『恋情』藤本ひとみ1
ヴァランセ家デスランプ公爵ルイ・ジョセフの後妻がギロチンにかけられる日の朝の一人語りを中心にした物語ですが、国王の公妾であったことや、マリー・アントワネットとの確執、亡命先のイギリスからフランスにもどってきたことなどから、ルイ15世の公妾デュ・バリー夫人1(マダム・デュ・バリー)2として知られている女性をモデルにしていると考えられます。
史実では、娼婦のマリ・ジャンヌ・ベキューが、カジノ所有の高級娼婦斡旋人ルロワ(車輪の)ジャン・バティスト・デュ・バリーに見い出され、兄(弟?)のギョーム・デュ・バリー伯爵との結婚により、デュ・バリー夫人としてベルサイユにデビュー。侍従長のリシュリュー卿1のバックアップを得て、ルイ15世の交妾になりました。リシュリュー卿は先の公妾ポンパドール夫人と敵対しており、夫人の死後デュ・バリー夫人を推薦することにより、宮廷での勢力強化を企てたものです。
この物語では、主人公がムッシュ・ド・パリと呼ばれる死刑執行人サンソンに語り掛ける形式で、両者が青年期に面識があった説が採用されています。死刑執行人は世襲とはいえ国王から「有罪判決執行者」として任命されるもので、サンソンとルイ16世は面識があったと考えられています。また、ギロチン1の刃を斜形にして、痛みが少なく人道的に処刑できるようにアドバイスしたのは、錠前づくりなどエンジニアリングが趣味であったルイ16世とも言われています。とはいえ、ルイ16世の処刑の際には1回の刃で切断できなかったとの記録もあるそうです3。
たとえ何も持っていなくても、あなたは、充分に価値のある人
デュ・バリー夫人が登場する作品
(Amazonリンク)『マリー・アントワネットの料理人』(ヤング・ジャンプコミックス)白川昌1
史実どおりではないが、日本人の料理人がベルサイユにいたという設定の料理漫画
(Amazonリンク)『エルメス伯爵夫人の恋』藤本 ひとみ (新潮文庫) 文庫 – 2004/11
『恋情』とほとんど同内容ですが、主人公の夫はエルメス公爵という名前に変更されています。また、『接吻』は『最後の接吻』と改題されています。
(Amazonリンク)『ベルサイユのばら』池田理代子
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