受けた演出。88Starring Diana Damrau主演。歌はありませんが、ジェルモンがヴィオレッタを説得するシーンでジェルモンの娘(アルマンの妹)が登場します。最期のシーンでもアルマン、ジェルモンと共にヴィオレットの臨終にかけつけますが、その手にはヴィオレッタが託した肖像ペンタントを握っています。第3幕のジプシーのバレエは、スペインの植民地であった南米メキシコの「死者の日」の祭りを思い起こさせるような、骸骨メイクのダンサーが踊ります。
21☞Simon Boccanegra(1857)シモン・ボッカネグラ
Tito Capobianco演出版(1984年上演)アンナ・トモワ出演、ジェームズ・レヴァイン指揮。Giancarlo del Monaco演出版(1995年上演)アメーリア役キリ・テ・カナワ、ガブリエーレ役プラシド・ドミンゴ。ジェームズ・レヴァイン指揮。Giancarlo del Monaco演出版(2010年上演)タイトルロールは15年前にガブリエーレ役を演じたプラシド・ドミンゴ。ジェームズ・レヴァイン指揮。
22☞La Forza del Destino運命の力(1862)
1996年度版ジェームズ・レヴァイン指揮。プラシド・ドミンゴ出演。
Jhon Dexter演出版(1984年上演)89setはEugene Berman。カルロ役レオ・ヌッティ。ジェームズ・レヴァイン指揮。Jhon Dexterはベルディの『トゥーランドット』も演出しています。
23☞Don Carloドン・カルロ(1867)
John Dexter演出版(1980年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。クラシカルな演出。Nicholas Hytner演出版(2010年上演)ヤニック・ネゼ=セガン90指揮。演出家はこのプロダクションでメトロポリタン歌劇場デビュー。91Roberto Alagna出演。
24☞Falstaffファルスタッフ(1893)
Franco Zeffirelli演出版(1992年上演)ヴェルディ80歳の時の作品をクラシックに演出。ジェームズ・レヴァイン指揮。アリス・フォード役ミレッラ・フレーニ、ページ夫人役スーザン・グラハム。Robert Carsen演出版(2013年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。クイックリー夫人役ステファニー・ブライス(『シンデレラ』『オルフェオとエウデリーチェ』『仮面舞踏会』など)、ナンネッタ役リセッテ・オロペサ(『マノン』など)
25☞Nabuccoナブッコ(1842)
Elijah Moshinsky演出版(2001年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮
Elijah Moshinsky演出版(2017年上演)9293,94ジェームス・レヴァイン指揮。プラシド・ドミンゴ出演。レヴァインは第3幕2場「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」の曲の大喝采に対し、場の途中であるにもかかわらずアンコールに応えています。
ヒロインやライバルが二重あごで太っちょだよ、オペラ歌手だから仕方ないかな。でも、それを衣装でなんとかできないのかな。だから美人のオペラ歌手は評判になるんだね、マリア・カラスとか。
5/7配信の『L’Amour de Loin 遥かなる愛』Susanna Phillipsや『マーニー』のSasha Cookeは美人だった。
ただ、遠景になるとあまりわからない。劇場のライブの場合は、顔やスタイルの良さより、大きな劇場のセットの中で体が大きい方が映えるのかも?大きなオペラ・ハウスや野外劇場ライブ向きの歌手と、アップのあるフィルム向きの歌手は別なのかもしれない。
26☞Luisa Miller ルイーザ・ミラー(1849)
Nathaniel Merrill演出版(1979年上演)95タイトルロールはレナータ・スコット、若かりしプラシド・ドミンゴがロドルフォを演じています。ジェームズ・レヴァイン指揮。
エライジャ・モシンスキー演出版(2018年上演)1979年のロドルフォ役を演じたプラシド・ドミンゴがルイーザの父を演じています。96,97
27☞Rigolettoリゴレット(1851)
John Dexter演出版(1977年上演)プラシド・ドミンゴ出演、ジェームズ・レヴァイン指揮。John Dexter演出版(1981年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。マントヴァ公爵役ルチアーノ・パバロッティ。Michael Mayer演出版(2013年上演)98
ブロードウエイ・ミュージカルでトニー賞を受賞している演出家だけあってエンターテインな演出です。舞台を公爵の広間からカジノに移し、公爵は人気歌手、浮気相手の人妻はマリリン・モンローを彷彿とさせる金髪のセクシー美女、娘の名誉に抗議する伯爵はアラブ人の富豪など。歌手の付き人のリゴレットはアーガイル・チェックのセーターを着ているところで、道化師をイメージさせています。
道化師の歴史は古くエジプト時代にさかのぼれますが、絶対王政時代には王専属の宮廷道化師が存在しました。18世紀にはイギリスでパントマイム芸が確立しました。役者のジョセフ・グリマルディをやとって専属劇場で上演させたチャールズ・ドビン99が、 “garishly colourful … patterned with large diamonds and circles, and fringed with tassels and ruffs”(ギラギラとカラフルで・・大きいひし形や円の模様、ひだやタッセルのついた裾飾り)を道化の衣装として紹介し、これがヒットし広まったそうです100。
28☞Un Ballo in Maschera仮面舞踏会(1859)
Elijah Moshinsky演出版(1980年上演)リッカルド役はルチアーノ・パバロッティ。舞台は植民地ボストン。
Piero Faggioniの演出版(1991年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。リッカルド役はルチアーノ・パバロッティ。オスカル役は黒人系のHarolyn Blackwell。レオ・ヌッチ出演。血にまみれた力やヴェルディのエレガンス、愛と政治をよくとらえた雰囲気の演出。森を模した王宮での仮面舞踏会のシーンは圧巻です。ディビッド・アルデン演出版(2012年上演)101ファビオ・ルイージ指揮。オスカル役はアジア系のキャスリーン・キム102。妻を疑うレナート役はディミトリー・ホロストフスキー。
ディビッド・アルデンの双子の兄弟クリストファー・アルデンもオペラの演出家。ディビッドは前衛的な演出で知られ、このオペラも、衣装やシンプルな舞台装置で20世紀初頭のエレガントな雰囲気を醸し出しています。ジプシー風や黒人呪術師風に描かれがちな占い師もエレガントな装いで、オペラ全体の洗練されたデザインを阻害しません。
29☞Macbethマクベス(1865)
Adrian Noble演出版(2008年上演)時と場所を超えたテーマに焦点をあてています。ジェームズ・レヴァイン指揮。
Adrian Noble演出版(2014年上演)ファビオ・ルイージ指揮。アンナ・ネトブレコ出演。映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペ出演。パワフルな演出。103
30☞Aida アイーダ(1871)
John Dexter演出版(1985年上演)104ジェームズ・レヴァイン指揮。↓
Sonja Frisell演出版(1989年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。ラメダス役はプラシド・ドミンゴ。→
Sonja Frisell-Gianni Quaranta演出版(2009年上演)アムネリス役Dolora Zajick(『イル・トロバトーレ』、アズチェーナ役など)。←
Sonja Frisell演出版(2012年上演)ファビオ・ルイージ指揮。Roberto Alagna出演。↓
Sonja Frisell演出版(2018年上演)記念的な演出。アンナ・ネトレブコ出演。↓
31☞Otelloオテロ(1887)
1979年上演版 ジェームス・レヴァイン指揮。プラシド・ドミンゴ出演。
Elijah Moshinsky演出版(1995年上演) ジェームス・レヴァイン指揮。プラシド・ドミンゴ、ルネ・フレミング出演。105
Elijah Moshinsky演出版(2012年年上演)ルネ・フレミング出演。
Bartlet Sher演出版(2015年上演)106トニー賞受賞歴のある演出家による大胆な演出は、シェイクスピアの悲劇をダイナミックな舞台にしたヴェルディの心理的トラウマに踏み込みます。
➤Bartlet Sherは既に『セビリアの理髪師』などで、METの観客の観客にはおなじみであり、自身のキャリアとしてもヴェルディの作品に取り組む時期に来たと信じていました。
➤「ちょっとした歌手みたいに自分の色々なレパートリーで自分のやり方の仕事ができる」機会に恵まれたのはラッキーだったとSherは述懐します。これに加え、20を超える“ザ・バード”(=The+吟遊詩人→シェイクスピアのこと)の舞台演出のキャリアによって蓄積された洞察は、「シェイクスピアとオペラの交差点」がなぜ特別に刺激的なのかを探索する手がかりともなるでしょう。
➤ヴェルディの他の作品の成功と同様、ヴェルディの最期の作品はオペラ史の中で最も感動的なものといえます。1871年の『アイーダ』に引き続き1874年「レクイエム」を作曲した時ヴェルディは61歳になっており引退を考えていました。ところが、オペラの世界はワーグナーのようなオーケストラを際立たせる作風が流行していて、突如ベルディは自分が引退前の、“時代遅れ”、“ワーグナーのオーケストラのまがい物”と思われていることに気づいてしまいました。それなら、否応なしにベルディの独特なイマジネーション(シェイクスピアに基づく台本に、作曲家の潰えぬ情熱を込めたオペラ)を楽譜におとす挑戦をせざるを得ないでしょう。
➤台本作家Boitoの働きかけはヴェルディのキャリアの再生に寄与しました。「Boitoがやってきて‘何かシェイクスピアをやってみましょうよ’と言った時、Boitoがヴェルディを人生に引き戻す何かがあったのでしょう」Sherは指摘します。最初のパートで古いインスピレーションをもう一度なぞる方法をとっただけでなく「最後の2幕でこれまでに到達したものを超えた高みに自分自身をも押し上げたのです」
➤Sherが言うように、オペラのねらいは以下のような進行です。「壮大で情緒的なコーラスによるオープニングではじまり、とても繊細な最期の寝室のシーンで終わります。私はとてもスケールの大きい全体的なオープニングが最期に向かって狭まっていく構成に興味を持ちました。最初は伝統的で力強いヴェルディが聞け、最期には作曲家として今まで決してやらなかったところに自分自身を押し上げました。そこで、それはそれは痛ましい、その中になんとも直面できないような表現が含まれた悲劇を見ることができるのです。」
➤劇中のビジュアル表現のためにSherはEs Devlin (sets), Catherine Zuber (costumes), Donald Holder (lighting), and Luke Halls (projections)を含む特筆すべきデザイン・チームとコラボレーションしました。「Boitoがイプセンに影響されたように、我々も影響を受けました」演出家は、モラルの衝突をドラマ化したノルウェーの劇作家の言葉を例に出します。「新しい方法に反対する古いクリスチャンのやり方は科学的に考えることだ」同時に、ムーア人としてのオテロの姿(欧州のクリスチャンの話の設定からすればアウトサイダーと言えます)は、人種や宗教やの問題をはらんでいます。悪いこととは言い切れないのですが、シェイクスピアの演劇では誇張されています。が、Boitoの台本ではトーンダウンしています。Sherの新演出では、伝統的な配役と違って、顔の色の問題を提起しないよう白人のテナーが歌っています。
➤Sherは、クラッシック・オペラからカニエ・ウェストのワールド・ツアーまでデザインするDevlinに、壮大なオープニングから、クライマッスクスの殺人が行われる小さな寝室まで使う「精神的な世界を表し、内側に入ったり出たりできることによって違った視点の闘いを表現するガラスの壁の構造物」を依頼しました。「音楽に共鳴するような空間がとても面白い」とSherはいいます。
➤様子が変化するガラスの宮殿は、ヴェルディの嫉妬にさいなまれる音楽表現を更に深めます。これは登場人物の認識(または認識しているとの思い込み)によって繰り広げられる悲劇です。例えばイアーゴが、デズモーナの裏切りの証拠を「見た」とオテロに思いこませるように。全体的に、イプセンや「もっと複雑な心理的リアリティが体験できる建築家レム・コールハースのガラス建築など」の影響の賜物と演出家はいいます。
➤もうひとつ参考にした点はヴェルディ自身も巻き込まれた統一運動(イタリア統一の軍事闘争)です。Zuberによる暗い冬の衣装のシーンなどで参考にされています。「19世紀のいいところは、今の我々のように、道徳的に色々な考え方があることが許容されていなかったところです」Sherがつけ加えます「でも実際には、天国と地獄、神の考え方と罠や裏切りの考え方が存在しました。何が許される限界で誰が他人か考えねばならないオテロのような立場の人物にとって、これは妄想と信頼の両方ををもたらしました。デズモーナの愛は彼を十分受け入れているのに、彼は決して信じません。だからデズモーナの本当の姿と彼が信じていることを毒する他の人々に影響されてしまうのです。彼は自分がアウトサイダーなので、自分自身やデズモーナを素直に信頼できないのです。」
ワーグナーのオペラ
32☞Der Fliegende Holländerさまよえるオランダ人(1843)
François Girard演出版(2020年カメラリハーサル)COVID-19 pandemicにより上演中止になりましたが、幸いなことにHD放映用にカメラリハーサルが録画されていました。 藤村実穂子107出演。108
33☞Tannhäuserタンホイザー(1845)
オットー・シェンク演出版(1982年上演)クラシックな演出。ジェームズ・レヴァイン指揮。
オットー・シェンク演出版(2015年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。長めのイントロとそれに続くコーラス部分はバレエが上演されます。
34☞Lohengrinローエングリン(1850)
アウグスト・エファーディング演出版(1986年上演)109,110ジェームス・レヴァイン指揮。
35☞Tristan und Isoldeトリスタンとイゾルデ(1865)
Dieter Dorn演出版(1999年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。designeはJürgen Rose。よくありがちなビジュアルの建付けをとりはらった舞台は、ワーグナーの世界観の核となる焦がれる情熱についての真実をよくとらえています。Dieter Dorn演出版(2008年上演)イゾルデ役Deborah Voigt。ジェームズ・レヴァイン指揮。極端にシンプルな舞台ですが、映像版は舞台上の登場人物全体を俯瞰できると同時に、別カメラにによる個々の人物の表情などが映し出される画面割り付けになっています。
Mariusz Treliński演出版(2016年上演)映像も駆使して視線をわしづかみにする現代風の演出。マーク王役は映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペ。
36☞Die Meistersinger von Nürnbergニュルンベルクのマイスタージンガー(1868)
Otto Schenk演出/Günther Schneider-Siemssenセット・デザイン版(2001年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペ出演。
オットーシェンク演出版(2014年上演)クラシックな演出。ジェームズ・レヴァイン指揮。111
37☞Das Rheingoldラインの黄金(1869)
オットー・シェンク演出版(1990年上演)光輝くヴァルハラに虹の橋がかかる魔法のような演出。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を思い起こさせるような神々や妖精たちの姿。ジェームズ・レヴァイン指揮。Robert Lepage演出版(2010年年上演)ワーグナーの伝統的な視点を21世紀のステージアートの技術で表現。ジェームズ・レヴァイン指揮。112ステファニー・ブライス出演。
38☞Die Walküreワルキューレ(1870)
39☞Siegfriedジークフリート(1876)
Otto Schenk/Günther Schneider-Siemssen演出版(1990年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。Robert Lepage演出版(2011年上演)ワーグナーの視点を、伝統的な筋書きと舞台美術の技術を駆使して21世紀風に表現。ブリュンヒルデ役Deborah Voigt。ファビオ・ルイージ指揮。113
40☞Götterdämmerung神々の黄昏(1876)
Otto Schenk/Günther Schneider-Siemssen演出版(1990年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。Robert Lepage演出版(2012年上演)伝統的なストーリーと舞台美術の技術の混合により、ワーグナーの視点を21世紀に持ち込みました。Deborah Voigt出演。ブリュンヒルデ役Deborah Voigt。ファビオ・ルイージ指揮。114同演出家のワルキューレにも登場したウッドデッキが再登場します。
41☞Parsifalパルジファル(1880)
オットー・シェンク演出版(1992年上演)115。ジェームズ・レヴァイン指揮。François Girard演出版(2013年上演)老騎士グルネマンツ役は映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペ。
喝采を浴びた新演出。騎士は白いワイシャツと黒っぽいビジネスパンツを衣装とし、会議室の椅子に座ってかたまっています。オーナー会社の社長親子がイメージされ、現代の観衆にリアリティを与えようとする演出のようです。
ビゼーのオペラ
42☞Les Pêcheurs de Perles真珠とり(1863)
Penny Woolcock演出版(2016年)賞賛を浴びた英国人演出家。1月16日の映像ですが初日は大みそかに新演出として登場。116Diana Damrau出演。ズルガ役はMariusz Kwiecien。元の舞台は未開時代のセイロン島ですが、この演出では近現代インド風の衣装と背景。序曲はプロのダイバーが参画した素潜りのアクロバットでスタートします。
主人公のカップルは互いのために死を覚悟しますが、友人ズルガは、愛する人の恋が成就するよう自分を犠牲にします。ビゼーが新人の頃の作品で、ベルリオーズに高く評価されました。
ナディール(テノール)恋愛を禁止されている尼僧レイラを愛する真珠とり。レイラとの密会が発覚し死刑を宣告されるが、村の火事騒ぎに紛れ、レイラと共に逃亡。
レイラ(ソプラノ)幼馴染のナディールを愛する安全祈願の尼僧。かつて逃亡者(実はズルガ)を助けた礼にもらった首飾りを母への形見にズルガに託す。村の火事の騒ぎに紛れナディールと逃亡。
ズルガ(バリトン)真珠とりの頭領。ナディールの旧友でレイラを巡るライバル。ナディールとレイラに死刑を宣告するが、レイラに託された形見の首飾りから彼女がかつての恩人だったことを知り、村に火を放ち二人を逃がして自分は責任をとるため残る。
ヌーラバット(バス)バラモン教の高僧。
真珠採り/ポール・モーリア イージー・リスニング
ALFRED HAUSE ⑦ Perlenfischer tango 真珠採りのタンゴ~アルフレッド・ハウゼ
真珠とり / リカルド・サントス楽団 タンゴ
寺井尚子 – 真珠採り バイオリン
43☞Carmenカルメン(1875)
ジャン・フランコ・ゼッフェレッリ演出版(1977年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。プラシド・ドミンゴ出演。
Richard Eyre演出版(2010年上演)2009年の大晦日に初お目見えした街で噂の新演出。美しいエリーナ・ガランチャ出演。Roberto Alagna出演。
2幕のバレエはバスキアの店でのフラメンコ。バスキアの店では闘牛士は女性にモテるだけでなく、警護やマスコミに取り巻かれ、地元の子供たちにサービスしたり、現代のサッカー選手のようです。ラッパの音で営舎に帰ろうとするホセをなじるカルメンの歌では、ラッパを揶揄した楽しい歌い方。
Richard Eyre演出版(2014年上演)1930年代のスペインを舞台にした人気演出。Richard Eyre演出版(2019年上演)バスキアの店でのダンサーによるフラメンコや、エスカミーリョの登場場面で子供たちが闘牛士の真似をするシーンは、音楽と、よくシンクロしています。3幕への間奏曲はペアのバレエ。Roberto Alagna出演。
If I love you. Watch out!
