『ブーリン家の姉妹』フィリッパ・グレゴリー
イギリスの歴史ロマンス小説家Philippa Gregory1が ヘンリー8世の2番目の妃アン・ブーリンの姉(妹ともいわれる)メアリー・ブーリンの視点で宮廷を描きます。メアリー・ブーリンもアンの前にヘンリー8世の愛人でした。
書籍
☞『ブーリン家の姉妹 The Other Boleyn Girl』 2,3 2001 集英社文庫 加藤洋子訳 上巻、下巻
ヘンリー8世の2番目の妃アン・ブーリンの姉(妹ともいわれる)メアリー・ブーリンの視点で宮廷を描きます。
ヘンリー8世は精神的におかしかったのか?
作者のフィリッパ・グレゴリーは歴史学者であり、作品にも事実と異なる設定をあまり書きません。(事実がわからないことや登場人物の感情については想像力を膨らませていますが)
この著作には、ヘンリー7世とその子ヘンリー8世は憂鬱症の傾向があったと書かれていますが、根拠出典を見つけられませんでした。
ヘンリー6世は遺伝による明らかな精神疾患3があったようですが、ヘンリー7世とは血がつながっていません。
ただ、オックスフォード大学のDiarmaid Maccullochが、「ヘンリー8世が梅毒により精神に異常をきたしていたという通説は誤りで、若い時代の槍試合の負傷で体内に残った槍の一部が激痛をもたらしたことから性格が変化した」との説を発表しています。ということは、英国では、ヘンリー8世は精神に異常をきたしていたという通説があるものと考えられます4。
なお、通説ではヘンリー8世は6回結婚したということになっていますが、そのうち3回は「無効」による結婚状態の解消だったので、厳密にいうと3回の結婚になります。
無効とされたのは、キャサリン・オブ・アラゴン、アン・ブーリン、アン・オブ・クレーヴです。
(ジェーン・シーモアは産後の肥立ちが悪く死亡、キャサリン・ハワードは無効の根拠を拒否、キャサリン・パーは最後を看取った妃)
アン・ブーリンのネックレス
「金で象ったBの文字がついた真珠のネックレス」は、アン・ブーリンの象徴と言えます。この時代に描かれたと考えられる作者不詳の肖像画がロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリー3に所蔵されています。
多くの映像作品にもこのネックレスのレプリカが、アン・ブーリンの装飾品として使われています。
米国の人気テレビドラマ『アグリー・ベティ』で主人公が同じデザインのネックレスをつけていました。直訳で“醜いベティ”という題名ですが、ファッション業界で働く不美人な主人公が、虐められながらも頑張るサクセスストリーのドラマで、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞を受賞しています3。
B以外のアルファベットのネックレスなども販売されているようです。5
アン・ブーリンも「黒髪、色黒、小柄、やせ形」と当時美女とはされない容姿だったらしく6、「国王が贔屓にしている以外、これといって見るべきところがない女性」との同年代のフランスの記録もあるそうです。3
不美人で身分が高くないのに元王妃を差し置いてまで寵愛され、高圧的な態度をとったりすれば、周囲の人々に嫌われることは想像に難くありません。
逆に、不美人で身分が高くないのにウィットと知性で国王を射止めたとみれば、アグリー・ベティと同様、庶民の共感を得るサクセス・ストーリーとも言えます。
同年代の宮廷人からは排除され、のちの時代の芝居や小説、エンターテイメントで度々題材に挙がるのは、そのせいかもしれません。
映像作品
☞『ブーリン家の姉妹 (テレビ映画)』 – 2003年BBC制作のテレビ映画。
ジョディ・メイがアンを、ナターシャ・マケルホーンがメアリーを演じました。
☞『ブーリン家の姉妹 (映画)』3 – 2008年公開のイギリス映画。
ナタリー・ポートマンがアンを、スカーレット・ヨハンソンがメアリーを演じました。
(サイト内リンク)『THE TUDORS〜背徳の王冠〜』Season1
(サイト内リンク)『THE TUDORS〜背徳の王冠〜』Season2
(サイト内リンク)英国女性君主99の視点
コメント