ブレーンストーミングに関連するアイデア抽出法と意思決定技法

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ブレーンストーミング

ブレーンストーミング(Brainstorming)12は、実業家で作家のオズボーンが(Alex Faickney Osborn3考案しました。ブレストと翻訳されることもありますが、直訳すると脳を嵐のようにぐちゃぐちゃにすることとなります。集団(または個人で行うこともある)の相互作用により、短時間で多くのアイデアを発想し、その中から良いアイデアが生まれることを期待する方法です。

PMBOK®Guide第6版では、下記プロセスのツールと技法に掲載されています。
 4.1 プロジェクト憲章の作成 (Develop Project Chaeter)※PMBOKで強調されています。
 4.2 プロジェクトマネジメント計画書の作成 (Develp Project Management Plan)
 5.2 要求事項の収集 (Collect Requirements)
 8.1 品質マネジメントの計画 (Plan Quality Management)
 11.2 リスクの特定 (Identify Risks)
 13.1 ステークホルダーの特定 (Identify Stakeholders)

デザイン思考の本家、米国スタンフォード大学のd-スクール(デザインスクール)4では、ブレーンストーミングの8つのルールを提案しています。5

一度に1つのアイデア;意見を順番に出し合うだけではなく、各意見について議論し発展させる。   
質より量;短時間にたくさんのアイデアを出すことをこころがける。そのために質を問わない。
見出しを意識;カードに書くときはマジックで大きく見出しを書き、共有できるようにする。    
他人の意見に乗っかる;意見を順番に出しあうだけでなく、他者の意見から発想を広げる。
粗削りのアイデア歓迎;質より量なので、入念に精査されたアイデアでなく思いつきでもよい。
視覚化する;他者の意見に乗っかったり、議論したりするために共有しやすいよう視覚化する。
トピックからぶれない;アイデアが行き詰まったらトピックに立ち返り、再度スタートする。
評価・判断を避ける;量より質を重要視し、評価・批判は発想を広げることの阻害要因と考える。

ブレーンストーミングでは、最初にまず個人で検討し、後からグループで共有するという方式がとられることも多いのですが、上手にファシリテーションできれば、最初から全員でやった方がたくさんのアイデアが出るという実験結果もあります。

ハーバードビジネスレビューに掲載されたFlemingの研究によれば6、参加者の背景の多様性が多いほどアイデアの幅がひろくなり、全体としてはつまらないアイデアが多くなるものの、画期的なアイデアも生まれるといいます。逆に参加者の多様性が少ないと、つまらないアイデアはあまりでませんが、ブレークスルーできるような画期的なアイデアも出ず、そこそこのアイデアで収まってしまうといいます。

ですから、画期的なアイデアを求めるならつまらないアイデアを恐れず、否定をしてはいけません。とにかくたくさんのアイデア量を出しているうちにキラっと光るよいアイデアが生まれてくることを期待できるのがブレーンストーミングです。

サイエンスに掲載された論文によれば「チームでの協働により知的パフォーマンスは向上する」とのことなので、一人でやるよりも複数でやった方がよいアイデアが出ると考えましょう。「三人寄れば文殊の知恵」とはこのことですね。

また「参加者の知能には依存しない」そうです。IQが高いハーバード大学のようなメンバーが集まったグループでも小学生のグループでも適切に行えばよいアイデアが出るし、そうでなければアイデは出ないということです。

さらに「女性の数とアイデアの新規性に正の相関がある」という結果があります。理由までは検証されていませんが、女性は、妻、母、ビジネスウーマンなど一人で様々な局面に主体的に関与しなければいけないケースが多いことや、男性と比較してたたきあげのビジネスマンや研究者など典型的なキャリア経験でないケースも少なくないことが関係しているのかもしれません。新しいことを検討するチームには女性も参画してもらうといいですね。