プッチーニのオペラ
44☞La Bohèmeラ・ボエーム(1896)
Fabrizio Melano演出版(1977年上演)119&Pier Luigi Pizzi120デザイン。ロドルフォ役チアーノ・パバロッティ。ミミ役レナータ・スコット。ジェームズ・レヴァイン指揮。
ジャン・フランコ・ゼッフェレッリ演出版(1982年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮 ロドルフォ役ホセ・カレーラス。ミミ役はゼッフェレッリの映画『椿姫』でタイトルロールを演じたテレサ・ストラータス121。
ゼッフェレッリ122の演出は、オーソドックスながら音楽を効果的にするように豪華で深く、1896年以来METで最も500回以上、上演されています。時代を超えた愛や友情、嫉妬、喪失の物語、パリのボヘミアン達のカフェなどが、観客を魅惑し涙させます。ボヘミアンが題材なだけにあまり華やかな場面は多くありませんが、第2幕の市やパレードを描くパリのシーンは楽しい演出です。ジャン・フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2008年上演)ジャン・フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2014年上演)オペラが始まる前に総監督が舞台に登場し観客にアナウンスします。「昨晩Kristine Opolaisは蝶々夫人でMETデビューしました。長いMETの歴史の中で、前日バタフライを歌った歌手が翌日ミミを歌ったことはありません。皆さん、お楽しみに」Kristine Opolaisは細身で美人の女優。ムゼッタ役は陽気で愛らしいSusanna Phillips(『遥かなる愛』『コジ・ファン・トゥッテ』など)。祭りやパレードの場面ではメインの登場人物だけでなく大勢登場するモブ(群衆)個々のふるまいを見るのも楽しい演出。ジャン・フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2018年上演)
45☞Toscaトスカ(1900)
Luc Bondy演出版(2009年上演)セットRichard Peduzzi、衣装Milena Canonero(アカデミー賞受賞者)
Luck Bondy演出版(2013年上演)Roberto Alagna出演。
Sir David McVicar演出版(2018年上演)ナポレオン時代のローマを舞台にした大胆な演出は観客にスリルを与えました。スカルピオはトスカの胸をわしづかみにしたり、股に手を突っ込もうとしたり、かなり嫌らしい振る舞いをする人物に演出されています。
46☞Madama Butterfly蝶々夫人(1904)
Giancarlo Del Monaco(1994年上演)世紀の変わり目の日本の風景を再現した演出。
Anthony Minghella演出版(2009年上演)超絶美しい(stunning)演出。Anthony Minghella演出版(2016年上演)Roberto Alagna出演。
黒子がひもを引き幕があけると、無音状態から序曲が始まる舞台で一人の東洋人(日本人か)の舞いから始まります。舞台効果から赤い帯(サッシュ)がアレンジされた“キモノ風”の衣装ですが、白足袋や和扇子など、日本の小道具も取り入れた“日本舞踊風”の舞です。舞台の上部は観客向けて斜めに鏡張りになっており、舞な効果的な黒子や帯の扱いを、舞台上部から見おろした様子が観客にも見えるようになっています。
舞台奥は手前に向けて傾斜したスロープになっていて、その向こうは舞台からは見えませんが階段になっているようです。階段を上ってきた人物の頭の先から順番に見え始め、更にスロープを下って舞台中央に降りてくる登場の仕方は、丘を登って蝶々さんの家にやってくる様子をイメージさせます。124Anthony Minghella演出版(2019年上演)Hui He主演。
➤障子が移動する舞台の区切りとして効果的に活用されています。障子を動かすのは黒子。日本の伝統的な劇で利用される、舞台上にいても人物とは認識されないスタッフとしての黒子をうまく活用しています。2006年プレミア(初演)の演出ですが、それより以前1986年に劇団四季の浅利慶太がミラノスカラ座で障子や黒子を活用した演出を登場させており、参考にしているかもしれません。
➤タイトルロールは中国人で、西洋人よりは日本人に誓いイメージですが、オペラの西洋風の化粧やサッシュベルト・ドレスのような着物の着方は日本文化に慣れた日本人からは少し違和感があります。また、普通の着物姿の男性が冠をつけていたり(通常、朝廷から与えられる正装する場合に、武家の着物ではなく公家の衣装である束帯を着て冠をつけるで、衣冠束帯と呼ばれます)、男性の着物の帯が女性用のような太幅、女性用のような長い中振袖であったり、舞子のように帯を後ろで垂らしています。西洋人の衣装がリアルなだけに、デフォルメされた日本人の衣装やふるまいは日本人にとって違和感がありますが、外国人から見た日本のイメージがわかります。
➤白い着物に白い提灯は、日本人の目からは墓場や死者の印象も受けますが、そのような前提知識なく見た場合は、舞い散る雪か花びらと共に蝶を連想させ非常に幻想的な舞台となっています。
➤ピンカートンと蝶々さんの子供は人形が登場し、おちゃめな動きをしますが、一体の人形を3人の黒子が動かし文楽の要素が取り入れられています。
➤軍船入港後の長い夜のシーンは男性バレエダンサー(ピンカートン)と文楽人形(蝶々さん)のダンスで表現される斬新な演出。
47☞La Fanciulla del West西部の娘(1910)
Giancarlo Del Monaco演出版(1992年上演)プラシド・ドミンゴ出演。
Giancarlo Del Monaco演出版(2011年上演)ミニーやジョンソンは本物の馬に乗って登場します。ミニー役はDeborah Voigt。Giancarlo del Monaco演出版(2018年上演)
48☞La Rondineつばめ(1917)
Nicholas Joël演出版(2009年上演)セット・デザイナー、エツィオ・フリジェリオのエレガントで洗練されたアールデコの舞台は、2008年に初演されたニコラス・ジョエルの作品に見事なタッチを加えます。2幕のバレエは、ブリエの店で酔っ払った女たちと男たちの痴話げんかを表現した楽しいパ・ド・ドゥです。
マグダ役Angela Gheorghiu, リゼット役Lisette Oropesa, Roberto Alagna出演125
49☞Turandotトゥーランドット(1926)
フランコ・ゼッフェレッリ演出版(1987年上演)126Plácido Domingo出演、James Levine指揮。獅子舞や、京劇の仮面や動き、衣装を取り入れた超豪華な演出。壮大で豪華な演出はゼッフェレッリの得意とするところで『トゥーランドット』のイメージが固まったと言えます。METでも1987年以来ロングランの演出です。これを超えるスケールは、実際の紫禁城で国民軍を動員して行った中国人チャン・イーモウの演出くらいです。
フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2009年上演)127Andria Nelsons指揮。フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2016年上演)大勢の出演者一人ひとりの衣装や動きを追うだけでも楽しい演出です。
フランコ・ゼッフェレッリ演出版(2019年上演))128Yannick Nézet-Séguin指揮。
シュトラウスのオペラ
50☞Salomeサロメ(1905)
Battlet Sher演出版(2008年上演)129シャンパンやイブニングドレスにガラス製の家具など現代西洋風のパーティ会場に現れる、サロメと両親、ターバンに軍服風の衣装の衛兵隊長ナラポートなど、中東イスラエルを思わせる舞台。サロメがヘロデ王を魅了するためにベールを脱いでいく「7つのベールの踊り」は別ダンサーに踊られることもあるものの、タイトルロールのKarita Mattila自身が踊り、かなりきわどい演出となっています。
オスカー・ワイルド原作の1幕の作品。聖書の記述を元に、サロメをフ
ァム・ファタールとして描いています。130
サロメ (ソプラノ) ヨナカーンに興味を持つが、拒否されると王に彼の首をねだるヘロディアスの連れ子。ヘロデ王に命じられた兵士たちの盾に押しつぶされて死ぬ。
ヘロデ王 (テノール) サロメに魅了され、気が進まないながらヨナカーンを処刑させるユダヤの領主。処刑したヨナカーンの首に口づけする異常性を恐れ、兵士たちにサロメを殺すよう命じる。
ヘロディアス (メゾソプラノ) 131夫と離婚し、その異母兄ヘロデ王と再婚したヘロデの妻でサロメの母
ヨカナーン (バリトン) 夫の異母兄と結婚したヘロディアスを非難する預言者。
ナラボート (テノール) サロメに恋しているが相手にされず自殺する衛兵隊長。
小姓 (アルト)ナラボートにサロメへの恋心について警告する。
研究によると、史実では、サロメは長生きし、叔父ヘロデ・フィリッポス132と結婚した後、ハルキスのアリストブロスと再婚し3人の息子を設けているそうです。
サロメの性格については、サロメ自身の魔性や異常性を強調する解釈の他、母親の命令や母親を守るためとする解釈の作品もあります。
51☞Elektraエレクトラ(1909)
1994年上演版ジェームズ・レヴァイン指揮。
Patrice Chéreau演出版(2016年上演)133音楽に集中させるためか、暗い舞台に、普段着風の衣装、ヒロインや侍女は裸足など、あまり華やかさはない舞台。メロディとテンポが複雑な現代クラシック音楽と合うかもしれませんが、エンターテイメント性には欠けるかもしれません。玄人向き。
52☞Der Rosenkavalierばらの騎士(1911)
Nathaniel Merrill演出版(1982年上演)Kiri Te Kanawa, Luciano Pavarotti出演。James Levine指揮。
Nathaniel Merrill演出版(2010年上演)Renée Fleming, Christine Schäfer, Susan Graham出演。
Robert Carsen演出版(2017年上演)ルネ・フレミング、エリナ・ガランチャ出演。無鉄砲な(madcap)演出。Nathaniel Merrill演出版(2010年上演)ルネ・フレミング、スーザン・グラハム出演。
元帥夫人はターバンを巻いたインド人風の小姓を連れています。19世紀はじめに黒人の小姓が流行したそうです。134
- 元帥夫人マリー・テレーズ(リリックソプラノ)。オーストリア陸軍元帥夫人(ドイツ語マルシャリン)。シュトラウスの説明では年齢は32歳未満。夫とは年齢が離れていて従兄弟で青年貴族のオクタヴィアンと愛人関係。いずれは若い愛人も自分を捨てて去っていくのだという諦念をもち、3幕で自ら身を引く。侯爵夫人としての気品をそなえる歌唱および演技力が求められ、名をなしたベテランが演じることが多い(ゾフィーやオクタヴィアンから転じた例も少なくない)そうです。このオペラの実質的な主人公であるにもかかわらず、2幕には登場しません。
オクタヴィアン(ソプラノまたはメゾソプラノ)元帥夫人の愛人で17歳の青年貴族。愛称カンカン。オックスの求婚の使者”ばらの騎士”として会ったゾフィーとたちまち恋に落ち、最後には彼女と結ばれる。女装して元帥夫人の小間使いマリアンデルを演じる場面もあり『フィガロの結婚』のケルビーノと共通のレパートリーとする歌手も少なくありません。
レルヒェナウ男爵オックス(バス)元帥夫人の従兄。野卑で傲慢で自己中心的で好色漢、ケチ、酒飲み。剣は苦手な臆病者。しかしその強烈なキャラクターから、元帥夫人とともに、このオペラの主役と言えます(当初の題は『オックス』)。喜劇的な性格俳優としての演技力と歌唱力も要求され、経験豊かなベテランのバス歌手によって歌われる事が多い。そのせいで、オックスを熟年か初老の男と誤解されがちであるが、実はR.シュトラウスによると「オックスは35歳位の田舎者で、女たらしではあるがいつも貴族然としていなければならない(たとえ田舎貴族であろうと)」とあるそうです。
ゾフィー(リリックソプラノ)。ばらの騎士として登場したオクタヴィアンに助けを求め恋するファニナルの一人娘。修道院を出たばかりで、父が決めた政略結婚によるオックス男爵の婚約者。
フォン・ファニナル(バリトン)。娘とレルヒェナウ家のオックス男爵との婚約を計画する新興貴族。135
53☞Ariadne auf Naxosナクソス島のアリアドネ(1912)
愛を夢見るオペラの作曲家(ソプラノ)音楽教師(バリトン)、ダンス教師(テナー)、執事長
(プロローグと第一幕両方に出演)
プリマドンナ、アリアドネ(ソプラノ)ミュージック・コメディを見くだす、実力派のオペラ歌手
踊り子、ツェルビネッタ(ソプラノ)コメディの方が人気があると思っている、臨機応変な踊子
テノール歌手、バッカス(テノール)
踊子の一座、道化たち(バリトン、テナー、バス)
(第一幕のみに出演)
ニンフたち(ハイ・ソプラノ、コントラルト、ソプラノ)
54☞Arabella アラベラ(1933)
Otto Schenk演出版(1994年上演)Kiri Te Kanawa, Natalie Dessay, David Kuebler出演。没落貴族の姉娘アラベラが家のために大勢の求婚者の中から金持ちを選んで結婚することを決意しているストーリー。
55☞Capriccioカプリッチョ(1940)シュトラウス
ジョン・コックス演出版(2011年上演)1920年代をイメージしたアール・デコ調のエレガントな美術・衣装。ルネ・フレミング出演。
リヒャルト・シュトラウス(ヨハン・シュトラウス一族とは無関係)の最期のオペラで、サリエリのオペラ・ブッファ『まずは音楽、それから言葉』の翻案で、オペラによる音楽論議。ドイツ語による2時間28分の1幕劇。元々の設定は、1775年頃、パリ郊外の城、ロココ風のサロン。題名はイタリア語で“気まぐれ”が語源で“奇想曲”“狂騒曲”の意。147
コンテス:マドレーヌ(ソプラノ)2人から求愛されるコンテス(未亡人も含む伯爵夫人、または女伯爵、伯爵令嬢)
伯爵(バリトン)マドレーヌの兄。女優クレロンに恋する言葉重視派。
音楽家フラマン(テノール)マドレーヌに求愛。
詩人オリヴィエ(バリトン)マドレーヌに求愛。
劇場支配人ラ・ロッシュ(バス)オペラ論争に加わる
女優クレロン(アルト)言葉(と成熟)の象徴
男女のバレリーナ:音楽(と若さ)の象徴
(主人たちと客が去ったサロンで片づけをする召使たちが口々に歌う)
おもしろいね!最後はみんな一斉に騒いでたよね。
あのイタリア女、ケーキ全部食べやがったぜ。
なんであの支配人はあんな風なんだ?しっら~ん。
死ぬ前に劇場を改装したいんじゃないか?
次のオペラに召使を出すかな?
世の中、無茶苦茶だぜ、今やみんなが役者。
でもだませれないぜ、僕らはみんな舞台裏から、全く違った目で見てる。
伯爵は新しい情事を期待しているし、妹は恋愛中だけど、どっちにかわからない。
ひょっとしたら両方。
でもって彼女に決断させるためにオペラを書くってわけさ。
オペラがどうやって?
やつらは言葉で歌うから、わけがわからなくなるのさ。
プロットをわかろうと一生懸命だから、いいんだよ。
もったいぶった風な知ったかぶりを言うのはやめろ。
俺は綱渡りがいいなあ、綱渡りだって王室御用達だぜ。ヴェルサイユで観たよ。
僕も観た。スリル満点!
それよりあの悲劇!娘を刺したコリオレイナス!
僕は人形劇の方が好きだな。
ピエロの喜劇がもっと面白いよ。
我らお嬢様(奥様)の誕生日に何か出し物をするか。
俺はイタリア人の芸人を知ってるけど、彼が手伝ってくれるかも。
(執事)やめなさい、夕食を準備をしなさい、そのあと解散だ。
やったあ!お客さんのいない夜だ。
調理場に行って何があるか見てこよう。
夕食の給仕はしなくちゃならないが、その後はフリー!
すごい!なんたる喜び!お客のない夜!
伯爵は情事に夢中だし、妹は恋愛中。(でも誰に?)
(召使も去った暗い夜のサロン)
支配人(執事)はどこですか?支配人はどこ?
どうやって入ったのだ、お前は誰だ?
知らないと思いますが、私は下にいますから。
どういうことだ?
私は下に住んでいますから、目に見えない。
でも今は見えるではないか。
私は見えない魔法の国の支配者なのですよ。
そこでお前は何をしているのだ。
私は寝ていたらあの人たちは私のことを忘れてしまった。
(前段で女優が、プロンプターが寝てばっかりなので明日の舞台の台詞を練習しなくちゃと、伯爵の誘いを断る伏線があります)
あなたがどなたかお伺いしてもよろしいかな?
私はプロンプターのムシュー・トープです。
なるほど、わかりました。我々の現実世界へようこそ。
私はちょっと出てみただけなんです、ちょっとね。
あなたが一番、普段みないけれど、たぶん重要な人ですね。
そうなんです!私が場所につかないと舞台ははじまらない。
まあ、いわばあなたが舞台を動かしていると。
詩の深い考察をささやき、全てに命を吹き込んでいるんです。影法師が私の現実です。
でも自分のささやきで寝てしまうんです。
で、もし寝てしまったら、それがセンセーションを引き起こすんです。
俳優は死んだように止まり、観客は起きる。
うまい!
寝てしまうことだけが私を忘却から救うのです。
今回は違いますね、皆あなたのことを忘れていましたよ。
ホント、私は残酷に扱われていますよ。
全ての支配者の運命ですな。
彼らは私を立ち往生させました。どうやってパリへ帰れと?
歩くには遠すぎますよ。私と一緒に食糧庫にいらっしゃい。
何かさっぱりするものを口にしてから、車で街へ送らせましょう。
ご親切に。
どうぞ、いらっしゃい。
この現実は全て夢なのか?それとも私は起きているのか?
☞チャイコフスキーのオペラ
56☞Eugene Oneginエフゲニー・オネーギン(1879)
Robert Carsen演出版(2007年上演)Valery Gergiev(ロシア出身)指揮。Dmitri Hvorostovsky(ロシア出身)、ルネ・フレミング共演。2人の俳優の豪華さでシンプルで素朴な舞台を補っています。両名とも、ちょっとしたしぐさや目を閉じた表情で、押さえた官能を表現できるベテランです。
一幕は民族風のファブリックとダンス、枯葉を敷き詰めた舞台で、恋をする前のタチアナの気持ちを反映した穏やかなロシアの田舎を演出しています。
二幕の田舎のパーティは参加者は着飾ってはいるものの、並べられた木製椅子の背のデザインがまちまちなことで、野暮ったさを演出しています。それに対して三幕の舞踏会では金色に彩色された豪華な布張りロココ朝の椅子が並べられている様子で、都会の洗練された様子を表現しています。
二幕から三幕は「オネーギンのポロネーズ」と呼ばれる曲で、サントペテルブルグの華やかな舞踏会シーンとなることが多いのですが、この演出では、Dmitri Hvorostovsky扮する決闘の終わったオネーギンが、舞台上で召使たちに着替えさせられる演出で二幕から三幕にすすみます。上半身裸になって盛装に着替える様子は観客向けのサービスショットの演出かもしれません。
Doborah Warner演出版(2013年上演)アンナ・ネトレプコ出演。田舎の旧家風の屋敷や、サントペテルブルグの舞踏会など豪華な演出。二幕の田舎の舞踏会は粗野っぽさを強調しています。Deborah Warner演出版(2017年上演)初々しさを表現するのが得意なアンナ・ネトレプコ出演。
Evghenii Oneghin Opening Act III Polonaise Bolshoi Theatre 2000 performance of Tchaikovsky’s “Evghenii Oneghin” in the Bolshoi Theatre
Thaikovsky: Eugene Onegin, “Polonaise”Orchestra of the Royal Opera House, Covent Garden Conducted by Sir Georg Solti Recorded by Decca International in 1988
Tchaikovsky, Eugene Onegin, Polonaise オルガン
➤決闘直前にナターリアの姉エカテリーナと結婚しており、妹恋しさや決闘を回避するための偽装結婚との説や、エカテリーナは既に妊娠していたという説もあります。
➤また、ダンテスは、養子縁組をした義父でオランダ大使のヘッケン男爵と男色関係にあり、プーシキン家とのスキャンダルはその隠れ蓑であったという説や、怪文書等はヘッケン男爵の嫉妬による画策という説もあります。
➤プーシキンを寝取られ男としてからかうような怪文書が複数の人物に届けられていたことや、浮気相手が当時の皇帝ニコライ1世であるとほのめかすような内容であったこと等も決闘の原因と言われています。プーシキンの死後、愛人と噂されるくらいナターリアと皇帝は親くしました。進歩的な思想により度々発禁処分や左遷の憂き目にあい秘密警察に監視されていたにもかかわらず、皇帝自身がプーシキンの著作を添削したことや、皇室お目見え最低位の貴族“ヤンカー(ユンカー)”になれたのは皇帝に対する妻の影響力との噂に屈辱を感じていたことも遠因かもしれません。
➤当時法律では決闘は禁止されていましたが、プーシキンは最期に決闘の介添え人をした親友コンスタンティン・タンザスの恩赦と妻子の保護を皇帝に願い出ています。
➤タンデスは追放され、妻(プーシキンの義姉)と実家のフランスに帰った後、第二帝政期ナポレオン3世152フランス政府の元老院議員となりました153。妻エカテリーナは、フランスに落ち着いて数年後に跡継ぎとなる四人目の子供を出産した際の産褥熱で亡くなりました。結婚はこりごりしたのか、男色のせいなのか、様々な女性と交際できる独身を謳歌していたのか、妻以外は愛せなかったのかわかりませんが、その後、ダンテスは83歳で亡くなるまで結婚しませんでした。
皇帝に捜査を依頼された大佐の視点から、プーシキンの生前の関係者それぞれとの関係を元に、怪文書の犯人と決闘の真相を探る設定になっています。
➤オペラを製作しているころチャイキフスキーと交流のあったトルストイは、1877年に『アンナ・カレーニナ』単行本を出版しています。ロシアの社交界を舞台に、オネーギンの愛を拒否する人妻タチアナと、愛に覚れる人妻アンナ・カレーニナの物語は興味深い対比です。
02☞The Queen of Spadesスペードの女王(1890)
Elijah Mo演出版(1999年上演)Plácido Domingo, Dmitri Hvorostovsky出演。Valery Gergiev指揮。158アレクサンドル・プーシキンの小説『スペードの女王』が原作。
03☞Iolantaイオランタ(1892)
Mariusz Trelinski演出版(2015年上演)159あまり上演されない1幕のオペラをスリリングに演出。タイトル・ロールはアンナ・ネトレブコ。
黒ワンピースに白エプロンの侍女は看護婦然としており、イオランタはお姫様というより入院患者の体、王様はジャケットに長靴、スキーに来た若者たちと、近代の王族貴族風の演出。モノトーンでまとめられ、20世紀初頭スタイリッシュな色づかいの舞台ですが、黒一色の父王の位置づけに演出家の思い入れを感じさせる演出になっています。
原作はヘンリク・ヘルツ作のデンマークの演劇作品『ルネ王の娘』(Kong Renés Datter)。15世紀の南フランスを舞台としています。
ルネ(バス)娘を不幸な気持ちにさせたくなくて治療を拒否していたプロヴァンスの王 。イオランタの前で「治療に成功しなくばヴォ―モン伯を死刑に処す」と脅かし娘が治療に意欲を起こすよう仕向ます。
ロベルト(バリトン)好きな女性がいるので結婚に躊躇するイオランタの婚約者、ブルゴーニュ公爵
ヴォーデモン伯爵(テノール)イオランタと恋に落ちるロベルトの友人、ブルゴーニュの騎士
エブン=ハキア(バリトン)自分の盲目を認識し見たいという意欲があれば治療可能、と主張するムーア人医師
アルメリック(テノール)ルネ王の鎧持ち。皮のヘルメットとゴーグルをつけ、毛皮付ジャンパーによれよれのビジネスバッグを持った飛行機乗りの様相で登場
ベルトラン(バス)城の門番、マルタ(コントラルト)ベルトランの妻でイオランタの乳母
イオランタ(ソプラノ)ヴォーデモンと恋に落ち、彼を救おうと治療に意欲的になるルネ王の盲目の娘
☞マスネのオペラ
57☞Wertherウエルテル(1892)
04☞Thaïsタイス(1894)
Jhon Cox演出版(2008年上演)ルネ・フレミングが演じるグラマラスなタイトルロールのエレガントな衣装デザインはChristian Lacroix。文明の古さと対立する豪華なセットによる演出。1978年以来30年ぶりのMETでの上演です162,。
ルネ・フレミングは粋な美人だ。オペレッラの侯爵夫人や娼婦の役がよく合う。ルネ・フレミングのタイスは椿姫のヴィオレッタやマノンのような悲壮感のただようファム・ファタールではなく、どこか人生のなりゆきを楽しんでいる風がある。女優のキャラクターか作品の設定か。
他の演出家の作品を観ればわかるかな?
