蔵書票と蔵書印

Yukipedia
2018.11.03

図書の保有、収集などのシステム（やり方・制度・社会文化構造）の中で図書の保有を宣言するための「蔵書票」や「蔵書印」とはどのような背景をもつのでしょうか。

蔵書票1

蔵書票（ぞうしょひょう）ないし書票（しょひょう）は、本の見返し部分に貼って、その本の持ち主を明らかにするための小紙片。より国際的にはエクスリブリス（Exlibris、「だれそれの蔵書から」という意味のラテン語）と呼ばれる。英語ではbookplate。

蔵書票が誕生したのは15世紀ドイツにおいてであり、その背景には製紙技術の発達と、グーテンベルクの発明した活版印刷によって本の大量生産が可能になったことがある。現存する最古の蔵書票は1450年-1470年頃に作られたヨハンネス・クナベンスベルクの木版のもので、ハリネズミの図柄を使用していることから「ハリネズミ書票」と呼ばれている2（表題画）

  • 日本書票協会1　展覧会やコンクールなどのイベント情報あり。
    • 日本書票協会のリンクページ1
  • 蔵書票の作り方1

蔵書印1　　　西洋は蔵書票、東洋は蔵書印が多い34

収蔵物への印として確認されているもののなかでは、唐代の太宗の「貞観」印、玄宗の「開元」印が最古と言われる567。この頃に見られる蔵印の古例は、基本的に宮廷が鑑蔵した書画に用いられたものである[11a]。

蔵書印が本格的に始まったのは宋代の中国とみなされている[11b]。宋代の中国では、紙と印刷技術の普及、出版の発達、書画鑑賞の文化の発展に伴って、紙の上の書画に捺すものとしての印章が大きく発達した8。図書の鑑蔵を示すものとして最古級の印はこの時代のもので、王涯の「永存珍秘」印、梁秀の「收閲古書」印、太祖文帝の「秘閣図書」印などとされる[11c]。

宋1は１０世紀から１２世紀なので、西洋より少し東洋の方が早いようです。
印刷1の技術が発展したのは東アジアですし、2世紀頃に中国で紙が発明され、7世紀から8世紀頃には木版印刷が行われていたといわれます9。なので、本やそれに関連する蔵書印も西洋より東洋の方が早かったのでしょう。

  蔵書印は中国から日本や朝鮮、および漢字文化圏に含まれるその他の東アジアの国々に伝来した1011。特に、日本での蔵書印の広まりは、中世以降、中国から宋元版の書物が盛んに輸入されたことと並行している[16a]

図は光明皇后が『杜家立成雑書要略』12に捺した蔵書印のひとつ（8世紀）。印文は「積善藤家」13。

 

  1. ウィキペディア（日本語）
  2. Edward Almack (1908), Bookplates, A・C・マクラーグ（英語版）, pp. 12-13
  3. 紀田順一郎 「66 蔵書印 印章の歴史とともに」『本の情報事典』 平凡社、1991年1月、新、92頁。全国書誌番号:92007467。ISBN 4785200472。NCID BN05898274。
  4. 味墨山房 「明清名家刻印彙存」、『墨』 (芸術新聞社)第183号8頁、2006年11月。
  5. 水田紀久、「蔵書印」、井上宗雄ほか編 『日本古典籍書誌学辞典』 岩波書店、1999年3月、352頁。ISBN 4-00-080092-2。 NCID BA40352550。
  6. 水田紀久、「蔵書印」、市古貞次・野間光辰編 『日本古典文学大辞典』4巻 岩波書店、1984年7月、23頁。ISBN 4-00-080061-2。 NCID BN00217799。
  7. 新関欽哉 『東西印章史』 東京堂出版、1995年6月、196-202頁。ISBN 4490202687。NCID BN12846918。[11a]↲[11b]↲[11c]↲
  8. 湯浅邦弘 『墨の道：印の宇宙』 大阪大学出版会、2008年12月。p70-73。ISBN 9784872592429。NCID BA88337454。
  9. 「図説　本の歴史」p22　樺山紘一編　河出書房新社　2011年7月30日初版発行
  10. 「蔵書印」 『日本歴史大辞典』6巻 (新装増補改訂版) 河出書房新社、1979年11月、243頁。ISBN 4309609066。 NCID BN0078658X。全国書誌番号:20220862。[16a]↲
  11. Peter F Kornicki（英語版） (1998). “Ownership” (英語). The book in Japan: a cultural history from the beginnings to the nineteenth century. Handbuch der Orientalistik., Fünfte Abteilung,, Japan ;, 7. Bd.. Brill（英語版、オランダ語版）. pp. 398-406. ISBN 9004101950. NCID BA36141518. OCLC 37675786.
  12. 宮内庁 正倉院宝物検索に収録。
  13.  林陸朗 「積善藤家」『光明皇后』 吉川弘文館〈人物叢書 79〉、1961年12月、1-2頁。全国書誌番号:62001036。ISBN 4840600449。NCID BN01890317。

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