ブレーンライティング

ブレーンライティング(Brainwriting)76-3-5メソッドとも言われ1968年にジャーマン・セールス・マガジンで発表されました。あるテーマについて、6人の参加者が全員それぞれ3つのアイデアを5分以内に書き、次の人へ渡していくブレーンストーミングの手法です。他の人のアイデアを参考にしながら新しいアイデアを思いつくこともできるし、ITテクノロジーを使えば離れた場所にいる人々のグループでも行うことができる利点があります。また、初対面でのグループワークが苦手な日本人に向いているという意見もあります。

PMBOK®Guide第6版では、「13.1ステークホルダー特定」プロセスのツールと技法のブレーンストーミングの項目の中でブレーンライティングが紹介されています。

ブレーンンライティングの一般的な手順8

  1. 6枚のシートの一番上にテーマを書く
  2. 全員が1枚づつシートを持ち、5分以内に3つのアイデアを書く
  3. 5分たったら隣の人にシートを渡す
  4. 下の段に、5分以内に3つのアイデアを書く
  5. 6回のセッションで6枚のシートが埋まる

のべ108のアイデアが出るはずです。6人が最適ですが、4~7人でも可能です9。また、アイデアを1~3個にしたり10、文字ではなく絵で描いたり11、最大時間を10分にしたりするバリエーションもあります。業務の種類やテーマによってどのような手順や表現方法が最適なのか研究されています。12

このようにして出されたたくさんのアイデアの中から、ノミナルグループ法や、優先順位マトリックスを使って、アイデアを絞っていきます。

ノミナルグループ技法

ノミナルグループ技法 (Nominal group technique)13は、ブレーンストーミングやブレーンライティングで出されたアイデアを投票(多数決)により優先順位をつける方法です。NGTと略されることもあります。1970年代に Delbecq と VandeVen に よって 70 年代に開発されました14。単にアイデアに優先順位をつけるのではなく、事前に抽出されたアイデア(やそれを取りまとめた分類)についての説明や議論を行ってか理解を深めてから投票(次項目参照)します。高評点のものを改めて再投票する場合もあります。

以下のような場合に有益です。15

  • Some group members are much more vocal than others
    何人かのメンバーが他の人より声が多きい場合
  • Some group members think better in silence
    何人かのメンバーは静かな方が良く考えることができるタイプの場合
  • There is concern about some members not participating
    参加していない何人かのメンバーに(利害)関係がある場合
  • The group does not easily generate quantities of ideas
    簡単に大量のアイデアを出すことが難しいグループの場合
  • Some or all group members are new to the team
    新しく参加するメンバーがいる場合や全て初めてのメンバーの場合
  • The issue is controversial or there is heated conflict
    もめそうな問題や議論が白熱している場合
PMBOK®Guide第6版では、ノミナルグループ法「5.2要求事項の収集」プロセスのツールと技法(人間関係チームのスキル)として紹介されています。

意思決定手法

投票(Voting)は、多数決により集団の代表意見を意思決定する手法です。

  • 満場一致 (Unanimity)全員が賛成した意見のみグループの代表意見と決定とします。一人でも反対者がいる意見は採用しません。
    白雪姫を助ける7人の小人たちはこのような意思決定方法で描かれることが多いですね16,17,18。根拠(出典)は不明ですが、あるビジネス情報サイトには、チームで意思決定するために最適な人数は、多くても7人程度と紹介されています19
  • 過半数 (Majority)半数以上が賛成した意見をグループの代表意見と決定します。
  • 相対多数 (Plurality)半数に満たなくても、投票などで最も賛成者の多い意見をグループの代表意見と決定します。
PMBOK®Guide第6版では、下記プロセスのツールと技法に掲載されています。
 4.5 プロジェクトや作業の監視コントロール (Monitor and Control Project Work)
 4.6 統合変更管理 (Perform Integrated Change Control)
 5.2 要求事項の収集 (Collect Requirements)※PMBOKで強調されています。
 5.5 スコープ妥当性確認 (Validate Scope)

 6.4 アクティイティ所要期間の見積り (Estimate Activity Durations)
 7.2 コストの見積り (Estimate Costs)