☞ブリテンのオペラ
58☞Peter Grimesピーター・グライムズ(1945)
PJohn Doyle演出版(2008年上演)ブロードウェイ・ミュージカル『スウィーニー・トッド:フリート・ストリートの悪魔の理髪師』でトニー賞受賞歴のあるスコットランド人の演出家です163。
ジョージ・クラッブの詩『町』(The Borough)の一節である「ピーター・グライムズ」164が原作です。1830年頃(ヴィクトリア女王の父ウィリアム4世165の治世頃)のイギリスの田舎の漁村を舞台とし、原作の悪漢を、無慈悲な運命や社会による犠牲者ともとれれるような人物像にしあげました166。
ブリテンは同性愛者だったのですが、元々ピーター・グライムズの徒弟たちに対する少年愛的要素が強いオペラでした。プライベートでもブリテンのパートナーであったテノール歌手ピーター・ピアーズ167と練り上げる中で、少年愛的な描写を減らしエレンを登場させることになりました。このオペラを「同性愛の抑圧についての寓意物語」168と解説する論評もありますが、ブリテン自身は「社会がより残忍になれば、人もまたより残忍になる」と述べています。
ピーター・グライムズ(テノール)最初の徒弟を死なせた疑いがかかる中、次の徒弟ジョンも足を踏み外して死に、村人たちから人殺しの嫌疑をかけられ、船を沈めざるを得なくなる独身の漁師。
エレン・オーフォード:ピーターに同情的だが徒弟を休ませないことに意見する女教師、未亡人。
ボルストロード(バリトン)ピーターに同情的だが船を沈めることを勧める引退した船長。
ジョン:グライムズの徒弟となる孤児。
おばさん(コントラルト)姪1・姪2(ソプラノ):酒場「イノシシ亭」の女将と看板娘たち。
05☞Billy Buddビリー・バッド(1951)
John Dexter演出版(1997年上演)英国の戦艦に徴用されたビリー・バッドが他の水兵の陰謀に巻き込まれて死刑になる様を描いています。169
☞フィリップ・グラスのオペラ
59☞Satyagraha(1980)
Phelim McDermott演出版(2011年上演)巨大な操り人形劇が切り広げられます。170演説をする人物の人影はネルー首相かもしれませんが、上演された当時のMETがあるアメリカ合衆国のオバマ大統領を思い起こさせる演出になっています。ネルー首相171はガンディーより20歳年下の政治家で、ケンブリッジを卒業後、弁護士となり20歳年上のガンディーとともにインド独立運動の指導者となり、独立後は初代首相となりました。
フィリップ・グラス172の、アインシュタインにはじまりアクナートンで終わる3部作のひとつで、マハトマ・ガンディー173と市民の非暴力による抵抗運動によって彼が達成した理想に触発されています。台本はヒンドゥー経聖典バガヴァッド・ギーター174から引用されており、サンスクリット語で歌われます。このオペラは確固とした筋書きはなく、歴史上の逸話や、公文書や、哲学的な思索、瞑想からの暗喩など、音楽や劇による宣言の積み重なっています。
”サティーヤグラハ”はガンディーの造語で、サンスクリット語のサティは「真理」という意味で愛や非暴力を意味し、アーグラハ主張を意味するそうです175。
インド独立運動に協力した海軍提督Edmond Slade176の娘、イギリス人女性ミラベンことMadeleine Sladeもサリーを着てガンディーらと行動を共にする西洋婦人として描かれています。
☞『MISHIMA,A Life In Four Chapters』177(1985年)三島由紀夫を題材にした映画。ポール・シュレイダー監督。フランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカス製作総指揮。緒形拳、坂東八十助、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行出演。
☞『クンドゥン』178(1997年)フィリップ・グラスが面会したこともあえうダライラマ14世の生涯を描く映画。マーティン・スコセッシ監督。
☞『あるスキャンダルについての覚え書き』179(2006年)オペラ演出家リチャード・アイ監督
アカデミー女優のジュディ・ディンチ(イブニング・スタンダード英国映画賞主演女優賞)とケイト・ブランシェット(ダラス・フォートワース映画批評家協会賞助演女優賞ほか)が共演。ビル・ナイが年の離れた夫役。夫がありながら生徒と関係を持つ女教師とそれを目撃した友達のいない高齢の同僚がつづる日記。米国でおきた実話事件を題材にしています。
06☞Akhnatenアクナーテン(1983)
Phelim McDermott演出版(2019年上演)ザッカリー・ジェームス180出演。熟練したジャグラーやアクロバットの一団を取り入れた、これまでに見たことない、チケットが売り切れになるほどの独創的な演出。指揮は数少ない女性指揮者Karen Kamensek。ナレーション以外の現代語がなく、ゆったりと流れるような動きは能のよう、現代用語ではない歌やや音楽にあわせた動きはパントマイム舞踊のようです。
近代風、古代風、西洋風、中東風がミックスされた衣装デザイン。左足が不自由だった181研究を踏まえ、ツタンカーメンは左足にギブスをしている衣装。ミイラの制作者は医師のような白衣を着ている他、エジプト研究や発掘が盛んになりブームとなったビクトリア朝時代風(アガサ・クリスティやカーナヴォン卿を思わせる人物も含む)、博物館や博物館や学術風、軍事政権の現代エジプト風の軍服を着た黒人など随所に近現代とのつながりを示唆される演出です。
前王の死亡に際しては、死者の心臓と羽根が秤にかけられる(羽根ほど軽ければ来世にいける)風習が表現され、ジャグラーの玉で魂の軽さを示しています。ジャグラーが持つスティックは時に弓矢を表し戦の武器としても表現されます。
古代エジプトのファラオ、アクナーテン(アメンホテップ4世)を題材に作曲家のフィリップ・グラス182183自身が台本制作にもかかわった作品。作者によれば、『Einstein on the Beach (about Albert Einstein)』『 Satyagraha (about Mahatma Gandhi)』に続き、時代を変えるような悟りに突き動かされた3人の人生(エプシュタインは科学、ガンジーは政治、アクナーテンは宗教)を描く三部作の集大成ともいえるものです。
『死者の書』からアクナーテン自身の詩の他、アクナーテンが統治したアマルナ時代といわれる17年間の文書から引用された文言は、英語やドイツ語などの現代語のナレーションの間に原語で歌われます。他にも、アッカド文書、ヘブライ語の聖書、アクナーテン作曲のアテン神をたたえる聖歌184などが引用されています。185
アクナーテン(カウンターテナー)父アメンホテップ3世の死後王位を継ぐが、アモン神寺院を破壊し、太陽神(アテン)神を唯一信仰する新都市を建立するファラオ、アメンホテップ4世。シリア支援など外交や統治をないがしろにして、クーデターにあい殺害される。
ネフェルティティ(コントラルト)アクナーテンの愛妻
ティ王妃(ソプラノ)アクナーテンの母
ホレムハブ(バリトン)将軍で将来のファラオ
アモン神の高位の神官(テナー)
アイ(バス)ネフェルティティの父にしてファラオの側近。アモン神官や家臣、民衆たちと共にアクナーテンと家族、新都市を攻撃する。
アクナーテンの娘たち(ソプラノまたはコントラルト)Beketaten、Meretaten、Maketaten、Ankhesenpaaten、Neferneferuatenクーデターで殺害される。
アメンホテップ3世(ナレーター)アクナートンの父ファラオ。第一幕は彼の死からはじまります。
ツカンカーメン父アクナーテンたちが粛正された後、ファラオとして即位。(トト・アンク・アメンは”アメンの化身”という意味。父王の生前はツタンカートン(トト・アンク・アトン“アトン神の化身”という名前でした。186
『アトンの娘』(全3巻)アクナーテンとネフェルティティの娘アンケセナーメンを主人公とした里中満智子の漫画。
『ツタンカーメン』(全4巻)希望コミックス 山岸 凉子 (著)ツタンカーメンの墓とミイラを発掘したハワード・カーターとエジプトの不思議な少年を描く漫画。
『エジプト 蘇るツタンカーメン』The search for Tutankahamun(全2エピソード)2005年BBC。遺跡画家から考古学者へと転身したハワード・カーターの発掘を巡るドラマ。第一次大戦中は諜報機関で翻訳をして過ごしました。頑固な性格が発掘につながったと言えますが、スポンサーや研究者、マスコミ、政治家などとの確執も生みました。
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60☞ジョン・アダムズのオペラ
☞Nixon in China中国のニクソン(1985)
ピーター・セラーズ演出版(2011年上演)演出家187は俳優のピーター・セラーズ188(『ピンクパンサー』のクルーゾー警部役)とは別人。作者のジョン・アダムズ自ら指揮。江青189をKathleen Kim(『仮面舞踏会』秘書オスカル役、『シンデレラ』フェアリー・ゴット・マザー役など)が演じています。
1972年のニクソン米国大統領の中国の毛沢東主席190電撃訪問を、Mark Morrisの振付で描きます191。
☞Doctor Atomic原爆博士(2005)
Penny Woolcock演出版(2008年上演)193。原子爆弾開発と投下の関係者の心の葛藤を描きます。英語上演。
ジョン・アダムズ194はフィリップ・グラスと同様、パターン化された音型を反復させるミニマル・ミュージック195を提唱する作曲家として知られています。
オペラでは、ニクソン大統領の中国訪問を題材にした『中国のニクソン』でグラミー賞現代音楽最優秀作品に選ばれています(演出はピーター・セラーズ)
この『Doctor Atomic(原爆博士)』が交響曲にも改作されている他、2002年にはアメリカ同時多発テロ事件の犠牲者の追悼として『On the Transmigration of Souls 』が作曲されました。合唱とオーケストラ、および犠牲者の名前を読み上げる声のサンプリング音を使う作品でピューリッツァー賞音楽部門を獲得し、ロリン・マゼール指揮による初録音も2005年度グラミー賞の3部門に入賞しています。
台本を担当したピーター・セラーズ196は演出家でもあり、1990年代、モーツァルトのダ・ポンテ三部作を相次いで演出しまた。「コシ・ファン・トゥッテ」はカフェ、「フィガロの結婚」は、ニューヨークの高級マンション、「ドン・ジョヴァンニ」は、スラム街と、それぞれ現代に舞台を移し、ユニークな設定で原典を読み替えています。
J. Robert Oppenheimer(バリトン)197第二次世界大戦当時ロスアラモス国立研究所の初代所長として原子力爆弾開発のマンハッタン計画を主導。ニューメキシコでの核実験(『トリニティ実験』)の後、日本に投下されることになりました。
Kitty Oppenheimer (メゾソプラノまたはソプラノ)ロバートの妻198
Gen Leslie Groves(バス) マンハッタン計画の実施責任者である米軍少将199
Edward Teller (ドラマティックバリトン) 計画にかかわった物理学者
Robert R. Wilson (テナー)計画にかかわった物理学者200
Frank Hubbard(バリトン)
Captain James Nolan (テナー)
Pasqualita (メゾソプラノまたはコントラルト)
近年の研究によると、数か月前に大統領になったばかりのトルーマンには、原爆開発のことはあまり伝わっていませんでした。トルーマンはナチスドイツの非人道的な行為が国際的に非難されている状況を鑑み、民間を巻き込むような兵器はあまり使いたくなかったそうです。いざ、原爆の標的地を選ぶ際にも、日本の意思決定者に与える影響が強い東京や京都などの都市も候補に上りましたが、あまり乗り気ではなかったとか。方や軍部は議会で承認され多額の予算をとって開発した兵器を試す絶好のチャンスでもあり、また資金導入責任を問われることを恐れ、とにかく戦争終結前に実行したかったといういきさつもあって、広島なら軍事都市だとして実行決定を促したそうです。
原爆が落とされた瞬間がラストシーンとなります。徐々に高まる鐘の音。当局でサングラスや黒いガラスを通して見つめる大勢のスタッフ。一瞬間舞台が明るい白色光で輝いた後、人々の動きが静止し、暗転した舞台に鐘の音が響き渡る中、以下の詩が繰り返し日本語でナレーションされます。
Please give me water. お水をください
My children are asking for water.子供たちがお水を欲しがっているんです
Mr.Tanimoto, please help me.谷本さん助けてください
I can’t find my husband.夫が見当たらないんです
1946年にピューリッツァー賞作家のジャーナリストジョン・ハーシーが広島の原爆被害を取材した[14]たルポ『ヒロシマ』は、雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載され大反響を呼びました。取材を受けた6人の被爆者の中の1人[15]牧師の谷本清201 の証言記録に基づくものだと考えられます。
新作上演時のオペラの制作過程に密着したドキュメンタリーもNHKにて放映されました202。
☞映画 オッペンハイマー(2023)203
カイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによる伝記『オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』(American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer)の映画化。クリストファー・ノーラン監督、製作費約1億ドルを投じた3時間の大作。マンハッタン計画後の政治家との確執も描いています。
ゴールデングロ-ブ賞作品賞、 (ドラマ部門)監督賞、主演男優賞 (ドラマ部門)、助演男優賞 ロバート・ダウニー・Jr. 、作曲賞
アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞 ロバート・ダウニー・Jr. 、撮影賞、編集賞、作曲賞
- J・ロバート・オッペンハイマー 演 – キリアン・マーフィー
- キャサリン・“キティ”・オッペンハイマー(オッペンハイマーの妻)演 – エミリー・ブラント(『ヴィクトリア女王 世紀の愛』主演『イントゥ・ザ・ウッズ』パン屋の妻『メリー・ポピンズ』主演など)
- レズリー・グローヴス(マンハッタン計画の責任者として極秘プロジェクトを指揮する立場にあった将校)演 – マット・デイモン
- ルイス・ストローズ靴売りから政治家に成り上がったアメリカ原子力委員会の委員長。オッペンハイマーをプリンストン高等研究所の所長に抜擢)演 – ロバート・ダウニー・Jr.
