『実況 料理生物学』小倉明彦

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『実況 料理生物学』小倉明彦

前月まで高校生か予備校生だった少年少女たちが、互いに打ち解けること、五月病にかかる前に大学に通学する習慣をつけること、を最低限の目標においた

阪大の小倉先生の講義「料理生物学入門」をまとめたもの。文系・理系あわせて15名程度の規模の授業だそうです。

(第1講 カレーライスの生物学)

なぜ「金曜日はカレーの日」か?。18世紀後半、インドを植民地化した英国でカレーが大流行しました。その頃の英国では日曜日に牛肉の塊を焼いて少しずつ食べていき金曜日に食べきります。金曜日には牛肉に痛みが来ているので香辛料満載のカレーで煮るのだとか。イギリス海軍1由来の欧風カレーがビーフカレーなのは、そのような理由なのですね。

土曜日はどうするの?

今でも日本の海上自衛隊では毎週金曜日のメニューはカレーです。これは、長い航海中に、曜日の感覚がなくなりがちなのでメニューで曜日を思い出すという理由の他、白米だけでは栄養がかたより脚気を引き起こす2ので肉や野菜もとれる栄養バランスという理由もあるそうです3。江戸時代、出島をとおしてオランダを交流のあった日本はオランダから造船技術を学びました。1869年に海軍軍人養成機関を設立した際に世界一の海軍イギリスから教団を招いて学びました。以来、日本の海軍の伝統はイギリス式です4。カレーもイギリス海軍から受け継ぎましたが、イギリスの階級社会も受け継ぎ、帝国海軍では士官の食事は月1回は洋食のフルコースだったそうです5

海上自衛隊のカレー(海自カレー)に特化した公式ホームページもあります。6このサイトは海上自衛隊の全面協力の元、呉の事業者が運営しています。天然の良港として瀬戸内海を拠点とする村上水軍が根城にしていた呉7は、明治時代に海軍病院や造船廠、呉海軍造兵廠が置かれ、海軍・海上自衛隊の重要な基地のひとつです8。海上自衛隊ではそれぞれの艦ごとに独自のカレーレシピを持っているそうですが、海上自衛隊のサイトでは各艦、部隊のカレーレシピを公開しています9

「海軍カレー」は、よこすか海軍カレーに代表されるように明治41年「海軍割烹術参考書」のレシピをもとに現代に復元したカレーです。
「海自カレー」は、海上自衛隊の艦艇等で実際に食べられているカレーを伝授いただき、忠実に再現、さらに艦長から認定いただいた特別なカレーです。10

イギリス海軍は今でもカレーを食べているのかな?

各国の軍独特のカレーや他の料理を知りたいな。

海軍ではないですが、世界の軍隊食のうちレーション(戦闘食)の実食感や購入ができるサイト11の実食報告によると、イギリス軍レーションのサフランライスとラムカレーの組み合わせメニューは絶品だそうです。ウィキペディア12には、世界の戦闘食に関する沢山のリンクが掲載されています。

 

食べてみたい。レーションパーティがどうかな。

スペインのコロンブス13は、イザベル女王をスポンサーに胡椒を探しに西へ向かいました。もちろん地球は丸いと信じて。地球球体説14は、古代プトレマイオスの時代から論じられていましたが、15世紀イタリアの天文学・地理学者トスカネリ15が直接コロンブスに説いたそうです。イザベラ女王の目的は当時イスラム商人を通してしか買えなかった高価なインドの胡椒を直接買い付けることでした。先にヴァスコ・ダ・ガマ16がアフリカ沿岸をまわってインドに到達するインド航路を開拓したことによりポルトガルが胡椒の貿易で大儲けしていたので、それに対抗して西回りの新規航路開拓をコロンブスに託したのです。ご存知のとおりアメリカ大陸に到達したコロンブスは、胡椒をみつけられなかったものの原住民から唐辛子を入手し、赤い胡椒だと言い張りました。なので今でも英語で唐辛子を赤胡椒(レッド・ペッパー)といいます。スペイン語ではピミエント・ロキ(胡椒・赤い)ですが、フランス語のピーマンも胡椒と同じ語源です。ハンガリーでは辛くない品種改良がおこなわれクロアチア語由来のハンガリー語で唐辛子という意味の「パプリカ17」と呼ばれました18。ちなみに日本全国でハンガリー料理に特化したレストランは3店舗しかないとか。結局コロンブスはインドに到達できず、大西洋を横断して帰国しました。はじめてに西まわりで世界一周をしたのはマゼラン海峡に名を遺すフェルディナンド・マゼラン19の率いる艦隊でした。(ただしマゼラン本人は航海半ばで亡くなりました)

Knutux – による作

唐辛子は日本にはイエズス会の宣教師がもたらし、朝鮮半島や中国へは日本から入ったそうです。だからそれまでのキムチや麻婆豆腐は唐辛子は入っていなかったそうです。

コロンブスが南米からとうもろこしを持ち帰る前は、ライ麦パンやカラス麦のオートミールなどが貧しい人の食べ物でした。昔の英語辞典に「カラス麦=穀物の一種、イングランドでは馬を養い、スコットランドでは人を養う」と皮肉が書かれていたそうですが、スコットランド人は負けずに「よってイングランドは馬で名高く、スコットランド人で名高い」と返したそうです。

カレーの黄色はターメリックという香辛料ですが、日本語ではウコン20といいます。俗説で二日酔いに効くといわれていますが、科学的には未検証のようですが、二日酔い防止に宴会前に飲めというニュアンスで売っているものが多いようです。

ハウスが出してる「ウコンの力」、いかにもカレーやさんのサイドビジネスだ。

生徒「アイリンとかアリナミンとかいっぱい出てくるけど、アリって、もしかして、ニンニクって意味ですか?」

教授「そうです。ニンニクをラテン語でAlliumといいます。だから分類学の父リンネは、ニンニクの学名をアリウム・サティブム(Allium sativum)とつけました。sativumとは「栽培された」という意味ね。イネの学名にも出てきた。ただし、Alliumをニンニクだけでなくネギ類全体の名にしたの。タマネギはAllium cepa だし、ニラはAllium tuberosumです。

たしかイタリア語でニンニクはアーリオaglio21、ニンニク(と唐辛子)だけのシンプルなオイルパスタをアーリオ・オーリオ22といいました。ラテン語と語感が似ていますね。イタリア語の玉ねぎはチッポラ23はラテン語のcepaケーパが語源24です。

 

  1. ウィキペディア(日本語)
  2. ウィキペディア(日本語)日本の脚気史
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  4. ウィキペディア(日本語)大日本帝国海軍の歴史
  5. 「戦艦大和」の日常生活
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  8. 海上自衛隊呉地方隊
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  10. 海自カレー 公式ホームページ>よくある質問
  11. MOMCOM別館>【イギリス軍24時間レーション】世界の戦闘糧食を「実食」しよう! PART2
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  13. ウィキペディア(日本語)
  14. ウィキペディア(日本語)
  15. 世界史の窓>トスカネリ ボイス・ペンローズ『大航海時代』1952 荒尾克己訳 筑摩書房 p.94-95
  16. ウィキペディア(日本語)
  17. ウィキペディア(日本語)
  18. Latte>コラム>グルメ・レストラン>レストラン・飲食店>ハンガリー料理は唐辛子「パプリカ」で出来ている!赤いピーマンの効能・歴史・食文化とは
  19. フェルディナンド・マゼラン
  20. ウィキペディア(日本語)
  21. みんなでつくるネーミング辞典
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  24. Via Della Gatta>ラテン語のはなし>玉ねぎの語源

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