独裁的意思決定(Autocratic decision making)一人の意思決定の責任者が決めます。

PMBOK®Guide第5版までは独裁的意思決定は、Dictatorshipの翻訳でした。第6版からは同じ翻訳ですが原著には上記の英単語で掲載されています。

専制政治(autocracy)とは、支配者が独断で思いのままに事を決する政治。英語autocracyは、直訳すると「わがままな支配」「自分勝手な政治」となります(auto=自分。cracy=政治、支配)。専制政治は身分が確立しており、統治者と被統治者が完全に分離しています。支配者の地位は国民の支持ではなく、血統など別の理由によって保証されています。20

それに対して、独裁政治(dictatorship)は、国民の大多数の支持によって権力を付与された独裁者による政治であり、統治者と被統治者の身分が同一です。 歴史上にはナポレオン・ボナパルトや、ナチスのヒトラーなどが挙げられますが、現代の中国および北朝鮮は憲法等により公式に独裁を明記しています21。これらの国々では民主的に選ばれた党員による党による支配との建前になっているものの、PMBOKGuideが出版される米国からの視点ではマイナスイメージなので、記載が変更されたのではないでしょうか。

いずれにせよ、PMBOK®Guideにおける主旨は、責任者が勝手に好きなように決定するというより、参加者の意見や議論を踏まえて、最終的に意思決定責任者が決断をくだすという意味があると考えればよいでしょう。

PMBOK®Guide第6版では、下記プロセスのツールと技法に掲載されています。
 4.6 統合変更管理 (Perform Integrated Change Control)
 5.2 要求事項の収集 (Collect Requirements)

 

(リンク)創造学会>主な創造的技法 (下記の手法が紹介されています)
1.発散技法;ブレインストーミング、ブレインライティング、チェックリスト法、マトリックス法、シネクティクス法、NM法
2.収束技法;KJ法、クロス法、PERT法、ストーリー法
3.統合技法;インプット・アウトプット法、ワークデザイン(WD)法
4.態度技法;自律訓練法、エンカウンター・グループ、クリエイティブ・ドラマティックス      (作成:高橋 誠) 参照:創造力事典(日科技連出版社)

 

 

 

  1. ウィキペディア(日本語)ブレーンストーミング
  2. Wikipedia(English)Brainstorming
  3. Wikipedia(English)Alex Faickney Osborn
  4. スタンフォード大学D-schoolとは何か04/19/2012 · by yasu · in ソーシャルイノベーション
  5. Method>Brainstorming>rules
  6. Fleming,L.(2004)’Perfecting Cross-Pollination:How you craft cross-functional teams depends on your appetite for risk – and your hunger for a breakthrough’Harrd Business Review, Vol.82, Issue9, September 2004, pp22-24.
  7. Wikipedia(English)6-3-5 Brainwriting
  8. IDEA PLANT > ブレイン・ライティング・シートの使い方
  9. Mathys European Orthopaedics. “Tecniche creative Per una maggiore ricchezza di idee e per realizzare soluzioni innovative” (PDF). www.mathysmedical.com. Retrieved 20 October 2014.
  10. innoSupport. “Supporting ideas in SME”. Retrieved 20 October 2014.
  11. Piperno, Simone. “Brainwriting, la creatività grafica (Brainwriting graphical creativity)”. Coaching e creatività – formazione al pensiero creativo (Coaching and creativity – training to creative thinking). Retrieved 20 October 2014.
  12. 空間デザインのグループワ ークにおけるブレインライティングの有効性に関する考察
  13. Wikipedia(English)Nominal gtoup technique
  14. Delbecq A.L.,VandecqVen A. H., ” A Group Process Model for Problem Identification and Program Planning”,Journal Of Applied Behavioral Science Ⅶ(July/August,1971),466-91
  15. / Lean about quality>Quality Resources>Nominal Group Technique
  16. ウィキペディア(日本語)白雪姫(1937年の映画)
  17. ウィキペディア(日本語)スノーホワイト(2012年の映画)
  18. ウィキペディア(日本語)白雪姫と鏡の女王
  19. U-NOTEトップ> ビジネス>チームでの意思決定に最適な人数とその人数で行うことのメリット
  20. ウィキペディア(日本語)専制政治
  21. ウィキペディア(日本語)独裁政治

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