リチャード・P・ファインマン(マンハッタン計画の参加者。打楽器ボンゴの名手。後にノーベル賞受賞。著書に『ご冗談でしょう、ファインマンさん』など)204演 – ジャック・クエイド
アルベルト・アインシュタイン(相対性理論で知られる天才物理学者)演 – トム・コンティ(『戦場のメリー・クリスマス』ロレンス大尉役など)
ニールス・ボーア(デンマーク出身の理論物理学者。1922年にノーベル物理学賞)演 – ケネス・ブラナー
ボリス・パッシュ(陸軍の情報将校で、防諜部部長)演 – ケイシー・アフレック(ベン・アフレックの弟『オーシャンズ』シリーズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』アカデミー賞主演男優賞など)
ハリー・S・トルーマン大統領 演 – ゲイリー・オールドマン(特別出演) - 同日に公開されたコメディ映画『バービー』(ワーナー・ブラザース配給)のタイトルを合わせた「バーベンハイマー」という造語も誕生しました。こうした正反対の作風の映画を同時に公開する手法は異なる顧客層にアピールするというカウンタープログラミング205といわれるマーケティング戦略です。公開2週間前の時点で2万人以上のAMC会員が両作のチケットを予約し、さらに7月7日から10日にかけて両作のチケットを購入する割合が33%増加したとか[37][38]、『オッペンハイマー』のチケットを購入した観客の1/5が『バービー』のチケットも同時に購入しているという報告もあります。206
61☞シンデレラ
☞La cenerentola シンデレラ(1817)ロッシーニ
チェーザレ・リエーヴィ演出版(1997年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。タイトル・ロールはセシリア・バルトーリ、従僕ダンディーニ役Alessandro Corbelli。チェーザレ・リエーヴィの演出版(2009年上演)楽しい(whimsical)演出。ダンディーニ役はSimone Alberghini。タイトルロール(アンジェリーナ)は美しいエリーナ・ガランチャ。ラミロ王子は黒人系の爽やかな好青年ローレンス・ブラウニー。あえて王子に黒人系を配することで、王子と従僕(白人系配役)が入れ替わって人々の本音を聞く設定のオペラを、観客自身の差別意識に問いかけるものにすることを狙っているのかもしれません。
ブラウニーはロッシーニの『アルミーダ』でも、美魔女ルネ・フレミングと共演しています。また、シアトルオペラで2008年にアーチスト・オブ・ザ・イヤーを受賞したベリーニ『清教徒』アルトゥーロ役をMETでも2014年に演じており、一途に恋するまじめな好青年の役が似合います。
ブラウニーは身長が高い方ではないので、今後、ロミオとジュリエットなど正統派の恋愛ものの主人公や、ドンジョバンニなど女たらしの配役は難しいかもしれません。チェーザレ・リエーヴィの演出版(2014年上演)208,209タイトルロールはMETで『マリア・ストゥアルダ』を演じたジョイス・ディドナート。ラミロ王子役はJuan Diego Flórez。二人は『セビリアの理髪師』でも共演しています。従僕ダンディーニ役はPietro Spagnoli。
20年近くチェーザレ・リエーヴィの演出で上演されています。衣装のほとんどかわりませんが、アンジェリーナの女中服が黒からエンジになったり、時代が新しくなるにつれ少しづつですが華やかになっているようです。
イタリア人作曲家のシンデレラをイタリア人が演出するとコミカルで、男性陣も個性的です。壊れた長椅子が演出上に楽しいエッセンスを加えています。宴会の場面は、赤いギンガムチェックのテーブルクロスにパスタ、トスカーナ産のキャンティワイン(藁苞が特徴的)の瓶など、イタリア風の演出です。パーティの最後は写真のように時間が止まります。
ロッシーニの『シンデレラ』では、魔法使いの女性の代わりに王子の師匠がカップルを支援する役どころで登場します。二人の姉や父、従僕の極端な演技もみどころです。義母は登場せず父が義父という設定で、身の程知らずの野心を持ち娘たちを王に嫁がせ王子の祖父になることを夢見ています。
☞Cendrillonシンデレラ(1899)マスネ
ローラン・ペリー演出版(2018年上演)童話の本を背景にウィットと斬新さが爆発する演出。若い女性から老婆、ハッテン的な姉妹やサディスティックな女教師風まであらゆるお妃候補が王子を取り巻き、王様も大喜び。妻の尻に敷かれた気弱な父。フランスの作曲家のシンデレラをフランス人が演出すると粋でセクシーになります。フランス語。
➤タイトル・ロールは、ロッシーニでもシンデレラを演じたジョイス・ディドナード。同じ歌手が同じ人物を、違う作家のオペラで歌っています。シンデレラのスパンコールがついたふんわりと青いドレスはディズニー実写版『シンデレラ』のドレスとよく似ています。
➤韓国系のキャスリーン・キム210の白髪ショート・ヘアスタイルや衣装は、西洋人ではないユニークさを引き立て、魔法使いとして人間とは異質な感じを強調しています。『仮面舞踏会』の秘書役と同様、小柄で元気な役柄は明るい要素のひとつです。
➤ズボン役メゾソプラノとして『ヘンゼルとグレーテル』のヘンゼルほか王子を演じることが多いアリス・クーテがチャーミング王子を演じています。
キャスリーンとステファニーは『仮面舞踏会』でも、秘書役と占い師役として共演しています。
➤継母役ステファニー・ブライズは『オルフェオとエウリディーチェ』でオルフェオを演じた時の黒い衣装は身体の大きさを感じさず返って男性らしく見えましたが、今回の継母役では、あえて太った伯爵夫人をコミカルに演じました。元々大きな身体ですが、詰め物をして更に丸々と太った感じを演出しています。継母や姉達のマンガから飛びだしてきたような衣装がユニークさを引き立てます。小さな王冠でドレスアップした姿、はルイス・キャロスの不思議の国のアリス・シリーズの挿絵を描いたテニエルの赤の女王や、それを元に作られたディズニー・アニメのハートの女王のようです。ブライズは『ファルスタッフ』でもクイックリー夫人をコミカルに演じています。
➤王子の候補者の一人を気に入って小さく手を振る王様の演出もかわいい。
62☞ファウスト博士(ゲーテ原作)
☞La Damnation de Faustファウストの劫罰(1846)ベルリオーズ
Robert Lepage演出版(2008年上演)211ジェームズ・レヴァイン指揮、スーザン・グラハム出演。
格子状に区切られた舞台装置と映像を使い、それぞれの格子で繰り広げられるドラマと、格子をまたがって移動する人物の組み合わせ自体が背景となる斬新な演出です。テクノロジーとサーカスさながらのダンサーの身体能力を駆使しながら、夢見るような舞台に仕上がっています。全体的に暗いライティングの舞台になりがちなオペラですが、逆に映像や明るいカラーの衣装で人物に注目させるようなデザインになっています。
2幕フィナーレ「兵士たちの合唱」の場面では恋人に見送られ出征する兵士、亡くたった兵士をアクロバティックな振付で描きます。
3幕「霊の呼び出し」ではメフィトフェレスが呼び出したアクロバティックな振付の鬼火たちが少女たちを誘惑するバレエとして演出されています。
☞Faustファウスト(1859)グノー
Des McAnuff演出版’(2011年上演)212映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペ、Jonas Kaufmann出演。
➤舞台を20世紀半ばに設定し、第二次大戦の終わりからスタートしたものが、ファウスト博士の若かりし頃の第一次大戦初め頃への回顧へと進みます。
➤演出家は「ヒロシマ・ナガサキは世界を永遠に変えたが、ファウストの物語はその関連を予言するものであったと思う」といいます。「いつどこから飛んでくるかわからない爆弾や人々の可能性を自分自身で破壊する怖さが表れている」「私はそのような恐怖に陥る個人の責任に興味があり、ファウストの理解はそこから始まると思うのです」
➤「博士の魂は研究室から離れませんが、想いは様々なシーンに飛び」「特に第三幕はオープニングとはガラッと変わり全然違うエンディングになります」この演出家の強みであるダイバシティはそれぞれのシーンで表現されていますが「全ては同じ環境の中で起こる」といいます。
➤「衣装は1920年代から30年代の大戦時代からインスパイアされていますが、衣装デザイナーPaul Tazewellはファウスト博士の空想の産物であるかのようなものを作ってくれました」
➤ゲーテの原作を元にした作品はありますが、グノーは他の作品と比較する観客も意識していています。例えばメフィストフェレスは、より人間的です。このフランス語のオペラでは、メフィストフェレスは、ものごし柔らかく洗練された典型的なパリジャンでありながら、シングルマザーを嘲笑したり、不快な笑い方をしたりします。フランス人の観客が彼をより身近に感じる必要があったのです。グノーの成功は古い物語が現代の観客にも通じるようにしたところにあると、新演出をしたDes McAnufは主張しています。
➤この演出家と『ファウスト』の繋がりは深く、フレンチホーン奏者であった父のレコードが好きだったといいます。ドラマ・スクール時代にはオーディションでChristopher Marloweの『ファウスト博士』演出のプレゼンテーションをしたとも。
63☞マノン/マノン・レスコー
Manonマノン(1884)マスネ
ローラン・ペリー演出版(2012年上演)213,214出演はアンナ・ネトレプコ。ファビオ・ルイージ指揮。原案では1771年の舞台を19世紀のベル・エポックに再設定し、きわどいシーンもある演出。ローラン・ペリー演出版(2019年上演)Maurizio Benini指揮。METの若手育成プログラム出身のリセッテ・オロペサ主演。
ベテラン美人のアンナ・ネトレプコ215(上演当時40歳)は妖艶なファム・ファタールのマノンでしたが、リセッテ・オロペサ216(上演当時35歳)は若々しく溌剌とした生気に満ちふれるマノン。イブニング・ドレスの似合うネトプレコに対し、裸シャツが似合うオロペサ。
➤オロペサ版はきわどさは控えめですが、ラストの落ちぶれた衣装も逆に悲壮感がただよわず悲劇なのに明るさが漂っています。『椿姫』や『ラ・ボエーム』のように運命の理不尽の悲哀をヒロインが受け入れるような泣かせる悲劇感の演出も感動的ですが、目を見開き「何が起こったか何でこうなるのか本人もわかっていない」まま亡くなる演出は、同じマスネが作曲したバレエ『マノン』の振付をしたケネス・マクミランとローレンス・オリヴィエ賞を受賞したアレッサンドラ・フェリの「マノンは自分をわかっていない子供」という解釈に通じます。
➤田舎娘の時もパリの女王の時も、マノンは一貫して驚くほど自分自身に正直です。ローラン・ペリーはマノンに“天然”と“人を操作する”ことの両方の性格を見出しました。「マノンはとても恋人を愛していますが、同時に金や目の前の楽しみや男性からの注目にも魅了されます。貧困に生きることに耐えられませんが、本当の愛なしに生きることにも耐えられないのです」
➤マノンを演じたアンナ・ネトブレコについて「彼女はセックスアピールも、魅惑的な声も持っている」とペリーはいいます。
➤ベル・エポック時代の小悪魔的な女性にペリーは興味をしめしています。カルメン、『椿姫』のヴィオレッタをはじめとして19世紀後半の文学やオペラでは、性的に自由な女性が死をもって罪を償わされる構成になっています。マスネも後に高級娼婦を題材にしたオペラ『タイス』217を作曲しています。「自由な女性は危険だ:これらの物語は結局はこういうことを言っているのです」
➤ペリーはマノンをファム・ファタール(魔性の女)としてだけでなく犠牲者としての視点も強調しています。彼女の悲劇の責任は取り巻く男たちにもあります。たった15歳の少女に色目を使い、従兄でさえ彼女を踏み台にします。ペリーはそのような男たちを「自己顕示欲と傲慢と見栄の権化」とし、第三幕のバレエのような明るい瞬間でも、黒いフォーマル衣装に身を包んだ紳士たちが、彼女を取り囲む「捕食者のような」威嚇を水面下に感じるだろうと、いいます。 (MET歌劇場ウェブサイトより拙訳)
➤自身が出奔する前に恋人に「いかないで、抱きしめていて」と歌うくだりは、『椿姫』(1853年)218が出奔する前に恋人に「私のことを愛しているわね」と歌う切実さと似ている。『椿姫』の設定も19世紀中ごろで、賭博シーンや父との邂逅、変わらぬ愛を目前にして死にゆく恋人など『椿姫』とイメージが重なる演出。ただ、ヴィオレッタは相手とその家族のために自らわかって身を引くことが明確だけど、マノンは自分のために逃げるような感じ。命を懸けた悲劇と何も考えていない悲劇と悲劇の種類が違う。
➤加えて、この歌の後すぐにはじまる2幕は冒頭から派手な愛人生活の描写で、『椿姫』のような身を引く決意に至るまでの背景シーンがないことも自己犠牲の悲劇感が薄まっている原因かな?
➤三幕のバレエシーンではドガのようなバレエ衣装の娘たちが紳士服の男たちに品定めされるように見られ、拉致されている。元々オペラ中のバレエは、男たちをコーラスガールで魅了するため生まれた経緯はあったけれど、こんな風なあからさまな演出だと、ドガの絵も少し不純に見えてくるね。
ドガ「舞台のバレエ稽古」(1874)メトロポリタン美術館public domain
Manon Lescautマノン・レスコー(1893)プッチーニ
Gian Carlo Menotti演出版(1980年上演)219。ジェームズ・レヴァイン指揮、プラシド・ドミンゴ、レナ・スコット220出演。18世紀のカラフルな世界をとらえたぜいたくな演出。
Brian Large演出版(2008年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。Richard Eyre演出版(2016年上演)Roberto Alagna出演、ファビオ・ルイージ指揮。
➤METのライターWilliam Bergerは演出家のエアは、他のプッチーニの作品『つばめ』や『蝶々夫人』のヒロインである愛人達との比較を意識していたことを伝えています。
➤1940年代の占領時代のパリに舞台をうつしたエレガントな演出。プッチーニの時代19世紀の終わりには現代のようにエロティックさを舞台上で表現をすることができなかったので、18世紀の舞台設定をすることが検閲を逃れる手段として常套化していました。『マノン』の他『ドン・ジョバンニ』『スペードの女王』などでは仮面舞踏会での親密さを演出することでこのような制約に対処していました。19世紀の著名人をモデルにしている、ヴェルディ『椿姫』でさえも、初期の頃は検閲回避のため18世紀の衣装で演じられました。しかし、時代が経過するにつれ、観客が極端なパリのロココ衣装から人間ドラマを見出すことが難しくなってきました。
「私は人生をライブを見ているような感じで直接伝わるオペラの表現方法を見つけることが重要だと思ったんです、お互いに惹かれ合ってることに気づいたり、すぐにセックスしたりする人々のね。」とエアはいいます。「現代の観客がそれに引き付けられたら、半分勝ったようなもんだって。」221
➤愛人になったマノンは浮世絵の美人画が描かれたキモノ・ローブを羽織っています。また、栗色だった髪を金髪に染めています。ダンスの練習シーンでは、クラシカルな音楽にのせて、タンゴが練習されます。第2幕にマノンを連行するのはヘルメットを被った占領軍下の警察の制服を着た人々です。
メトロポリタン歌劇場ではオペラのあらすじを各国語で掲載していますが、プッチーニの『マノン・レスコー』のページには、マスネの『マノン』のあらすじが掲載されています。逆に、マスネ『マノン』のあらすじページには日本語が掲載されていません。オペラまたは日本語を詳しく知らない人が、勘違いしたのでしょう。(2020年9月現在)METに指摘のメールを送ったところ、『マノン』のあらすじページに日本語が掲載されました。ところが『マノン・レスコー』のページはそのままで何故か第5幕として第4幕のストーリー(らしき記述)が追加された不完全な日本語あらすじになっています。(2021年8月)
最初にマノンを演じたのは世界で“世界で最も美しい女性”といわれたLina Cavalieri。結婚スキャンダルで世間を沸かせましたが、火事で命を落としました。マノンのように宝石を取りに戻ったせいだとか。
その他のオペラ
64☞Dialogues des Carmélitesカルメル派修道女の対話(1957)プーランク
John Dexter演出版(1987年上演)ジェシー・ノーマン出演。
John Dexter演出版(2019年上演)1977年からの演出。222ヒロイン役はIsabel Leonard(『セヴィリアの理髪師』ロジーナ役、『フィガロの結婚』ケルビーノ役、『コジ・ファン・トゥッテ』ドラバラ役など)。エンディングは一人ひとりの修道女が舞台から消えていくと共にギロチンの落ちる音が聞こえる演出ですが、恐怖に耐えたり十字を切ったりする、それぞれの修道女の反応が個別に演出されています。
➤原作はドイツのカトリック文学を代表する女流作家ゲルトルート・フォン・ル・フォールが1931年に発表した小説『断頭台下の最後の女』223。1794年7月17日にコンピェンの16人のカルメル会の女性がギロチンで処刑された史実を題材にしているこの作品は1960年にジャンヌ・モロー主演で映画化されています。
➤フランス革命政府は宗教活動を非合法化し、修道院を解散して教会財産を没収します。1792年には全ての女子修道院を閉鎖するように明じ、修道女たちは人々の間で修道服を着ることなく生活せざるを得ませんでしたが、細々と祈りや奉仕を行うコミュニティを続けていました。反対者をギロチン送りにするロベス・ピエールらの恐怖政治224の中で、1974年6月23日コンピエーニュに存在したカルメル派の元修道女らは反逆者として逮捕されました。21名の元修道女のうち2名は1974年までに死亡しており3名は逮捕時に不在、16名が7月17日の裁判で証人や弁護士もなく死刑判決を受けました。同日午後8時より、最も若かったコンスタンス(29歳)が最初に、修道院長のマザー・テレサ(41歳)が最期に処刑されました225。
➤時の処刑責任者はシャルル=アンリ・サンソン226
フランス文学者によるノンフィクション。
イノサン全9巻 イノサン・ルージュ全12巻(集英社)坂本眞一
上記を種本として、シャルル=アンリ・サンソンとその架空の妹を主人公とした漫画。
サンソン──ルイ16世の首を刎ねた男 – 2021/4/23 中島かずき (著), 安達正勝 (監修)
上記安達正勝著作を種本とした戯曲。
サンソン回想録:フランス革命を生きた死刑執行人の物語 オノレ・ド・バルザック (著), 安達 正勝 (翻訳) 5つ星のうち4.2(17評価中)バルザック227はアンリ・サンソンと親交があったそうです。
サンソン家回顧録上巻 下巻(原典翻訳シリーズ)アンリ=クレマン・サンソン (著), 西川秀和 (翻訳)シャルル=アンリ・サンソンの孫が著した一族史。
死刑執行人―残された日記と、その真相 – 2014/7/1, Joel F. Harrington (原著), 日暮 雅通 (翻訳)5つ星のうち4.9(4評価中)
パリの断頭台: 七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記 Barbara Levy (原著), 喜多 迅鷹 (翻訳), 喜多 元子 (翻訳)5つ星のうち4.8(9評価中)米国推理作家協会賞。
フランス反骨変人列伝 (集英社新書) 安達正勝 (著)5つ星のうち4.1(5評価中)六代目サンソンほかモンテスパン侯爵、ネー元帥、犯罪者詩人ラスネールをとりあげています。
フランス革命夜話 (中公文庫) 辰野隆 (著) 5つ星のうち4.5(3評価中)断頭吏サンソンほか、ロベスピエール、ミラボー、シャルロット・コルデー、ボーマルシェなど。
➤革命のコンセプトである自由平等を誓う「市民の誓い」をかたくなに拒否し、神への奉仕の誓願のみを遵守しようとする彼女らは、当時「狂信者」とみなされていました。
「狂信」という言葉は、ヴォルテールによって「暗くて残酷な宗教的狂気」と定義されていました。「男性は社会を妨害する時だけ犯罪である。狂信は社会を乱す。修道女が法廷で宗教的な愛着を主張する事実は、裁判所にとって狂信の証拠である。」とも述べています。
➤コンピエーニュ市当局や恐怖政治推進派が穏健派の非難に対して、修道女たちの「狂信的な陰謀」をテロ活動としたて上げ、一地方の事件ではなく国家事件として大ごとにしたという背景もあるそうです。
ブランシュ・ド・ラ・フォルス(ソプラノ)フランス革命時、母が民衆の暴動に巻き込まれ命を落としたフォルス侯爵令嬢。群衆から逃れる為16歳でカルメル会修道院に入り、父や兄との亡命の誘いを断り修道院に残ることを決める。 修道院解散後に元の自宅の屋敷でメイドをしていたが、修道女たちがコンシェルジュリ監獄で死刑の判決を受けたことを聞き刑場に駆け付ける。コンスタンスの聖歌を引き継ぎ息絶える。
ド・ラ・フォルス侯爵(バリトン)ブランシュの父。騎士フォルス(テノール) ブランシュの兄。
クロワシー夫人(コントラルト) 修道院は避難所ではなく祈りの場であるとブランシュに教え、何かの前兆に怯えたように亡くなる修道院長。
コンスタンス(ソプラノ)クロワシー夫人を敬愛する明るい性格の修道女。修道女たちは聖歌を歌いながらギロチンにかけられる中、最後に断頭台に上るブランシュの友人。
礼拝堂神父(テノール)政府によってミサを禁じられ修道院から離れて身を隠そうとするも、役人に見つかり、修道院は解散させられ礼拝堂は廃墟となりました。
マザー・マリー(メゾソプラノ)修道院が解散させられ殉教を提案する副修道院長。逮捕を逃れたが自分も殉教するため刑場に駆け付けようとするものの、司祭から殉教者は神が選ぶもので自分の意思で決められるものではないと諭されます。
リドワーヌ夫人(ソプラノ)クロワシー夫人の後継の修道院長
マザー・ジャンヌ(コントラルト)修道女長、シスター・マチルド(ソプラノ)修道女
65☞Normaノルマ(1831)ベッリーニ
Sir David McVicar演出版(2017年上演)230アダルジーザ役ジョイス・ディドナード。
- ポリオーネ(テノール)ノルマからアダルジーザに心を移したローマ帝国のガリア地方総督。アダルジーザを連れ去ろうと神殿に侵入し捉えられるが彼女の名は明かさない。最終的にはノルマの自己犠牲に心を打たれ、再度、ノルマへの愛に目覚めて一緒に死ぬ覚悟をする。
- オロヴェーゾ(バス)娘のノルマから息子達を託されるドルイド教徒の長。
- ノルマ(ソプラノ)秘密裡にポリオーネと愛し合い二人の息子をもうけた巫女の長。ローマの支配からの解放を願う皆に自分の裏切り明かし、従容として火刑台に向かう。
- アダルジーザ(原曲ではソプラノで歌われたが、今日ではメゾソプラノが多い)ノルマとの友情のためポリオーネと別れる決意をする、イルミンスルの神殿に仕える若き巫女。
- クロティルデ(ソプラノ)ノルマの親友。
- フラヴィオ(テノール)ポリオーネの友人。
66☞Rusalkaルサルカ(1901)ドボルザーク
オットー・シェンク演出版(2014年上演)タイトル・ロールはルネ・フレミング。魔女役を『イル・トロヴァローレ』のジプシー女アズチェーナ役を得意とするDolora Zajickが演じています。231カエルや子リス、虫たちなどの子役が登場する可愛い舞台。
Mary Zimmerman演出版(2017年上演)ルサルカのブルーグリーンのマーメイド・ドレスはサーリアホ『遥かなる愛』のクレマンスの衣装に似ていますが、湖は森の中にあり、海のような青というよりも、全体的に緑がかって表現されます。森の妖精達は、緑がかったバレエ衣装のような短いチュチュ風のショートパンツ。衣装で王冠を被ったワッサーマン(水の精)は、小太りで緑の手指の先が赤い蛙の王様。魔女の助手の猫、鼠、カラスなど、全体的におとぎ話の絵本から抜け出てきたようなイメージです。人間に変身した後のルサルカの衣装は、足の見えるひざ下丈の白いドレスに変わります。ウェーブのロングヘアもミドルヘアに短くなります。妖精や森関連は緑、変身後のルサルカは白、宮廷人は黄色と赤のカラー・イメージで統一されています。
ルサルカ(固有名詞ではなく水の精の意)(ソプラノ)口をきかないことと恋人が裏切った時は水底に沈むことを条件に、魔女に人間の姿にしてもらい王子と結婚するものの、王子が外国の王女に心を移したため、湖に沈められる。水の精に戻るために必要だといわれた王子を殺すためのナイフを捨てるが、王子自身は自らの過ちに気づき一緒に水底に沈もうとルサルカに口づけを求め、二人共沈む。
王子(テノール)ルサルカと結婚するが、口をきかないルサルカを冷たく感じ外国の王女に心を移す。ルサルカが湖に引き込まれると、外国の王女は逃げ去る。妖精たちに自分の罪を聞かされて反省し、ルサルカと共に水底に沈む。
ワッサーマン(固有名詞ではなく水の精の意)ドヴォニク(バス)ルサルカの恋心を知り魔女を紹介する父。宮廷に居場所のないルサルカを助けようとする。
魔女(メゾソプラノ)
猟師(テノール)
料理人(ソプラノ)
3人の木の精霊(ソプラノ)森の中でワッサーマンをからかって遊ぶ。
狩人(テノールもしくはバリトン)
2010年のマルティン・クシェイの演出では狩りのシーンで本物の鹿をつるし動物愛護協会からクレームがついたそう。クシェイの演出の解釈は、地下室に男(ワッサーマン)が女の子たちをかこっていて弄び、裏切りや嫉妬や淫猥が蔓延する外の世界から守るという主張をする設定とか232。
Joshua Bell – Dvorak – Song to the Moon from Rusalka
月に寄せる歌 ルネ・フレミング
プロットは、1837年に発表されたデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセン作の『人魚姫』に酷似していますが、ドヴォルザークとアンデルセン自身は面識はなかったそうです。
67☞Boris Godunovボリス・ゴノドフ(1874)ムソルグスキー
Stephen Wadsworth演出版(2010年上演)233映画『魔笛』でザラストロを演じたルネ・パーペが、『リア王』と並び称されるほど難しいタイトルロールを演じています。
序曲にあたるノヴォデヴィチ修道院の中庭のシーンでは歌はないながら気狂いのような人物を登場させ、そのふるまいで民衆全体の熱狂を表現しています。ギリシャ正教会では「佯狂者234」「聖愚者」ともよばれ、修行僧ではなく民間でぼろを着て馬鹿を装う人物として、ある種の聖人とされています。
ボリス・ゴドゥノフ(バスまたはバリトン)正当な後継者ドミトリーが死亡した後1593年に即位したロシアのツァーリ。ドミトリーを殺害したと噂されている。
ニキーティチ(バス)民衆に「ボリスにツァーリになってほしい」と願え、と扇動する警吏長
フョードル(メゾソプラノ)ボリスの息子。クニセヤの弟。史実ではボリスの死後、偽ドミトリーに処刑されました。
クセニヤ(ソプラノ)ボリスの娘。史実ではボリスの死後、偽ドミトリーの慰み者にされました。
乳母(アルト)クセニヤの乳母
ヴァシリー・シュイスキー(テノール)ボリスの首席顧問、公爵
グリゴリー・オトレピエフ(テノール)実は生きていたと、偽ドミトリーとなる若い修道僧。史実ではボリスに反対する貴族に担がれフョードルを殺害して帝位につきました。他にも2人の偽ドミトリー(僭称者)があったそうです。
アンドレイ・シチェルカーロフ(バリトン)貴族会議の書記官
ピーメン(バス)修道僧。年代記の編纂者
マリーナ・ムニーシェク(ソプラノまたはメゾソプラノ) 野心的なポーランド貴族の娘で偽ドミトリーと結婚する。このドミトリーの死後あらわれた別の偽ドミトリーとも結婚し男子を設けます。
ランゴーニ(バス)イエズス会の密使
ヴァルラーム(バス)、サイール(テノール)旅籠で手配書によりグリゴリーを看破する浮浪人たち
女主人(メゾソプラノ)旅籠屋(居酒屋)の女主人
68☞Adriana Lecouvreurアドリアーナ・ルクヴルール(1902)チレア
Sir David McVicar演出版(2019年上演)アンナ・ネトレブコ出演。235
18世紀前半にパリで活躍した実在の女優、アドリエンヌ・ルクヴルール236の生涯を描いています。30代で亡くなったアドリエンヌはブイヨン公妃に毒殺されたと噂されましたが、実際には彼女とザクセン伯モーリッツの愛人関係は既に終わっていたので信ぴょう性はないようです。
舞台上に舞台がある演出。3幕で神話を題材に繰り広げられるバレエが楽しい演出です。
- アドリアーナ・ルクヴルール(ソプラノ):実在のコメディ・フランセーズ(王立劇団)女優。
- マウリツィオ(テノール): ザクセン伯モーリッツ。アドリアーナとは恋仲ですが彼女には身分を隠し、サクソニア(ザクセン)伯爵軍に従軍している士官と名乗っています。政治的な理由でひそかにブイヨン公妃と密会。
- ブイヨン公爵(バス): 芝居愛好家のパトロン貴族。愛人はアドリアーナのライヴァルである大女優デュクロ。
- ブイヨン公妃(メゾソプラノ): マウリツィオに恋心を抱きアドリアーナを毒殺。
- ミショネ(バリトン):アドリアーナに密かな恋心を抱く初老の舞台監督。
69☞Les Contes d’Hoffmannホフマン物語(1881)オッフェンバック
☞Bartlett Sher演出版(2009年上演)ジェームス・レヴァイン指揮。アンナ・ネトブレコ、キャスリーン・キム出演。237オッフェンバックの物語を旅するような空想的な演出。(セットMichael Yeargan、衣装Catherine Zuber)
☞Bartlett Sher演出版(2015年上演)カラフルな演出。第二幕の自動人形オランピアが躍る夜会のシーンは、レビュー・ショウ風。ドイツの小説家ホフマンの3つの小説を元にオッフェンバックが未完のまま残した作品で、後世に次々と発見され、様々な版がある。
オペラ「ホフマン物語」よりオランピアのアリア(幸田浩子)新国立劇場 Tokyo
André Rieu – Song of Olympia
Elizabeth Futral – Les contes d’Hoffmann – Olympia
Sabine Devieilhe – Les Contes d’Hoffmann – 映画『マーズ・アタック風』火星マダム風
ホフマンの船歌La Vida es Bella Barcarolle 映画『ライフ・イズ・ビューティフル』より
Barcarolle from ‘The Tales of Hoffmann’ – Anna Netrebko and Elina Garanca
Escolania Escorial: Barcarola (los cuentos de Hoffmann) J. Offenbach 少年合唱団
70☞The Merry Widowメリー・ウィドウ(1905)レハール
Susan Stroman演出版(2015年上演)ワルツやカンカンも登場するオペレッタ。ブロードウェイも手掛けるトニー賞受賞演出家によるパリを舞台とした華やかな演出。英語による上演238。ルネ・フレミング出演。
同年ブロードウェイの『王様と私』でトニー賞を受賞したミュージカル女優ケリー・オハラがヴァラシエンヌ役。ケリー・オハラは2018年『コジ・ファン・トゥッテ』にも出演しています。マキシムでのカンカンダンスシーンは、ミュージカル女優としての見せどころです。
ニェーグシュ役の、舞台俳優で教員・コーチのカーソン・エルロッドは歌いませんが狂言まわしとしてオペラにユニークな味付けをしています。
ハンナ・グラヴァリ(Hanna Glavari ソプラノ):夫が結婚8日後に亡くなったパリ在住の裕福な未亡人。ヴァラシエンヌの逢引が夫にみつかりそうになった際、身代わりとなり入れ替わってあげたことで、ダニロに誤解される。
ミルコ・ツェータ男爵(Baron Mirko Zeta バリトン):ポンテヴェドロ国(東欧の小国モンテネグロがモデル)のパリ駐在公使。ハンナの資産が国外に流出しないよう、パリジャンではなく自国人で独身のダニロとの結婚を画策。
ヴァランシエンヌ(Valencienne ソプラノ):ツェータ男爵の妻。言い寄るカミーユをあきらめさせようと、ハンナの結婚相手として推薦。
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵(Graf Danilo Danilowitsch テノール):プレイボーイ。大使館の一等書記官。身分の違いから以前ハンナと結婚できなかった元恋人で、資産目当てと思われるのが嫌で、求婚者に取り巻かれるハンナに対して意地を張って求愛しない。
カミーユ・ド・ロジヨン(Camille de Rosillon テノール):フランス人の大使館随行員、ヴァランシエンヌの愛人。
カスカーダ子爵(Vicomte Cascada テノール):ハンナに求愛する公使館付随員。
ラウール・ド・サンブリオシュ(Raoul de St.Brioche テノール):ハンナに求愛するパリの伊達男。ニェーグシュ(Njegus 台詞のみ):大使館の書記官。
ヴィリアの歌
☞Renee Fleming Vilja Lied メトロポリタン歌劇場2015年ルネ・フレミング
☞Vilia – Jeanette MacDonald – Movie Sequence.wmv 1935年の映画
☞”Vilia” トランペット奏者コルトレーンのジャズアレンジ
☞Franz Lehár – Vilja Lied (“Die lustige Witwe”)ピアノ
お馬鹿な騎士さん
☞METライブビューイング2014-15《メリー・ウィドウ》先行映像4 ルネ・フレミング
☞Lott/Allen – The Merry Widow (ROH ’97) – Act II – Hello, here’s a soldier bold!
☞Silly Silly Soldier from The Merry Widow- Goitsemang and Dikgang from The Black Tie Ensemble黒人によるオペラ
女・女・女のマーチ
☞WGO – The Merry Widow – “Women” Wichita Grand Opera2011
☞”Cherchez la Femme” from The Merry Widow by Opera Australia 2011
☞Cherchez La Femme – Nat King Cole ナットキングコールのジャズ・アレンジ
唇は語らずとも
☞Lippen Schweigen – Hvorostovsky & Fleming
☞Anna Netrebko and Piotr Beczala – Lippen Schweigen (Wiener Burgtheater, 2013)
☞Franz Lehar – Lippen schweigen – Vsevolod Pozdejev (Klavier)ピアノ
3幕マキシムのカンカン
☞The Merry Widow: “We’re the Ladies of the Chorus”メトロポリタンオペラ
☞The Merry Widow: Can-Can メトロポリタンオペラ
☞Franz Lehár – The Merry Widow (Die lustige Witwe) “The Queen of Operattas” | Act 3
☞Gwen Verdon, Lana Turner – Merry Widow – 1952 映画
大晦日。アメリカの各外交館では「蛍の光」が歌われ新年のパーティが開かれています。中国大使館では竜の舞なども。貧乏な小国マショーヴィア大使館では、パーティは開かれておらず、大使と秘書の2人が国王の肖像画の前で飲み交わしています。オペラでハンナに当たる裕福な未亡人は米国出身のニューヨーク在住クリスタル・ラデク夫人。亡きラデク氏は故国では国王の馬の蹄鉄を打つ鍛冶屋でしたがアメリカにわたり財を成しました。
夫の彫像を立てるとの国王の申し出に、初めてマショーヴィアを訪れた夫人を迎えようとのパレードは“女・女・女のマーチ”の替え歌。居酒屋でジプシー相手に国王の甥ダニロ伯爵が歌うのは“ヴィリアの歌”の替え歌。もちろんマキシム240ではカンカンも!
夫人は風呂上りに刺繍をしたキモノローブをまといます。
夫人秘書キティ役のウナ・マーケルはアカデミー賞室内装飾賞を受賞した1934年のアメリカ映画『メリィ・ウィドウ241』にも王妃役で出演していました。
71☞Marnie マーニー(2018)ニコ・マーリー
Michael Mayer演出版(2018年上演)Isabel Leonard出演(『コジ・ファン・トゥッテ』『フィガロの結婚』『セヴィリアの理髪師』など)242衣装デザイン:Arianne Phillips 作曲:Nico Muhly 作詞:Nicholas Wright。ウィンストン・グレアム原作243。英語上演。舞台は1959年のイギリスですが、AラインHラインに代表されるディオールのニュールックとよばれるウェストを絞ったスカートや切り替えワンピースなどのビビッド色衣装が、ファッショナブルで華やかです。
マーニー:過去にトラウマがあり犯罪を犯す若い女性
マーニーの母
マーク・ラトランド:マーニーを結婚を迫るがマーニーを救おうとする雇い主
テリー:ラトランド:マークの兄弟
ミセス:ラトランド:マークとテリーの母
72☞Prince Igor イーゴリ公(1890)ボロディン
チェルニアコフの演出版(2014年上演)245近代のロシア風の衣装、記録映画風の白黒映像、ケシの花畑などを使った大胆な演出。
12世紀に実在し遊牧民族ポロヴェツ人246の捕虜となったロシアのイーホル・スヴャトスラーヴィチ247が脱走して妻の元へ還る『イーゴリ遠征物語』248を原作としたオペラ249。
イーゴリ公(バリトン) – 主人公。セーヴェルスキイ(ウクライナの都市)の領主。
ヤロスラーヴナ(ソプラノ) – イーゴリ公の2度目の妻。
ヴラヂーミル・イーゴリェヴィチ(テノール) – プチーブリの領主。コンチャーコヴナと恋に落ちるイーゴリの先妻との息子。
ヴラヂーミル・ヤロスラーヴィチ(バス) – ヤロスラーヴナの兄。ガーリチの公。イーゴリ公親子出征後、プチーブリで専横。
コンチャーク(バス) – ポロヴェツの首長(ハーン、汗)の1人。武人としてイーゴリ公をリスペクト。
コンチャーコヴナ(アルト) – イーゴリ公の息子ヴラヂーミルと恋に落ちるコンチャークの娘。
オヴルール(テノール) – イーゴリ公の脱出を手助けするキリスト教徒のポロヴェツ人。
☞映画版 監督:R.チホミーロフ 、キーロフ・アカデミー・オペラ・バレエ劇場(1969年)
☞ゲルギエフ指揮、マリインスキー歌劇場の演奏とバレエで1997年8月に上演されました。
73☞Hamlet ハムレット(1868)トマ
パトリース・コリエ&モーシュ・ライザーチェルニアコフ演出版(2010年上演)近世的でシンプルな演出。
シェイクスピア『ハムレット』を題材にしたオペラの中では最も有名なフランス語のオペラ250ですが、原作のいくつかのプロットや登場人物は割愛されています。
アムレ(ハムレット):(バリトン)デンマークの王子、前王の息子
オフェリ(オフィーリア):(ソプラノ)アムレの恋人、ラエルトの妹
ジェルトリュード(ガートルード):(メゾ・ソプラノ)アムレの母、前王の死後クロードと再婚
クロード(クローディアス):(バス)前王の弟、現国王
前王の亡霊:(バス)アムレの父、クロードの兄
ポロニュース(ポローニアス):(バス)クロードに仕える大臣、オフェリの父
ラエルト(レアティース):(テノール)オフェリの兄、ポロニュースの息子
オラシオ(ホレーショ):(バス)アムレの親友
74☞L’Amour de Loin 遥かなる愛(2000)カイダ・サーリアホ
R・ルパージュ演出版(2016年上演)シルクド・ソレイユなどを手掛けた演出家による、大量のきらめくLED照明を使った神秘的な舞台251.ジョフレのインナーフィッシャマンズゼーター、クレマンスのドレスに合わせたグリーンのネイル、巡礼の衣装の蟹など海をイメージさせる衣装デザインとなっています。Susanna Phillips出演。
クレマンスの△モチーフの衣装は歌舞伎の鱗のアレゴリーをイメージさせるし、ジョフレの上着の鳥の刺繍や、日本工芸品のような巡礼の蟹など、日本芸術の影響じゃないかな。
12世紀に第二回十字軍に参加し遠征中に亡くなった、実在の騎士で吟遊詩人のジョフレ・リュデル252の物語を元にフィンランドの現代作曲家により作曲されました253。
クレマンス(ソプラノ)巡礼から自分に恋するジョフレのことを聞き、恋するようになるトリポリの女伯爵
ジョフレ(バリトン)巡礼からクレマンスのことを聞き理想の女性として恋焦がれ、トリポリに向かうフランスの騎士で吟遊詩人。
巡礼の旅人(メゾソプラノ)ジョフレのクレマンスの間を取り持つ巡礼者
トリポリ伯国は、12~13世紀頃十字軍が奪取した地域に建設された4つの十字軍国家254のひとつで、港湾都市トリポリを中心とした海洋国家です。伝記物語(散文詩)によるとジョフレの恋焦がれた相手は、エルサレム王女にしてトリポリ伯レーモン2世夫人のオディエルナ・ディ・エルサレム255。
75☞Cavalleria Rusticanaカヴァレリア・ルスティカーナ(1890)マスカーニ
ゼッフェレッリ演出版(1978年上演)プラシド・ドミンゴ出演、ジェームズ・レヴァイン指揮。
David McVicar演出版(2015年上演)2561900年頃のシチリアの村を舞台としています。
イタリアの小説家、ジョヴァンニ・ヴェルガによる小説(1880年出版)、戯曲(1884年初演)を原作としてピエトロ・マスカーニが作曲した1幕物のオペラ(1890年初演)。題名は「田舎の騎士道(英語Rustic Chivalry)」といった意味。舞台はシチリア島の山間部257トゥリッドゥ:ローラの元恋人、帰郷後、サンタと婚約するもローラと逢引。
ローラ:トゥリッドゥの兵役中にアルフィオと結婚するが帰郷したトゥリッドゥと逢引。
村娘サントゥッツァ(サンタ):帰郷したトゥリッドゥと婚約。ローラの不倫を告げ口。
馬車屋アルフィオ:トリッドゥに復讐するローラの夫。
☞フランコ・ゼッフィレッリ演出版 ミラノ・スカラ座管弦楽団
☞マウリツィオ・スカパッロ演出版(2007)バイアにてテアトロ・ディ・サン・カルロ管弦楽団&合唱団
☞ルイージ・ディ・ガンジ&ウーゴ・ジァコマッティ演出版(2019)フィレンツェ五月音楽祭劇場
☞Maurizio Scaparro演出版 サンカルロ歌劇場制作
➤シチリア島のパレルモに次ぐ第二の都市カターニャには、映画『ゴッド・ファーザー』の舞台としても有名なマッシモ歌劇場がありますが、1897年のこけらおとし後半はヴェルディの『ファルスタッフ』でした。シチリアを題材としたオペラがあるにもかかわらず、歌劇場の対象顧客は支配者層。当時イタリアの支配者は北イタリア出身のサルディーニャ家でしたし、現代でもオペラを楽しむのは富裕層や知識人階層で、『カヴァレリア・ルスカティーナ』『道化師』などに登場する庶民とはかけ離れています。
➤シチリア島は、支配者層がゲルマン(カトリック)ビザンチン(ギリシャ正教会)アラブ(イスラム)と変わり、1130年にノルマン・シチリア王国が誕生した時には、王妃は全て外国から迎え入れられ宮廷にはアラブ人やギリシア人が行きかい、12世紀ルネッサンスの震源地となりました。
76☞Pagliacci道化師(1892)レオンカヴァッロ
ゼッフェレッリ演出版(1978年上演)プラシド・ドミンゴ出演、ジェームズ・レヴァイン指揮。David McVicar演出版(2015年上演)258先に同時上演された『カヴァレリア・ルスカティーナ』と同じシチリアの村の、後の時代1948年を舞台としています。マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の成功を目の当たりにしたレオンカヴァッロが、自ら台本を書いて短期間で作曲を完成したもの。プロットは、1865年にカラブリア州モンタルトで発生し、判事だったレオンカヴァッロの父が裁判を担当した実在の事件にヒントを得たというのが作曲者の主張ですが、今日の研究によると、フランスの劇作家カテュル・マンデスの戯曲『タバランの妻』(La Femme de Tabarin, 1887年パリ初演)、あるいはスペインの劇作家マヌエル・タマーヨ・イ・バウスの劇『新演劇』(Un Drama Nuevo, 1867年マドリッド初演)からの翻案を行ったのではないかとの説が有力になってきているそうです259。
カニオ(劇中劇パリアッチョ役) 旅回り一座の座長(テノール)
ネッダ(パリアッチョの妻コロンビーナ役) 女優(ソプラノ)カニオに刺されるカニオの妻
トニオ(下男タッデーオ役) ネッダに言い寄るせむしの道化役者(バリトン)カニオにネッダの不倫を告げ口。
ベッペ(コロンビアーノの恋人アルレッキーノ役) 色男役者(テノール)
シルヴィオ 村の青年(バリトン)カニオに刺されるネッダの愛人
☞ジャンカルロ・デル・モナコ演出版(1943)2つの作品をひとつの作品として捉えた画期的な演出。
☞グリシャ・アサガロフ演出版(2009)チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱
☞ダミアーノ・ミキエレット演出版(2015)ロイヤル・オペラ管弦楽団&合唱団
☞フィリップ・シュテルツェルの演出(2015)ザルツブルグ音楽祭。ふるき良き時代のモノクロ映画をビデオ・プロジェクションで投影する手法を用いた演出。
☞ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮・監督・出演(劇中劇の観客として)
☞デル・モナコ演出版 《道化師》の間に《カヴァレリア》を挟む形で上演する一体化を試みた演出。
➤アメリカ人ジェリー(ウディ・アレン)夫妻の娘とローマで出会った弁護士男性の家族、手違いでコールガール(ペネロペ・クルス)を新妻と親戚に紹介する新婚夫、パートナーの友人の新進女優にほれ込む若手建築家、何故かパパラッチに追いかけられる平凡な男(ロベルト・ベニーニ)が登場するローマを舞台とした恋愛群像劇。
➤演出家ジェリーは現役の時は『リゴレット』では全員を白ネズミの扮装をさせたり『トスカ』では全員を電話ボックスに入れたり、前衛的な演出をしていました。大衆受けはしなかったと言っています。シャワーを浴びている時に歌の才能を発揮する娘婿の父親を『道化師』に出演させ、舞台の間中ずっとシャワーを浴びているという演出をします。(歌は大好評、演出は大不評)
➤他にもカンツオーネ風『椿姫』乾杯の歌、トゥーランドットの『誰も寝てはならぬ』などアメリカ人から見たイタリアを代表するオペラ曲が使われています。
映画『ローマでアモーレ』のオープニングとエンディングには、日本ではビールのCMなどで使われているジプシーキングスの「ヴォラーレ」として有名な、1958年に発売されグラミー賞を受賞したイタリア人Domenico Modugnoの曲「青く塗られた青の中で」261が使われています262。この曲の時にナレーションする警官はローマの実際の警官なのだそうです。
☞Volare – Domenico Modugno – Nel blu dipinto di blu
☞GIPSY KINGS “VOLARE ” | Penelope Cruz
77☞The Tempestあらし(2004)トーマス・アデス
ロベール・ルパージュ演出版(2012年上演)263トーマス・アデス指揮。Ariel役Audrey Luna、ミランダ役Isabel Leonard(『コジ・ファン・トゥッテ』『フィガロの結婚』『セヴィリアの理髪師』など)。現代オペラには少ない独創的だが華やかな演出。シェイクスピアの同名の原作を元にした現存の作曲家264の作品265。
Mirandaミランダ(メゾソプラノ)プロスペローの娘
Prosperoプロスペロー(バリトン)12年前弟に欺かれ復讐を企てる、島に住む元ミラノ大公
Arielアリエル(コロラトーラ・ソプラノ)プロスペローに魔法で使われ、船を難破させる妖精
Calibanキャリバン(テナー)プロスペローに島の主の座を奪われたと思っている怪物
Ferdinandフェルナンド王子(テナー)島に漂着し、ミランダと恋に落ちるナポリ王子
Stefanoステファノ(バス バリトン)漂着した飲んだくれの執事
Trinculoトリンキュロー(カウンターテナー)漂着した道化師
Antonioアントニオ(テナー)漂着したプロスペローの弟で現ミラノ大公
Alonsoアロンゾ王(テナー)漂着したナポリ王
Gonzaloゴンザーロ(バス バリトン)漂着した温厚な評議員
Sebastianセバスティアン(バリトン)漂流した、王位簒奪を目論むナポリ王の弟
78☞Les Troyensトロイアの人々(1860)ベルリオーズ
Francesca Zambello演出版(2013年上演)Doug Varone振付、ファビオ・ルイージ指揮、カッサンドラ役Deborah Voigt、ディド役スーザン・グラハム。木馬を残してギリシア軍が去った後、勝利を喜ぶトロイアの人々が捕虜をいたぶるバレエの演出はアクロバティックです。
題材は『トロイの木馬』で知られるウェルギリウスの壮大な叙事詩『アエネーイス』266から。
➤ギリシャの木馬作戦で敗退した後のトロイアの人々とカルタゴの人々を描いています。アエアネスを中心とした敗残兵はカルタゴを経てイタリアへ向かい古代ローマを建国します267。カルタゴを建国したとされる女王ディド268が夫(恋人)に関連して自害したエピソードを絡ませ、後にポエニ戦争269へと発展するカルタゴとローマとの確執の原因を物語にしています。ドラマの最後には、ローマ史上最高の敵と言われるハンニバル270の登場が予言されます。
➤第一部はトロイアが舞台でカサンドラが主役、第二部の舞台はカルタゴでディドが主役。両者が共に登場することはありません。
カルタゴは、中東・地中海地域のカナン発祥バアル神271に関連するメルカルト神を信仰していました。ハンニバルの名前の語源にもバアルが含まれています。
エネ(アエアネス)テノール:トロイアからカルタゴにたどり着き女王と恋に落ちる英雄。カルタゴとヌミビアの戦争に加勢し勝利するも、トロイア再興のため女王を捨てカルタゴを後にする。
カサンドル(カサンドラ)ソプラノ:トロイアの王女、勝利に酔うトロイで不吉を予言するも聞き入れられず、トロイアを脱出できなかった女性達と集団自決。
ロレーブ(コロエブス)バリトン:小アジアの王子、戦死するカサンドラの婚約者。
ディド(ディドン)メゾソプラノ:アエアエスと恋に落ちるカルタゴの女王。アエアエスに捨てられ自害。
プリアム(プリアモス)バス:戦死するトロイアの王。
アンナ コントラルト:女王の再婚相手として勇者がみつかり喜ぶディドの姉妹 。
ナルバル バス:女王が恋に落ち、公務が滞っているため心配するディドの高官 。
☞『ヘレン・オブ・トロイ』(1956)
☞『トロイ』272(2004)トロイの木馬の神話に着想を得たフィクション。主人公アキレス役ブラッド・ピットとヘレン役ダイアン・クルーガーは、クエンティン・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』で共演しています。パリス役はオーランド・ブルーム
☞『ガーディアン ハンニバル戦記-ローマ帝国の悪夢』
☞『バーバリアンズ・ライジング~ローマ帝国に反逆した戦士たち~ 【HISTORY】(吹替版)』1.カルタゴの将軍 ハンニバル ローマ帝国に敵対した蛮族(バーバリアン)の視点で描くシリーズ。地中海を二分勢力であるローマとその将軍スキピオ273と、カルタゴのハンニバル274の戦略を、現代の各界の専門家が分析しています。象を使った戦闘で有名ですが、弟ハスドルバル・バルカ275と進軍したアルプス越えでは36頭の象は4頭に減りました。まさかアルプスを越えると予期していなかったローマ軍に大勝し276たものの、その後の数々の戦いや交渉で最終的にはカルタゴ・バーバリアン連合軍が敗北しました。ハンニバルと闘ううちにローマ軍自身がその戦術を身に着けたことが、その後のローマの各地併合の戦争に勝ち強大な国家になっていったといいます。
79☞La Sonnambula夢遊病の女(1831)ベッリーニ
Mary Zimmerman演出版(2009年上演)277片足を現実に、片足を夢の世界に(元の設定どおりのスイスの村を舞台とした出し物の練習をする現代のリハーサル・ルーム)おくような演出。➤「私は話を現実的に登場人物を実在の人物らしくみせる表現の可能性を探したかったんです。その理由のひとつはこのオペラではドラマチックな挑戦などの動きはないんです。特別なことはおこりません。でも、この演出でオペラに深みを加えることができたと思います。」
➤「夢遊病者と役者はよく似ているところがあります。役者は2つの世界に足を置いています。彼らは夢遊病者のようにイメージの世界を作り出し入り込んでいます。それが想像上の世界であるにもかかわらず。彼ら(観客もそうですが)はステージパフォーマンス中で、いつも、いわば夢遊病者を鏡に映したようなふたつの意識が存在しているのです。」
➤「役者が『夢遊病の女』を歌いながら『リア王』のリハーサルを行っている。」もしこれが複雑に聞こえるなら観客の資格はありません、とMary Zimmermanは冗談をいいます。「なぜ彼らがそんなことをしているのか追跡し理解するのは難しいでしょう。でも、『夢遊病の女』を歌いながら『夢遊病の女』のリハーサルを行っている、これこそが夢遊病です」
➤Mary Zimmermanの元々の原案は、本来のスイスの田舎のセットでした。田舎風の衣装、ホットココア。ステージ上のアイススケート場をつくるというアイデアさえありました。でも「ある別のオペラの仕事をしているときに、ここに本当の『夢遊病の女』があるじゃないかと思い至りました。“これは、最高のオペラじゃない、唯一のオペラなんだ!他のと同じことをしちゃいけない” 私はこの考えにとりつかれ、大事なことだと思うようになりました」
➤一旦、リハーサルルームのアイデアが決まると、彼女とセットデザイナーのDaniel Ostlingには、楽譜立てを木に見立てたり、幽霊が登場するシーンには舞台照明がチカチカしはじめるなど、リハーサルルームでみなれた物がオペラの世界のコインの裏側のように発想されるようになりました。
➤最も重要なアイテムは衣装デザイナーのMara Blumenfeldが主人公にはかせた小さな緑のリハーサルシューズかもしれません。それを履いている時は彼女はリハーサル中のオペラの世界にいますが、脱いだ時にはリハーサルとは関係のない世界にいます。同じことはエルヴィーノ役のFlórezが被っているチロリアン・ハットにも言えます。コーラスもリハーサルルームとスイスの村でそれぞれアクションが関連しています。「私も最初は明白には気が付いていませんでしたが、リハーサルルームのコミュニティって公演の期間だけのつきあいですが、すごく小さくて濃密なんです」演出家はMETの合唱団の人間関係や個々の人格もつ人々と一緒に仕事をします。リハーサル中に仲良くなった女性は演出を超えて仲良くするように、Zimmermanの舞台上で友達になった人は現実の世界でも同じように友達になりました。
➤演出家の他の目標は物語をリアルに、本当にありそうな様子に感じさせることですが、この『夢遊病の女』のアプローチではセットがあまりにも出演者にとって慣れ親しんだものだったので、’いかにも’っぽくなるという副産物がありました。「リハーサルでは、わざと演技しなくても演技を超えた瞬間が度々ありました。美しく複合的な音楽とリハーサルルームの日常的な雰囲気のコントラストのせいかもしれませんし、リハーサルルームでは歌い手が本当にリラックスして快適だったのかもしれません。時代物の衣装やカツラといった慣れない大げさなものはありませんでした。彼らがお互いに音楽だけの方法でやりとりできるのは本当に、本当に美しいものです」
アミーナ(ソプラノ)- 孤児だが、テレーザの娘として育てられ、エルヴィーノと婚約。(この演出では看板女優の様子)
テレーザ(メゾソプラノ)- 水車小屋の主、アミーナの育ての母。(この演出では演出家などの重要なスタッフの一人の様子)
エルヴィーノ(テノール)- 村の裕福な地主。(この演出では看板俳優の様子)
リーザ(ソプラノ)- エルヴィーノに恋する宿屋の女主人。(この演出では演出家などの重要なスタッフの一人の様子)
ロドルフォ伯爵(バス)- 村の領主。(この演出ではスポンサー、監督、大役者などの最も重要な人物の様子)
80☞I Puritani清教徒(1835)ベッリーニ
I PSandro Sequi演出版(2007年上演)アンナ・ネトレプコが高音まで歌います。
原作はジャック=アルセーヌ・フランソワ・アンスローとジョゼフ=グザヴィエ・ボニファスの戯曲『議会党派と王党派』。 17世紀イギリスの市民革命を舞台に、ヒロイン、ピューリタン(議会)派の父が決めた婚約者、王党派の恋人が登場する恋愛劇278。王妃を救出する恋人を誤解してヒロインが発狂して歌う“狂乱の場”が有名。5月16日に配信されたドニゼッティの『ランメルモールのルチア』も“狂乱の場”が有名ですが、『清教徒』では、最期にヒロインは正気に戻ります。27933歳で亡くなったベッリーニの遺作。
ピューリタンのファッションは白いレースの襟が特徴です。カトリックの豪奢や腐敗に反対して生まれたプロテスタント(=ピューリタン=清教徒)は、オランダで発展し清貧を旨としました。ただ、貿易で裕福になる連れてファッションも豪華になりますが、これまでのカトリック系のように見た目の華美さよりも、レース細工の技術など手の込んだおしゃれが流行しました。ぱっと見に見えないところに凝って「粋」とする江戸ファッションのようです280。男性は黒っぽい服ですが、白の襟や袖にはレースがあしらわれています。女性はリボンなどの装飾の少ない彩度低めのパステルカラーのドレスにレースをあしらった白襟です。登場人物のファッションの色やレースの様子から、演出家や衣装デザイナーの解釈や、モデルとなった人物やドラマの歴史的背景を推測するのも面白い鑑賞視点かもしれません。
グァルティエーロ・ヴァルトン(バス)イギリスの貴族、清教徒
エルヴィラ(ソプラノ)恋人アルトゥーロと王妃の仲を誤解して正気を失うヴァルトンの娘
ブルーノ(テノール)士官、リッカルドの親友
アルトゥーロ(テノール)王に仕え王妃の逃亡を手助けする騎士、エルヴィラの婚約者。王党派と清教徒派の間で悩むが、王党派の敗北と恩赦により最期は恋人と結ばれる
リッカルド(バリトン)清教徒派の大佐、アルトゥーロを殺そうとするが、最終的には助ける恋敵
ジョルジオ(バス)姪が恋人と結婚できるようヴァルトンを説得したエルヴィラの伯父、退役大佐
エンリケッタ:清教徒派にとらわれている王妃。花嫁のベールを被り変装して逃亡。モデルは処刑されたチャールズ1世のフランス出身の王妃ヘンリエッタ・マリア・オブ・フランス
81☞Luluルル(1979)ベルグ
William Kentridge演出版(2015年上演)281
黒人が白人警官の拘束により死亡した事件を受けて、ブラック・アウト・チューズデイとして、音楽界などがウェブサイトを黒く表示して黒人差別に抗議する運動が広まりました。METも参加し6月3日のNight Stream配信はブラック・アウトされ、オペラの映像が配信される時間は変更されました。
スーザン・グラハム出演。
William Kentridgeは同じベルグの56☞『ヴォツェック』も演出。同様に映像を駆使した演出です。
原作は「ルル二部作」と呼ばれるフランク・ヴェーデキントの戯曲『地霊』(Erdgeist, 1895年)と『パンドラの箱』(Die Büchse der Pandora, 1904年)。
以下、※は同一人物が演じる。下線は死んでしまう登場人物。
猛獣使い Ein Tierbändiger/(バス※1)プロローグでサーカスの猛獣を紹介。最後にへびとしてルルを紹介。
ルル Lulu(ソプラノ)魅了された人々が次々と死ぬ魔性の美女。
シェーン博士 Dr. Schön(バリトン※2)貧民街からルルを拾い愛人関係を持ちながら医事顧問官と結婚させる。婚約者と別れルルと結婚する。嫉妬でルルに自殺を迫るが逆に射殺される。
医事顧問官 Der Medizinalrat(※3)ルルと結婚。画家が言い寄るのを見て心臓発作で死ぬ。
画家 Der Maler(テノール※4)ルルと結婚。ルルの過去を知りショックで自殺。
アルヴァ Alwa、作曲家(テノール)ルルに恋するシェーン博士の息子。売春婦になったルルの黒人客に嫉妬しもめごとになり殺される。
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢 Gräfin Geschwitz(メゾソプラノ)ルルに恋し脱獄や軽業師の始末を手伝う同性愛者。ルルと一緒に切り裂きジャックに殺される。
シゴルヒ Schigolch(バス)ルルに金をせびる過去に関係があった老人。
男軽業師ein Athlet(バス※1)シゴルヒに始末されるルルの取り巻き。
王子・中学生 ルルの崇拝者。侯爵 der Marquis カイロの高級娼婦の口入屋。
教授 Der Professor(※3)黒人 ein Neger(テノール※4)ルルの客。
切り裂きジャック Jack the Ripper(バリトン※2)ルルの客。ルルとゲシュヴィッツ嬢を殺す。
Alban Berg: Lulu ジェームズ・レヴァイン指揮。 Brian Large, John Dexter (監督)
lulu’ dvd Italian Import by udo kier Anne Bennent (出演), Walerian Borowczyk (監督)
ベルク 歌劇《ルル》全曲 (2004)グラインドボーン・フェスティバル・オペラ
ロイヤル・オペラ(2010)Antonio Pappano (出演), Agneta Eichenholz (出演)
『ルル』3幕版全曲(2010) ネミロヴァ演出、M.アルブレヒト&ウィーン・フィル
Berg: Lulu [DVD] [Import](2010)Olivier Py (監督) リセウ劇場、成人指定上演の演出。
Lulu(2012)Cora Burggraaf (出演),Daniel Richterの絵画による演出
Lulu(2012)サイバーパンク風のけばけばしい演出。
アルバン・ベルク:歌劇《ルル》(2015)シンプルかつモダンなチェルニアコフ演出。
Alban Berg: Lulu (2015)Mojca Erdmann (出演), Andrea Breth (監督)
ゲオルク・ヴィルヘルム・パープスト監督、ルイーズ・ブルックス主演で1929年に映画化されています(パンドラの箱 (映画)。
Lulu in Lulu – Das Musicalとしてミュージカル化もされているようです。282
82☞Orfeo ed Euridiceオルフェオとエウリディーチェ(1762)グルック
Mark Morris演出版(2009年上演)ジュエームス・レヴァイン指揮283、エウリディーチェ役はDanielle de Niese。オフフェオ役はカストラートの男性が歌うこともありますが、この版では、メゾソプラノのステファニー・ブライスが演じています。284
このオペラの主要な登場人物は3人だけですが、大勢のコーラスが登場します。演出家で振付師のMark Morrisは「彼らはオルフェオの冒険に巻き込まれたんです」といいます。ファッション・デザイナーのIsaac Mizrahiは、コーラスのユニークな衣装を創作し古今東西の歴史上の人物に返信させました。クレオパトラからジョージ・ワシントンやマリア・カラスまで。グルック自身さえ登場します。観客に面して3つのバルコニーに立つ人々はオルフェオの物語を映し出しています。
ギリシャ神話のオルフェオとエウリディーチェの物語と、現代の若い恋人たちを、愛の女神と歴史上の人物たちが見守る構図になっています。
グルックをはじめオルフェウスの神話は様々なオペラや楽曲にインスピレーションを与えています。グルックは「オペラの改革者」として有名ですが、『オルフェオとエウリディーチェ』は、18世紀初頭に多かった技術誇示や複雑なプロットをそぎ落とし、観客がより深くドラマに入り込めるように音楽的で直接感情に訴えかけるようなものに変革されました。なお、グルックはマリー・アントワネットの音楽教師としても知られています。
オルフェオ:(カストラート)エウデリーチェの夫。愛の神に黄泉の国から妻を戻す条件として後ろを振り返らないことなどを約束するが、妻が立ち止まるので振り返ってしまう。息絶えた妻を追って自殺しようとしたところ、愛の神に「お前の愛の誠は十分示された」と告げられ、妻が復活する。
エウデリーチェ:(ソプラノ)オルフェオの妻、説明もせず自分を見ようとしない夫を疑う。
愛の神(ソプラノ)
83☞The Exterminating Angel皆殺しの天使(2017)トーマス・アデス
Tom Cairns演出版(2017年上演)285トーマス・アデス286本人指揮、演出家は台本も担当。『テンペスト』でアリエル役を演じたAudrey Lunaがレティシア役、ズボン役が多いアリス・クーテがレオノーラ役で出演。英語による上演。
ルイス・ブリュニエルが監督したメキシコを舞台にした1962年の不条理劇映画287をオペラ化
下記登場人物の( )はこの公演での衣装。
ルーカス、メニ、カミラ:晩餐会の前に逃げ出す下僕や召使。
ノビレ夫妻の邸宅に集まった以下の客達がなぜか出ることができなくなり、正気を失っていく不条理劇288
フリオ: 執事。(白い手袋)
エドムンド・ノビレ、㊛ルシア・ノビレ: オペラ鑑賞後の晩餐会に客を招待した邸宅の主人夫妻。(濃いピンクのドレス)
アルバロ・ゴメス大佐:ルシアの愛人。
㊛ベアトリス、エドワルド:婚約しているカップル。(水色のドレス)
㊛ブランカ: ピアニスト(青緑のドレス)
アルベルト・ロック: ネクタイを寛げ眠りこける指揮者。ブランカの夫。
カルロス・コンデ: 壮年の医師。(白いあごひげで恰幅のよい紳士)
㊛レオノーラ: コンデ医師といちゃつく患者。末期ガン。(緑のドレスで白髪)
セルジオ・ルッセル:年配で事件の間に息を引き取る男性客
ラウル・イェベネス:男性客、フランシスコ・アビラ: 若い男性客。
㊛シルヴィア: 女性客(薄いピンクのドレス)㊛レティシア: 女性客(クリーム色コンビドレス)
㊛シルビア: 歌手。(薄いピンクのドレス)
84☞Bluebeard’s Castle青ひげ公の城(1918)バルトーク
Mariusz Trelinski演出版(2015年上演)あまり上演されない1幕のオペラをスリリングに演出290,291。
原作はシャルル・ペローの『青髭』に基づくメーテルリンクの戯曲。グリム童話にも同様の話が収録されています。
青ひげのモデルはにはジャンヌ・ダルクの戦友で多くの少年への凌辱と虐殺に性的興奮を得て犠牲にしたと伝えられているジル・ド・レ、6人の妻と結婚したヘンリー8世、千夜一夜物語に登場する性的好奇心の強い妻を殺害した暴君シャフリヤール王などの説があります。292
バルトークの作品は、原童話とは大して関係なく、人生そのものを表した寓話であり、彼の他の作品同様「男女関係の絶望的状態」にまつわる物語と指摘する研究もあります293。
青ひげ(バリトン)新婚の妻と城に到着し、次々と部屋の扉を開ける妻に鍵を渡す夫。
ユディット(ソプラノ)7つの扉を次々と開け、最期の部屋で「夜」として他の妻たちと同化する、青ひげの新妻。
青ひげの妻達(歌唱なし)最後の部屋にいる「夜明け」「真昼」「夕暮れ」を支配する美女たち。
プロローグの語り部:この物語は、瞼で分けられた内側と外側、つまり自分自身と他人との関わりのお話。そして我々、あるいは自分自身の人生についての物語と語る。
他にも翻案等で、青ひげとその童話を主題としている作品は以下のようなものがあります。
- アンドレ・グレトリ:オペラ『青ひげラウル』(1789年)
- ジャック・オッフェンバック:オペレッタ『青ひげ』(1866年)フランスが舞台の喜劇
- ポール・デュカス:オペラ『アリアーヌと青髭』(1907年)
- エミール・フォン・レズニチェク:オペラ『騎士青ひげ』(1920年)
- クロード・シャブロル監督による映画化作品(1963年)
- 寺山修司:戯曲『青ひげ公の城』バルトークのオペラを元にした作品。
85☞Hansel and Gretelヘンゼルとグレーテル(1893)フンパーディング
Nathaniel Merril監督、Robert O’Hearnデザイン版(1982年12月25日上演)洗練された演出でオペラに魔法をかけます。クリスマスの、子供や生粋のオペラファンでない観客も意識したと思われる英語上演。オンデマンド映像は、序曲中、デザイン画と思われるメルヘンなラフスケッチが映像編集され、現場とは違った導入となっています。
➤魔法使い役メゾソプラノのロザリンド・エリアスは、わずか23歳でのMETデビューより42年間にわたり、687回54種類の役を歌いましたが、2020年5月に亡くなりました。カルメン、モーツァルト『コシ・ファン・トゥッテ』のドラベラ、モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ、他ズボン役として『ヘンゼルとグレーテル』のヘンゼル、モーツァルト『フィガロの結婚』のケルビーノ、シュトラウス『ばらの騎士』の騎士オクタヴィアンなどをしばしば割り当てられました294。Richard Jones演出版(2008年1月1日上演)295。グリム兄弟の原話の恐ろしさを取り入れながらも、太ったシェフや魚頭の給仕、METの舞台で今まで見たことのないような最高のごちそうでいっぱいの、愉快でイカレた演出。英語で歌われるファミリー向け要約版の舞台ですが、感情的で童謡調のメロディが混ざったフンパーディングの甘くておいしい音楽と、熱々の大オーケストラ演奏が次から次へと提供されるコースのお味はそこなっておりません。
森のシーンは、葉模様の壁紙の部屋に、木頭人物で表現。魔女はテナーによってひょうきんに演じられます。
➤ヘンゼル役は、ズボン役といわれる女性メゾソプラノが演じますが、アリス・クーテ296が子供らしさ全開で好演。グレーテル役はChristine Schäfer297,298
大英帝国の勲章ももつ1968年生まれのイギリス人歌手アリス・クーテは、マスネの『シンデレラ』でズボン役としてチャーミング王子を演じている他、モーツアルトの『イドメネオ』でもイダマンテ王子を演じています。変わったところでは『皆殺しの天使』で、がんに侵された老婦人を演じています。➤グレーテルは、オペラ中最年少のヒロインと言われます。恋愛中のカップルではなく子供たちが主人公のオペラだけあって、悲壮感ただよう絶唱や、自己陶酔気味の歌いこみはなく、他愛のない遊びやお祈りやケンカなど可愛くほほえましい二重唱が多いです。フンパーティング299はワーグナーに師事したドイツの作曲家で、歌唱を重視したイタリア・オペラのスタイルではなく、オーケストラと物語性を重視したスタイルはワーグナー譲りといえます。
ヘンゼル(メゾソプラノ)、グレーテル(ソプラノ)森で迷って魔女に食べられそうになるが、機転を利かせて魔女を退治し、両親と再会する兄妹。
ゲルトルート(メゾソプラノ)留守中遊んでばかりで最後に残ったミルクも割ってしまった兄妹を叱って、森へイチゴを摘みに行かせる母。
ペーター(バリトン)森に魔女がいることを妻に知らせ、二人で子供たちを探しに行く箒職人で兄妹の父。
眠りの精(ソプラノ)兄妹を眠りにつかせる森の妖精。
露の精(ソプラノ)兄妹の目を覚まさせる森の妖精。眠りの精と同じ歌手によって演じられる場合もある。
お菓子の魔女(メゾソプラノ)魔法でおびき寄せた子供たちを捕まえ食べてしまおうとするが、逆に退治される悪い魔女
“Hansel and Gretel” MET1982 Nathaniel Merril監督、Robert O’Hearnデザイン版
Hansel and Gretel: Act I Duet MET2017年 Richard Jones演出版
Hänsel und Gretel: Act 1 Clip 2008年グラインドボーン音楽祭
Brother, come and dance with me from Hansel and Gretel (Lockdown special)
☞ロラン・ペリィの現代的演出(2008年)グランドボーン音楽祭。大野和士指揮。
☞エファーディング演出版オペラ(2009年)ショルティ指揮。序曲の間に子供たちが演奏会場に集まり、映画仕立てのオペラが始まるユニークな演出。
☞ヘンゼルとグレーテル(2008年)韓国産のファンタジック・ホラー映画。
☞ウィッチスレイヤー/捕われのグレーテル(2012年)大人になったヘンゼルが相棒と共にグレーテルを探す旅をしています。
☞ヘンゼル&グレーテル(2013年)301大人になった兄妹が魔女ハンターとして各地の魔女を倒す賞金稼ぎになっています。素手の他、武器や魔法を使ったファイト・アクションが満載で、走りながら敵を倒してすすんでいく様子や機関銃で敵を打ち取っていく様子はゲーム画面のようです。ヘンゼルは魔女にお菓子をたくさん食べさせられたせいで糖尿病との設定、度々インシュリン注射を打たなければなりません。
☞ヘンゼルとグレーテル 恐ろし森の魔女(2013年)B級スプラッタ・ホラー。
☞グレーテル&ヘンゼル 呪いの森の魔女(2014年)カリフォルニア在住のドイツ系の兄妹が主人公。ドラッグを恋人に買いに行かせる妹や、カメラおたくで童貞の兄が登場。ハーブ売人の魔女は、MIB2でセクシーな異星人を演じたララ・フリン・ボイル。ファンタジー・ホラーですが、スプラッタなシーンもあります。302
☞ラスト・ウィッチ・ハンター(2015年)303800年前に不老不死の呪いをかけられた魔女ハンターが魔女の女王と闘うストーリー。マイケル・ケイン304(『デンジェラス・ビューティ』『キングズマン』など)出演。
86☞The Ghosts of Versaillesヴェルサイユの幽霊(1983)ジョン・ココリアーノ
Colin Grahama演出版(1992年上演)306。ジェームズ・レヴァイン指揮、ロジーナ役ルネ・フレミング。
Metの100周年記念としてジョン・ココリアーノ307に依頼された、ホフマンの台本を原作とした大規模なオペラ喜劇。ルイ16世308や妃のマリー・アントワネット、脚本家ボーマルシェやその作品『フィガロの結婚』『セビリアの理髪師』『罪ある母』の登場人物、309の幽霊が登場するドタバタ劇。英語上演。
マリー・アントワネットが自分の最後を回顧する序幕では、ランバル侯夫人を思い起こさせる槍につく指された生首や幽霊たちのぎこちない動き、赤い目隠しを持って近づく骸骨(ムッシュー・ドパリ=サンソン=首切り人の象徴か)など不気味な演出です。
王夫妻や貴族達の幽霊が鑑賞する、ボーマルシェのオペラがはじまると、一転して、明るいオペラのおなじみの音楽のフレーズや、中年になったフィガロとスザンナ夫妻が登場する楽しいオペラのシーンとなります。
途中からは、オペラ中の登場人物や史実の幽霊たちが入り乱れて進行します。
革命のさ中をフィガロ達アマルヴィーヴァ一家は英国に亡命し、マリー・アントワネットは史実どおり処刑されることを望み、ボーマルシェとあの世で結ばれる結末です。
【幽霊たち】
マリー・アントワネット(ソプラノ)自分の悲惨な最期を嘆くが、ボーマルシェのオペラを観て生きたいと思う。小道具に首飾りを貸す。ボーマルシェの愛を知り、最終的にあの世で結ばれる。
ルイ16世(バス)貴族や妃と共にオペラを鑑賞。
おしゃべりな女たち(ソプラノ、メッゾ・ソプラノ)王夫妻や貴族たちと共にオペラを鑑賞。
フランス貴族たち(ルシエンヌ:ソプラノ、ダイアン:アルト、司教:テノール、ヨゼフ:バス)
ピエール・オーガスティン・ドゥ・ボーマルシェ(バリトン)フランス王夫妻や貴族の幽霊たちのためにオペラ上演。マリー・アントワネットを愛する劇作家で、オペラで史実を変えようとする。
【上演されるオペラおよび過去のボーマルシェの作品の登場人物】『S;セビリアの理髪師』『F;フィガロの結婚』『G;罪ある母』
フィガロ(バリトン)S,F,G;アルマヴィーヴァ伯爵の下僕。トルコ大使館のレセプションの踊子に変装して組飾りを手に入れ、ベジャールスのたくらみを妨害しようとする。伯爵やスザンナが逮捕されると、死神に変装してベジャールスを出し抜き、主人一家と妻スザンナを牢獄から救い出す。
スザンナ(メッゾ・ソプラノ)F,G;フィガロの妻。
アルマヴィーヴァ伯爵(テノール)S,F,G;マリー・アントワネットの組飾りを売って資金化し、新大陸に逃がそうとするスペイン大使。『罪ある母』の筋書き同様、レオンをよく思っていないので娘フロレスティンとベジャールスを婚約を決めるが、最終的に妻と和解し子供たちの交際を許す。
ロジーナ(ソプラノ)S,F,G;アルマヴィーヴァ伯爵夫人。レオンの母。レオンの父はケルビーノ。
フロレスティン(ソプラノ)G;アルマヴィーヴァ伯爵の不倫の末に産まれた娘でレオンの恋人。
レオン(テノール)G;ロジーナとケルビーノの間に産まれた息子でフロスティンの恋人。
パトリック・オノレ・ベジャールス(テノール)G;アイルランドの陸軍大佐。実は王党派ではなく改革派で、トルコ大使館のレセプションで英国大使に首飾りを売ろうとしているアマルヴィーヴァ伯爵を裏切り、逮捕させようと画策。
ウィルヘルム(演技のみ)ベジャールスの下僕。最後には主人に嫌気がさしフィガロに味方する。
ケルビーノ(ソプラノ)F;ロジーナの回想に登場する不倫相手。昔アルマヴィーヴァ伯爵の小姓であった(『罪ある母』では若くして戦場で亡くなったとされている)
シュリーマン・パシャ(バス)トルコ大使、パシャの小姓(演技のみ)、イギリス大使(バス)
サミラ(メッゾ・ソプラノ)トルコ大使館のレセプションで歌うエジプトの歌姫。
エジプトのヴァイオリニスト(ヴァイオリンのソロ演奏)
87☞Rodelindaロデリンダ(1725)ヘンデル
Stephen Wadsworth演出版(2011年上演)タイトルロールはルネ・フレミング。悪役ガリバルド役はメトロポリタン歌劇団ヤング・アーチスト養成所出身の中国人バス沈洋(シェン・ヤン)310。エドゥイジェ役は大柄なステファニー・ブライズ(『オルフェオとエウリディーチェ』『連隊の娘』『シンデレラ』など)
ヘンデル20代後半の作品。『アグリッピナ』の1年につくられました。アントニオ・サルヴィの原作にもとづき、ニコラ・フランチェスコ・ハイムによって台本が書かれました。同じ原作でジャコモ・アントニオ・ペルティが1710年にオペラを書いています。また、テレマンのオペラ『フラヴィウス・ベルタリドゥス』も同じ話をもとにしています。311
ヘンデルの時代はカストラート(去勢して男性ホルモンを押さえ変声期後も高音を保った男性歌手)312が、オペラのアリアを歌うことがブームでした。元々、教会音楽から発展したオペラですが、女性が教会の中で声を出すことを禁止されており聖歌の高音はボーイソプラノにより歌われていました。『ロデリンダ』のベルタリードとウヌルフォもカストラートが歌っていましたは、今日は、男性のハイボイスであるカウンターテナーによって歌われることが多いようです。
88☞Gluck’s Iphigénie en Taurideトーリードのイフジェニー(1779)グルック
Stephen Wadworth演出版(2011年上演)313。スーザン・グラハム、プラシド・ドミンゴ出演。雰囲気のある演出。
舞台となるトーリード(タウロイ、タウリカ)は、黒海北部のスキタイ系民族が在住していた土地でで、ヘロドトスは『歴史』に、314漂泊したり捕虜になったギリシア人を処女神イフジェニーに捧げる習慣を紹介しています。
89☞Samson et Dalilaサムソンとデリラ(1877)サン=サーンス
Darko Tresnjak演出版(2018年上演)Elīna Garanča、Roberto Alagna出演。
ダーコ・トレスンジャック監督、セットデザイナーのアレクサンダー・ダッジ、衣装デザイナーのリンダ・チョーは長年一緒に仕事をし、ブロードウェイのスマッシュヒット「愛と殺人の紳士ガイド」でトニー賞を受賞。(トレスンジャック、チョーが受賞、ダッジはノミネート)プライベートでも仲が良いそうです。おそらく、ユーゴスラビアで生まれ青少年時代を米国やポーランドで過ごしたトレスンジャックと、韓国で生まれカナダと米国で育ったチョー、ドイツ人ハーフのダッジは、3人ともいわば正真正銘の異文化視点を持っているからだと、トレスンジャックは言っています。
聖書のサムソンとデリラは、欲望と情熱、暴力、復讐の物語はその普遍性から時代をとおして語り継がれてきました。
舞台は現在のパレスチナの首都ガザ315で、紀元前12世紀はじめ頃から地中海沿岸の海の民の一部が住み着きペリシテ316(パレスチナの語源)人と呼ばれるようになりました。古代にこの辺りに住んでいた遊牧民族ヘブライ人(渡り歩く人の意317)は17世紀頃の気候変動が原因でエジプトに移住し奴隷などになっていましたが、同じころ再度の気候変動によりエジプトからパレスチナの地に移動して来ました。聖書ではモーゼの出エジプトの記述がこれにあたりこの地域はカナンの地(約束された土地の意)とよばれます。ヘブライ人にとって先祖のふるさとに帰ってきたかもしれませんが、ペリシテ人やカナン人(フェニキア人と考えられる)が既に居住しており、そちら側の視点でみれば侵略者にあたります318。長期にわたる拮抗の末、同化しイスラエル人と名乗るようになりました。
サムソン(テノール)デリラに誘惑され自分の力の秘密を漏らすヘブライ人。神に背いたことを悔い命と引き換えに同胞を救うことを願う。ペリシテ人の祝いの場に引き出され愚弄されたサムソンが寺院の柱をゆすぶると寺院が崩壊し一同を押しつぶす。
デリラ(メゾソプラノ) サムソンを誘惑し力の秘密を聞き出すペリシテ人
ダゴンの大祭司(バリトン)デリラをたきつけるペリシテ人の神ダゴンの司祭
ガザの太守アビメレク(バス)ヤハヴェの神を愚弄したためサムソンに襲われ殺されるペリシテ人
ヘブライの長老(バス)
第1のペリシテ人(テノール)
第2のペリシテ人(バス)
ペリシテの使者(テノール)
90☞The Nose鼻(1930)ショスタコーヴィチ
ウィリアム・ケントリッジ演出版(2013年上演)319320
ゴーゴリの同名の小説が原作321
プラトン・コワリョフ(バリトン)ヤレコヴィチの床屋に行った翌朝、鼻が無くなったことに気づく7等官。大聖堂で鼻を見つけるが逃げられ、警察分署長は不在、新聞掲載は断られる。刑事に返された鼻がくっつかず、婚約者親子にもすげなくされるが、ある朝突然鼻が戻り喜ぶ。
イワン・ヤコヴレヴィチ(バス)パンの中から鼻が出てきて始末に困る床屋の主人 。川に捨てようとし警官にとがめられる。
プラスコヴィア(ソプラノ)鼻を捨ててくるように怒るヤコヴレヴィチの妻 。
警察分署長(テノール)不法投棄など街中をパトロールしヤレコヴィチに声をかける。
イワン(テノール)コワリョフ不在中にバラライカを演奏するコワリョフの従僕 。
鼻(テノール)逃げ出した後、駅へ駆け込み逮捕される。街で噂になる。
ポットチナ夫人(メゾソプラノ)コワリョフに娘との結婚を断る将校の妻 。
ポットチナ夫人の娘(ソプラノ)コワリョフにどうしようもないと手紙の返事を書く婚約者。
新聞社の広告係(バス)忙しいので鼻捜索の掲載を断るが、体験記を売り込むことを勧める。
医者(バス)戻った鼻をコワリョフにつけようとするが断念する。
The giant tap-dancing noses scene from Shostakovich’s The Nose (The Royal Opera)
91☞Francesca da Riminiフランチェスカ・デ・リミニ(1914)ザンドナーイ
☞Piero Faggioni演出版(1984年上演)sets by Ezio Frigerio and costumes by Franca Squarciapinoによるエレガントで美しい演出。ジェームズ・レヴァイン指揮。レナータ・スコット、プラシド・ドミンゴ出演。侍女たちのドレープをたっぷりとった衣装や豪華なファブリックは中世絵画さながらです。Piero Faggioni演出版(2013年上演)緑生い茂る城での悲劇に仕上げています。
ダンテ322の『神曲323』に登場する13世紀イタリアの実在カップルを題材にしています。
ラヴェンナの領主ポレンタ家の一人娘フランチェスカ324はリミニの領主の御曹司ジョバンニ(通称ジャンチョット)と政略結婚させられます。その弟で美男のパオロと恋をします。オペラでは、弟が醜い兄の身代わりに迎えに行って出会ったことになっていて、フランチェスカは結婚式の朝まで夫本人を知らなかったことになっています。史実ではパオロにも既に妻子があり言わばダブル不倫の状況でした。
オペラではもう一人の弟マラテスタが密告したことになっていて、ダンテ『神曲』の中でも2人の人物を暗殺した残忍な性格に描かれていますが、史実の根拠はありません。
二人の不倫が発覚し、ジョバンニに殺害されたところまでを描くオペラです。
ダンテはフランチェスカの父に招かれラヴェンナに寄宿していました。パオロとも合ったことがあるそうです。『神曲』ではフランチェスカは情欲の地獄に登場しますが同情的な問いかけをしています。キリスト教的には姦通は罪ですが世話になっている恩人の娘を悪く書けないのかもしれません。
ダンテの賛美者であった『デカメロン』のボッカチオ325が、フランチェスカが騙されて結婚したエピソードを付け加え、更にロマンチックな恋物語として紹介しました。
この事件から40年後、息子達の時代に従兄弟同志の覇権争いの口実となります。パオロの息子ランベルト326が、親の仇討として、食事会と称し従兄弟ウンベルト(ジョバンニの子)を招き殺害します。数年後、ランベルト抜きに君臨していた従兄弟フェランティーノ(マラテスタの子)やマラテスタ2世(もう一人の兄弟の子)を殺害しようとまたしても食事会に招きます。マラテスタ2世は参加せず、フェランティーノは息子の嫁ポレンティザーナがリミニの人々や実家のポレンターノ家を率いて解放させ、知らせを聞いて駆け付けたマラテスタ2世軍と合流しランベルトを辺境の城に追いやりました。枢機卿の介入で和解したものの、さらに数年後、またもや、ランベルトは弟や他地域の敵対一族などと手を結んで暴動を起こし、失敗します。ランベルトの度重なる陰謀や暴動にうんんざりしたフェラランティーノの子マラエスティーノ・ノヴェロは、狩りにランベルトを誘います。到着したとたんランベルトは膝を屈して許しを乞いますが、すぐに殺されました。
92☞Wozzeckヴォツェック(1825)ベルグ
William Kentridge演出版(2020年上演)映像を駆使した現代美術家ウィリアム・ケントリッジは、☞『The Nose鼻』(1930)ショスタコーヴィチや☞『Luluルル』(1979)ベルグも演出しています。
第一幕第一場:本来ならヴォツェックは大尉の髭を剃っている部分では、大尉にスライド投影を見せているシーンとしていおり、演出家自身の作品を投影しています。子供は人形で表現されており、人形遣いが動かします。
原作は、実際に怒った殺人事件を元にしたゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲『ヴォイツェック』。ドイツ人のビューヒナーは医師の息子で文学者、享年23歳、病死。彼の功績を記念して出身地のヘッセン大公国327でスタートしたゲオルグ・ビューヒナー賞328は、現在のドイツで最も権威ある文学賞とされています。
ライプツィヒに実在したヨハン・クリスティアン・ヴォイツェック329は、1821年41歳の時、5歳年上の愛人ヨハンナ(作中ではマリー)を刺殺しました。それまでの言動や証言から裁判では精神鑑定が行われましたが、責任能力が認められ死刑と判決されました。1824年にライプツィヒでは30年ぶりで史上最後となる公開処刑が行われました。
ヴォツェック(バリトン)生活の足しに医者の実験台のアルバイトをしている貧しい兵卒。子まで成した内縁の妻マリーを刺殺。凶器のナイフを池に投げ捨て自分も池に入り溺れ死ぬ。
鼓手長(テノール)マリーの愛人、マリー(ソプラノ) ヴォツェックの内縁の妻
アンドレス(リリック・テノール) ヴォツェックの同僚の兵士で友人
大尉(テノール)ヴォツェックにひげを剃ってもらう上官。内縁関係を非難。
医者(バス・ブッフォ) 生体実験をしている医者。ヴォツェックに精神錯乱の症状があるという。
マルグレート(アルト)マリーに嫌味を言う隣人。
マリーの息子、徒弟たち、兵士たち、白痴、女中たち
Berg: Wozzeck (HQ) – 1970 film version [English Subtitles]
Directed for television by Joachim Hess、Set design: Herbert Kirchhoff、Costumes: Helmut Jürgens、Recorded 1970,Hamburg State Opera
Woyzeck on the Highveld (Full Feature)Handspring Puppet Company(2009)人形劇
(YouTubeリンク)William Kentridge作品
Felix in Exile William Kentridge 2014/04/04
Automatic Writing– William Kentridge 2008/06/22
More Sweetly Play The Dance – William Kentridge – in entirety – Arles 2016/09/27
2nd hand reading William Kentridge – 2017/05/08
93☞Roméo et Julietteロミオとジュリエット(1867)グノー
METでは1891年に初演されました。1922年からの著名なアールデコ建築家ジョセフ・アーバンによる演出は、1967年のポール・エミール・デイバー演出まで置き換えられませんでした。331
Guy Joosten演出版(2007年上演)プラシド・ドミンゴ指揮。36歳のアンナ・ネトレプコが、溌剌としたジュリエットを演じています。ロミオはRoberto Alagna。ゴージャスながらも白を基調とした清楚なジュリエットを演出。舞台の上部からのカメラアングルもあり、客席からとは違った視点を提供しています。
Bartlett Sher演出版(2017年上演)トニ賞受賞歴のある演出家による演出。Diana Damrau, Vittorio Grigolo主演。前奏曲は二人の葬儀ではじまり、一転して第一幕の仮面舞踏会に時間が戻ります。赤、青、紫、ゴールドと光物満載の華やかで豪華な演出。332ティボルト、マキューシオ等との闘いの場面は舞台狭しと動き回る映画のように動的な演出です。
94☞Agrippinaアグリッピナ(1709)ヘンデル
David McVicar演出版(2020年上演)タイトルロールはジョイス・ディドナート。ズボン役としてネロを演じるケイト・リンジーがダメ青年を好演。
バロック時代のブラック・コメディを現代風にした新演出。歌手が舞台の中央で身をよじりながら感情をこめて独唱、というスタイルではなく、歌いながら何らかの意味を含む動作をする(服を着変える、異性といちゃつく、酒を飲んで絡む、現代風のダンスを踊るなど)スタイルが、逆に曲をBGMとした無言劇のようにも見せ、観客に飽きさせない演出です。
➤タイトル・ロールは、ロッシーニでもシンデレラを演じたジョイス・ディドナード。
➤幕には「狼の父を吸うロムスとレムスの像」が描かれています。ローマ帝国の建国神話の双子の王の絵はこのオペラがローマ帝国の王位の物語であることを示し、彼らを育てた雌狼の絵は王の母の物語でもあることを示しています。
➤序曲がはじまり幕が上がると登場人物の名前が記された大理石(風)の台座には、石像ではなく、近代の軍事政権下風の衣装をつけた出演者が座っており、最初から誰がどの登場人物を演じるのかわかります。作品中にTVが出てきたり登場人物がスマホを使ったりしますが、特定の年代設定や国家設定はないようです。
➤右から軍服の二人は、パランテ(カーキの帽子と胸の勲章は陸軍か?)とオットーネ(白い帽子は海軍か?)。黒いキモノガウンに黒と濃紫のロングスリップのアグリッピナは黒髪を夜会巻風に高く結い上げています。赤いネクタイに紺のスーツで倦んだ態度のクラウディオ王。前髪を立たせて銀のメッシュを入れたショートのヘアスタイルにチェーンネックレス、シルバーの指輪と腕輪、大きな花柄のノースリーブTシャツに腕のタトゥー、黒のピッチリパンツに黒のスニーカーなどパンク小僧風は息子ネロ。黒いタイトのワンピースのポッペア。紺のスーツに眼鏡のナルチーゾは軍人ではなく官僚風で、膝を抱えている様子は軍人たちとも座り方が違います。その脇で本を読んでいる第三者はレズボでしょうか、台座が無いのは彼だけは史実として残る人物では無いことを意味しているようです。
アグリッピナ「統治したいなら欲望を押さえることを学びなさい」
ネロ「あんたのコントールにまかせるよ。あんたの言う通りにすれば玉座が手に入るんだ。」
➤アグリッピナは息子を溺愛し甘やかす母親でありながら、単純な男たちを手玉にとる女としての顔を持っています。軍兵に対する母親のようなしぐさや、handjobでナルチーゾを喜ばせる時の顔つきと消毒液で手を拭く様子などは、彼女の男に対する表面と本音を面白く表現した演出です。リポーターとカメラマン等のTVクルーと、舞台上のTVを登場させることにより、各登場人物の本音と表向きの顔の違いをうまく見せています。
➤アグリッピナだけでなく、モデル然としてゲイの友人やスタッフに囲まれているポッペアも男たちが自分に靡くことを知って利用する小悪魔的に描かれています。アグリッピナとのドレスかぶりで周りをハラハラさせるシーンや舞台上で着替える演出も面白いですが演じる女優を選びます。
アグリッピナがポッペアと、クラウディオスを二人で騙してたお祝いに飲むシャンパンはオレンジのラベルのブーヴクリコ(5000円程度)。男だけでなく女も手玉にとれる大人という意味ではアグリッピナの方が上手か。
最後にはその当初、登場人物達が座ってた台座は墓石であることがわかります。それぞれの登場人物は墓に横たわり、レズボの笑い声の中でオペラが終わります。
18世紀半ばからはあまり上演されなくなりましたが、21世紀に入り近代的な演出で復活するようになりました。2002年Lillian Garrett-Groagによるニューヨーク・シティ・オペラの演出は、“奇妙な・・(odd …)ミュージカル『プロデューサーズ』の劇中劇「ヒトラーの春」のクラウディオス帝版「私、クラウディオスは・・」を見ているような”と、ニューヨークタイムズに評されました333。好評なのか酷評なのか判別つけがたい、まさに“奇妙”な評で興味をそそりますが、現在入手できる映像はないようです。
『プロデューサーズ』334,335(2005)
アカデミー脚本賞を受賞した同名映画(下記1968)を原作としたミュージカルの映画化。
- マックス・ビアリストック役ネイサン・レイン:出資金を手に入れる帳簿操作詐欺をするために敢えて失敗作を上演しようとする落ちぶれたプロデューサー。
- ウーラ役ユマ・サーマン:新作に出演する美人だがスウェーデン訛りの強い女優。
劇中劇として、ドイツ風の名前をつけた伝書鳩を飼っている元ナチの最低の脚本家による、ヒトラーとナチを賛美した最低の脚本「ヒトラーの春」が上演されます。観客は大ブーイングでしたが、ゲイの演出家がヒトラー役で登場すると逆に風刺と勘違いされ大ヒットします。
史上最悪の脚本を探すんだ。それがプロデューサーの仕事だ。(ある脚本を手にして読む)第1幕第1場。グレゴールはある朝目覚めると巨大なゴキブリに変身していた。(脚本を放り投げて)だめだ、良すぎる。
♡パートナーのカルメン
♡低音の地声とは打って変わって高音で歌うハード・ゲイ・ファッションのセットデザイナー336ブライアンという名前からクイーン繋がりでフレディー・マーキュリーをイメージさせます。
♡エルトン・ジョン風の小太り眼鏡の衣装デザイナー、名前はケヴィン。ゲイのケヴィン・スペイシーからか。
♡バレエダンサー風もっこりの振付師スコット。著名なバレエ振付師の男性ディエギレフやニジンスキー337はゲイだったと言われています。全く違う化粧や衣装で気が付きにくいのですが、人形のような振付でのオーディション応募者も演じています。
♡オタク男性のようなチェックのネルチャツの女性照明デザーナー。シャーリー・マーコウィッツという名前から推測される女優シャーリー・マクレーンは『噂の二人338』でオードリー・ヘプバーンと同性愛を噂される女教師を演じています。339
➤主役のネイサン・レイン自身もゲイを公言し同性婚しています。340また、『バードゲージ』主役ロヴィン・ウィリアムズのゲイ・パートナー役を演じています。
➤『プロデューサーズ』では母親を思い出すシーンで女装もしています。
監督(プロデューサー)のメル・ブルックスはアカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の4賞すべてを受賞したことがある数少ない人物。ユダヤ系ユダヤ系アメリカ人であり、ナチスやアドルフ・ヒトラーを取り上げた作品を製作し「世界中でヒトラーを笑い飛ばすことは、私の生涯の仕事の一つになっている」と語っています[2]。
The Producers- Opening Night + King Of Broadway ミュージカル舞台よりWe Can Do It – The Producers 映画『プロデューサーズ』(2005)シーン
The Producers- We Can Do It ミュージカル舞台よりProducers Unhappy Song ~The Producers- I wanna be a Producer 映画シーン
Unhappy song ~’I Wanna Be A Producer’ – The Producers ミュージカル舞台よりThe producers- Der guten tag hop clop FULL SCENE 映画(2005)シーン
The Producers – “Der Guten Tag Hop-Clop” ミュージカル舞台よりKeep It Gay – The Producers 映画『プロデューサーズ』(2005)シーン
The Producers- Keep It Gay ミュージカル舞台よりThe Producers (2005) – When You Got It Flaunt It! 映画(2005)シーン
When you Got it, Flaunt it. – The Producers ミュージカル舞台よりAlong Came Bialy – The Producers 映画『プロデューサーズ』(2005)シーン
‘Along Came Bialy’ – The Producers ミュージカル舞台よりHaben Sie Gehört Das Deutsches Band? (Have You Heard The German Band?)
The Producers- Haben Sie Gehört Das Deutsche Band?/ Audition Scene 舞台よりThe Producers – Springtime for Hitler and Germany 映画(2005)シーン
Springtime For Hitler The Producers 映画(1968)シーン
The Producers- Springtime For Hitler ミュージカル舞台よりYou’ll Find Your Happiness In Rio 映画『プロデューサーズ』(2005)delatedシーンThe producers- Prisoners of love/ Leo and Max 映画(2005)シーン
‘Prisoners of Love’ & ‘Finale’ – The Producers ミュージカル舞台よりThe Producers – Goodbye! 映画(2005)エンディング・シーン
(原作プロデューサーのメル・ブルックスがカメオ出演)
➤アグリッピナは、パランテと愛人関係にあったと言われてきましたが、研究によると史実では政治的な協力関係だけだったようです。ナルチーゾとはネロをはさんで政治的に敵対関係にすらあったようです。
➤後日譚としては、オットーネは妻のポッペアを離婚してネロに譲ります。オットーネはネロと幼馴染で男色関係にあったとも言われていますが、寵愛を得るためなのか篭絡するためなのか無理やりなのか、後世に様々な脚色ができるような面白い史実ではあります。ネロ帝亡きあとオットーネは短い期間ですが帝位(オト帝)についています。
➤ネロはアグリッピナの連れ子でしたが、アグリッピナは息子を皇帝にしようとクラウディウス帝と無理をして結婚したと言われています。当時一般的であったように、実子でない連れ子を跡継ぎにする場合は養子としましたが、更にその絆を強固なものとするため、クラウディウス帝と前妻との間の娘オクタビアをネロと娶わせました。アグリッピナは野心的なポッペアも気に入りませんでした。16歳で帝位についたネロは、数年後母を殺害したあとオクタビアと離婚しポッペアと再婚しています。離婚後オクタビアは幽閉地で殺害されました。
➤ネロの離婚再婚の顛末を描いたモンテヴェルディが作曲したオペラ『ポッペアの戴冠342』、作者不明の(紀元1世紀後半頃ネロ帝亡き後の作と考えられています)悲劇『オクタウィア343』なども知られています。
➤真偽定かではありませんが、アグリッピナは息子と近親相姦したとか、ネロが狂気じみた悪政をしいたなどの伝説から、母親から性的虐待を受けた男児が、成長後に母親に極端な嫌悪感を抱いたり自暴自棄になったりするという仮説を「アグリッピーナ・コンプレックス」344とよぶ精神分析の考え方もあります。
映画『クォ・ヴァディス』
映画『ザ・ローマ 帝国の興亡(字幕版)』第1話 ネロ
➤西暦64年のローマの大火345の後、美と芸術の都市としてローマを再興しようとしたネロを描きます。費用調達のため神殿を襲い宝物を奪うやり方は、民衆だけでなく元老院を敵に回しましたが、「ピソの陰謀346」とわれるネロの暗殺計画は発覚し19人が処刑され13人が追放されました。
➤自分自身が俳優として出演し、“ヤラセ”ではない自分の才能を示そうとしましたが、当時の常識とは違ったものでした。BBCの番組ですが「現代のエリザベス女王がストリップを演じるようなものです」と例えています。
➤ポッペアは毒殺されたとの説もありますが、この作品は癇癪をおこしたネロに腹をけられてお腹の子ともども死んだとの説を採用しています。それでもネロは妻を溺愛していたので当時一般的だった火葬にせず香油による防腐措置を施したそうです。その後、見目好い若者347を去勢し“ポッペア”と名付けて女装させ寵愛したそうです。
➤妻亡きあと益々暴政がひどくなり、腹心のティゲッリヌス348も去り、とうとう元老院に“国民の敵”と指定され、逃亡した郊外の別荘で自殺しました。
95☞Porgy & Bessポーギーとベス(1935)ガーシュウィン
James Robinson演出版(2020年上演)西洋の物語で西洋人(いわゆる白人)が出演することが多いオペラの中では異色の、出演者はほとんど全員アフリカ系アメリカ人(いわゆる黒人)です。また英語による上演です。
ポピュラー音楽・クラシック音楽の両面で活躍したジョージ・ガーシュウィン349の作曲。オペラの最初に歌われ、劇中に何度か登場する「サマータイム350」はジャズ・アレンジのスタンダードとしても有名です。
Summertime and the living is easy♪Fish are jumping and the cotton is high ♪
1936年にビリー・ホリデイが歌ったジャズ・バージョンがヒットし、1906年にサックスプレイヤーのコルトレーンが録音したものもヒットしています。2012年のニューヨークタイムの記事351によればこれまでに26,000以上のレコーディングがされているとのことです。サマータイム好きが集まって運営しているSummertime connection352というサイトによれば、2018年11月までに少なくとも88,620の公式演奏、うち73,624は録音されており、この団体では62,127のフル演奏の録音を持っているそうです。
☞エラ・フィツジェラルドバージョン 本格女性ジャズシンガー大御所
☞ジャニス・ジョップリンバージョン ニューエイジ時代の女性シンガー1969年のライブ
☞ノラ・ジョーンズバージョン 353デビューアルバムがグラミー賞8部門ノミネート&受賞の実力派若手女性ジャズシンガー
☞ウィリー・ネルソンバージョン 354米国ベテランギタリスト、シンガー
☞Smooth Jazz Version 一人演奏
☞ケニーGバージョン 355スムーズジャズ/フュージョンのSaxプレイヤー
☞キャスリーン・バトルバージョン 356大御所黒人オペラ歌手ラプソディー・イン・ブルー
☞ラプソディー・イン・ブルー バーンスタイン 1976
☞Rhapsody in Blue 『ファンタジア2000357』アニメーションから
☞Rhapsody in Blue ピアニカ連弾
ポーギー 、内縁の夫が殺人を犯したベスを世話する障害者の乞食。刑務所を出てベスを追う。
ベス、殺人犯クラウンの内縁の妻。スポルティン・ライフと共にニューヨークに行ったとの噂。
クラウン、タフな沖仲仕(港湾労働者)358殺人して逃亡。隙を見てベスを連れ出そうとし、ポーギーに撲殺される。
ロビンズ、カードゲームの争いの喧嘩でクラウンに殺されるナマズロウの住民。
セレナ、ロビンズの妻。
スポルティン・ライフ、ベスに一緒にニューヨーク行きを持ち掛ける麻薬の売人。
フレイジャー、クラウンとの離婚をネタにベスから金を巻き上げようとする黒人の「弁護士」。
(実際には正式に結婚していない内縁の妻なので断られる)
ジェイク、嵐の日に海から戻らない漁師。
クララ、赤ん坊を持つジェイクの妻。
Porgy and Bess – Gershwin 曲はオペラのままですが、イメージのわきやすいロケ映画。黒人の障碍者が道端に座っているシーンからはじまり、黒人酒場で麻薬を吸っている女性のシーンに移行するのはこのドラマ後のニューヨークを思い起こさせます。綿農場の労働者のシーンになると「サマータイム」が歌われ、ことのはじまりに時間が戻るようです。
Porgy and Bess(1959)ポギー役シドニー・ポワティエ、ベス役ドロシー・ダンドリッジ、スポルティン役サミーディヴィス・Jr.。オットー・プレミンジャー監督。
2015 Olivier Awards – The Gershwins’ Porgy And Bess ミュージカル版より
96☞Rise and Fall of the City of Mahagonnyマハゴニー市の興亡(1930)ワイル
John Dexter演出(1979年上演)ジェームズ・レヴァイン指揮。
97☞Fedoraフェドーラ(1898)ジョルダーノ
Beppe De Tomasi演出版(1997年上演)Plácido Domingo出演。Roberto Abbado指揮。婚約者を殺した男性を愛してしまうロシア皇女フェドーラの物語。
98☞Andrea Chénierアンドレア・シニエ(1896)ジョルダーノ
Nicolas Joël演出版(1996年上演上演)ステファニー・ブライス、ルチアーノ・パバロッティ出演。ジェームズ・レヴァイン指揮。
99☞Fidelioフィデリオ(1814)ベートーヴェン
Jürgen Flimm演出版(2000年上演)ロッコ役ルネ・ペペ(映画『魔笛』など)、ジェームズ・レヴァイン指揮。ベートーベンが完成させた唯一のオペラ359。
フロレスタン(テノール)ピツァロに陥れ入れられて、殺人の罪を着せられた囚人。
レオノーレ(ソプラノ)男装しフィデリオと名乗り、夫を救うため刑務所で働くピツァロの妻。
ロッコ(バス)刑務の役人。ピツァロの企みを知り大臣に訴えレオノーレらを救う。
マルツェリーネ(ソプラノ)男装のフェデリオに恋するロッコの娘。
ヤキーノ(テノール)マルツェリーネに求婚するロッコの娘。
ドン・ピツァロ(バリトン)ロッコにフロレスタン殺害を企む横暴な刑務所長。
ドン・フェルナンド(バス)ロッコの暴政の告発を受け抜き打ちで刑務所を訪れる大臣。
☞オペラストーリーA4判 オペラのストーリーを簡潔にまとめたA4判pdfをダウンロードできます。
☞フランスオペラの楽しみ フランスオペラ、オペレッタなどの魅力を紹介しています。
①魔笛(子供に見せるのに)
②フィガロの結婚(オペラといえばモーツアルト、お姫様ドレスも満載)
③カルメン(強い女性に憧れる女性に)
④椿姫(大人の女性のデリケートな琴線にふれる、男性からは理想的な女性)
⑤ドン・ジョヴァンニ(強いモテ男に憧れる男性に)
⑥こうもり(年越しお正月オペレッタ)
⑦蝶々夫人(日本を題材にしているので)
⑧メリー・ウィドウ(年越しお正月オペレッタ)
⑨コシ・ファン・トゥッテ(モーツアルトのお姫様ドレス)
⑩ヘンゼルとグレーテル(子供に見せるのに)
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